展示会や販売会、上映会などの催しを開くときは、消防への届出が必要なのでしょうか。必要なら、いつまでに出せばよいのでしょうか。会場の使い方によっては、届出のほかに、客席や通路、定員の決まりが関わることもあります。催物の開催届出書は、火災予防条例で定められる手続きで、内容は消防本部ごとに異なる場合があります。ここでは、今回読んだ現行の火災予防条例を例にします。この記事を読むと、届出の対象と時期、提出先と様式、会場の決まり、避難経路と定員、禁煙と消火器、煙火・露店・指定催しの別の定め、届け出る人と届出前の確認について知ることができます。
1. 催物の開催は、条例で届出が定められている
現行の条例は、消防法第9条などの規定に基づき、火災予防上必要な事項を定めています(現行の条例第1条)。催物の開催の届出も、この条例に定められています。
条例は、あらかじめ消防長に届け出なければならない行為を、6つ挙げています(条例第45条第1項)。催物の開催は、その3つ目です。
(3) 劇場等以外の建築物その他の工作物における演劇、映画その他の催物の開催
(現行の条例第45条第1項第3号)
この号が定めているのは、場所と行為の2点です。場所は「劇場等以外の建築物その他の工作物」、行為は「演劇、映画その他の催物の開催」です。
「劇場等」は、劇場、映画館、演芸場、観覧場、公会堂、集会場のことです(条例第23条第1項第1号)。劇場等で開く催しは、この号の対象になりません。ただし、劇場等には、客席や避難通路、定員について別の決まりがあります。会場がどちらに当たるかで、守る決まりが変わります。
展示会や販売会についても触れておきます。条例は、露店等の開設の届出(第45条第1項第6号)や、火気器具の消火器の準備(第18条第1項第9号の2)では、「展示会」を催しの例として挙げています。一方、この第3号は「演劇、映画その他の催物」と書いています。展示会や販売会が「その他の催物」に当たるかどうかは、条文の文言からは判断できません。不明な場合は、管轄の消防本部に確認してください。

2. 届出の時期、提出先、部数、様式
届出は「あらかじめ」行います。条例が定めているのは「あらかじめ」までで、何日前という日数は定めていません(条例第45条第1項)。
届け出る先は、消防長です。消防長は、第45条第1項の各号の行為について、届出の対象となる期間と区域を指定できます(条例第45条第2項)。
現行の火災予防規則では、催物の開催の届出は「催物開催届出書」によると定められています(火災予防規則第18条第3号。別記様式第21号)。届出書は2部を提出します。受理した消防本部が、火災予防上または消防活動上支障がないと認めるときは、届出済印を押して1部を交付します(火災予防規則第22条第1項第17号、第2項)。
この規則に別記様式が定められていますが、ほかの消防本部では、様式が異なるのが一般的です。
3. 体育館や講堂を一時的に使うと、会場の決まりが加わる
催しの会場には、体育館、講堂、ホールなど、普段は別の使い方をしている場所を借りることがあります。条例は、そのような場合について、準用の規定を置いています。
第35条から第36条の2まで及び第37条の2から前条までの規定は、体育館、講堂その他の防火対象物を一時的に劇場等、展示場又はディスコ等の用途に供する場合について準用する。
(現行の条例第42条)
「準用する」とは、その規定を、ほかの場合にも同じように当てはめるという意味です。体育館や講堂のような建物でも、催しの間だけ劇場等、展示場、ディスコ等として使えば、条例の第5章「避難管理」にある規定が当てはまります。準用されるのは、劇場等の客席の基準(第35条〜第36条の2)、ディスコ等と個室型店舗の避難管理(第37条の2、第37条の3)、百貨店等の避難通路(第38条)、定員(第39条)、避難施設と防火設備の管理(第40条、第41条)です。第37条(キャバレー等と飲食店の避難通路)は、準用の範囲に入っていません。
「展示場」は、条例では百貨店等の一つとして、百貨店、マーケットなどの物品販売店舗とあわせて定められています(条例第23条第1項第2号)。体育館などを展示会の会場に使うときは、この展示場の規定が関わります。会場をどの用途として使うかで、当てはまる規定が変わります。
4. 避難経路と定員の決まり
会場の決まりのうち、避難経路と人数に関わる部分は、条文に具体的な数値があります。数値は条例の原文のとおりです。
客席の通路と間隔
劇場等の屋内の客席では、いすを床に固定します。いす背の間隔は80cm以上、座席の幅は40cm以上です。立見席は客席の後方に置き、奥行は2.4m以下とします(条例第35条)。屋外の客席にも、いす背の間隔(75cm以上)や、通路から避難口までの歩行距離の基準があります(条例第36条)。
定員の数え方
劇場等の関係者は、収容人員の適正化に努めなければならず、客席の部分ごとに算定した数の合計(定員)を超えて客を入場させてはなりません(条例第39条第1項第1号)。算定の方法は、客席の種類で3つに分かれます。
| 客席の種類 | 定員の数え方 |
|---|---|
| 固定式のいす席 | いす席の数(長いす式は、正面幅を40cmで除した数。1未満の端数は切り捨て) |
| 立見席 | 床面積を0.2㎡で除した数 |
| その他の部分 | 床面積を0.5㎡で除した数 |
(条例第39条第1項第1号)
固定式のいす席が120席、立見席の床面積が12㎡、その他の部分の床面積が30㎡の会場を、仮に考えます。いす席は120人、立見席は12÷0.2=60人、その他の部分は30÷0.5=60人で、合計は240人です。実際の会場の判定ではありません(条例第39条第1項第1号)。
ここでいう定員は、条例第39条が客席について定める数え方です。このほか、客席内の避難通路には客を収容しません。出入口など見やすい場所には定員を記載した表示板を設け、入場した客が定員に達したときは直ちに満員札を掲げます(条例第39条第1項第2号、第4号)。
展示場の通路
展示場として使う場合の通路も、面積で決まっています。売場または展示場の床面積が150㎡以上の階には、屋外へ通じる避難口または階段に直通する主要避難通路を、1以上設けます。幅は1.2m以上、床面積が300㎡以上なら1.6m以上です(条例第38条第1項)。床面積が600㎡以上の階には、主要避難通路のほかに、有効幅員1.2m以上の補助避難通路が必要です(条例第38条第2項)。仮に、展示場として使う階の床面積が400㎡であれば、300㎡以上にあたるため、幅1.6m以上の主要避難通路が1以上必要になります。
避難口と戸の管理
避難のために使う廊下、階段、避難口などは、避難上有効に管理します。床面は、つまずきやすべりを生じないよう常に維持します。避難口の戸は外開きとし、開けたときに廊下や階段の幅を狭めない構造とします。ただし、劇場等以外の防火対象物で避難上支障がないと認められる場合は、内開き以外の戸にできます(条例第40条第1号・第2号)。戸には、原則として施錠装置を設けません。非常時に自動で解錠できるものや、屋内から鍵などを使わずに容易に解錠できるものは例外です(条例第40条第3号)。
客席の基準(第35条、第36条)は、消防長が、劇場等の位置、収容人員、使用形態、避難口などの配置から入場者の避難上支障がないと認めるときは、適用されません(条例第36条の2)。この特例を適用するときは、消防長が資料を提出させ、または検査を行います(火災予防規則第15条)。

5. 禁煙・火気厳禁の場所と、消火器の準備
催しの会場では、喫煙や火気の扱いにも決まりがあります。
条例は、劇場等の舞台や客席、百貨店等の売場や展示部分などのうち、消防長が指定した場所では、喫煙、裸火の使用、火災予防上危険な物品の持込みを禁じています。特に必要な場合で、消防長が火災予防上支障がないと認めたときは例外です(条例第23条第1項)。標識が必要になるのも、消防長が指定した場所です。そこには、客席の前面など見やすい箇所に、「禁煙」「火気厳禁」「危険物品持込み厳禁」と表示した標識を設けます。標識の色は、地が赤色、文字が白色です(条例第23条第2項)。関係者は、その場所で喫煙などをしようとする人がいるときは、制止しなければなりません(条例第23条第7項)。
喫煙所を設ける場合、劇場等では、階ごとに客席と廊下以外の場所に設け、床面積の合計は客席の床面積の合計の30分の1以上とします。ただし、消防長が火災予防上支障がないと認めるときは、この限りではありません(条例第23条第5項、第6項)。
会場でこんろや移動式ストーブなどの火気器具を使うときは、消火器の準備が求められます。液体燃料を使う器具の基準が、催しでの使用について定めています。
祭礼、縁日、花火大会、展示会その他の多数の者の集合する催しに際して使用する場合にあつては、消火器の準備をした上で使用すること
(現行の条例第18条第1項第9号の2)
この基準は、固体燃料、気体燃料、電気を熱源とする器具にも準用されます(条例第19条第2項、第20条第2項、第21条第2項)。消防庁が条例(例)の運用として示した通知では、多数の者の集合する催しで火災が起きたときは初期消火が極めて重要であることから、器具を使う人に、消火器を準備した上で使うことを義務づけたと説明されています(消防予第33号 平成26年2月7日。条例(例)の運用についての助言で、各消防本部の運用は異なる場合があります)。
消火器の準備と、火気器具を使う露店等の届出は、別の記事で説明しています。

くわしく知りたい方へ
・露店等の開設届出書とは。対象となる催しと火気器具、届出の時期、消火器の準備を、現行の火災予防条例の条文で解説
6. 煙火、露店、指定催しは、別に届出や計画が定められている
同じ催しでも、行う内容によっては、催物開催届出書とは別の手続きが定められています。第45条第1項の号ごとに、届出書の名前も分かれています。
- 火災とまぎらわしい煙などを発するおそれのある行為(たき火を含みます): 第1号です。届出書は「火災とまぎらわしい煙又は火炎を発するおそれのある行為の届出書」です(条例第45条第1項第1号、火災予防規則第18条第1号。別記様式第19号)。
- 煙火の打上げ・仕掛け: 第2号です。花火などの打上げや仕掛けが対象で、がん具用煙火は除かれます。届出書は「煙火打上げ・仕掛け届出書」です(条例第45条第1項第2号、火災予防規則第18条第2号。別記様式第20号)。
- 露店等の開設: 第6号です。祭礼、縁日、花火大会、展示会などの多数の者の集合する催しで、対象火気器具等を使用する場合に限ります。届出書は「露店等の開設届出書」です(条例第45条第1項第6号、火災予防規則第18条第6号。別記様式第23号の2)。
催しを開く側が主催者として負う決まりもあります。大規模な屋外の催しは、消防長が「指定催し」に指定することがあります(条例第42条の2第1項)。指定を受けた主催者は、防火担当者を定め、火災予防上必要な業務の計画を、開催日の14日前までに作成して消防長に提出します(条例第42条の3)。この計画を提出しなかった者は、30万円以下の罰金に処せられます(条例第50条第4号)。
指定の背景について、消防庁の通知は、平成25年8月に京都府福知山市で発生した花火大会の火災の教訓を踏まえた改正であると説明しています(消防予第33号 平成26年2月7日)。指定催しは、露店等の記事で詳しく説明しています。
7. 届け出る人と、届出の前に確かめること
条例が届出を求めているのは、催物の開催という行為を「しようとする者」です(条例第45条第1項)。催しを主催する人と、会場を管理する人のどちらが出すのかは、条文には定めがありません。不明な場合は、管轄の消防本部に確認してください。
届出書をつくる前に、手元で確かめておける点が3つあります。
- 会場が劇場等に当たるか。劇場等以外の会場で開く催しが、催物開催届出書の対象です(条例第45条第1項第3号、第23条第1項第1号)。
- 体育館や講堂を一時的に使うなら、客席の数と床面積。定員の計算や、展示場の通路の幅は、この数字で決まります(条例第38条、第39条)。
- 煙火の打上げ、火気器具を使う露店等、たき火が、催しに含まれるか。含まれるときは、号ごとに別の届出書です(条例第45条第1項)。
届出の時期は、前に書いたとおり「あらかじめ」です。消防長が、届出の対象となる期間と区域を指定している場合は、その指定も確かめます(条例第45条第2項)。当日は、禁煙・火気厳禁の標識、消火器の準備、避難口と通路の管理を整えます(条例第23条、第40条、第18条第1項第9号の2)。
8. まとめ
覚えておきたいポイント
・現行の火災予防条例では、催物の開催が、あらかじめ消防長に届け出る行為に挙げられています(第45条第1項第3号)。
・対象は、「劇場等以外の建築物その他の工作物」で行う「演劇、映画その他の催物の開催」です(第45条第1項第3号)。
・劇場等は、劇場、映画館、演芸場、観覧場、公会堂、集会場です(第23条第1項第1号)。
・届出の時期はあらかじめで、条例は日数を定めていません。
・届出書は催物開催届出書で、2部提出します。
・体育館や講堂を一時的に劇場等、展示場、ディスコ等として使うときは、客席・通路・定員・避難施設の管理の規定が準用されます(第42条)。
・定員は、固定いす席は席数、立見席は床面積÷0.2㎡、その他の部分は床面積÷0.5㎡で数えます(第39条)。
・禁煙・火気厳禁の標識が必要なのは、消防長が指定した場所です(第23条第1項、第2項)。
・火気器具を使う催しでは、消火器の準備をした上で使います(第18条第1項第9号の2)。
・煙火の打上げ、露店等の開設、たき火などは、別の号で届出が定められています(第45条第1項)。
・不明な場合は、管轄の消防本部に確認してください。
複雑な届出は、専門家に依頼する方法もあります
届出書など、書類の作成や提出が難しいと感じるときは、行政書士などの専門家に依頼するのも一つの方法です。なお、催しが届出の対象に当たるかは、管轄の消防本部に確認します。依頼すると、たとえば次のような点で、手間を減らせる場合があります。
・届出書の書式の選び方を相談できるため、書類を作り直す手間を減らせる場合があります。
・添える書面の確認を任せられるため、書類の不足や取り違えに気づきやすくなる場合があります。
・提出までの段取りを整理できるため、役所に出向く回数や、書類を何度も見直す手間を減らせる場合があります。
どの書類を任せられるかは、あらかじめ確認します。相談するかどうかは、ご自身で判断してください。
※本記事は一般的な情報提供を目的としており、個別の建物や店舗への適用を保証するものではありません。実際の取り扱いは、管轄の消防本部に確認してください。

コメント
コメント一覧 (1件)
[…] […]