消防法令手続きから設備点検、防火管理サポートまでワンストップで支援

消防計画と避難訓練。作る・届ける・訓練するの基本

消防計画と避難訓練。作る・届ける・訓練するの基本(イメージ)

「消防計画は作らなければいけないのか」「避難訓練は年に何回やればよいのか」

防火管理者を決めたあとには、こうした疑問が出てきます。

結論から言うと、消防計画は 「作る」「届ける」「訓練する」の3段階で進めます。この記事では、法令の内容を、この順に整理します。読み終えると、消防計画に決める事項、訓練の回数と事前の通報、自分の建物が対象かどうかの確かめ方が分かります。

この記事の前提

・飲食店だけ、工場だけなど、1つの用途だけの建物で事業を営む方を想定しています。ビルのテナントなど、いくつかの用途が入る建物は、扱いが異なることがあります。確認する先は、第5章の判定図に書いています。

・消防計画を作るのは、防火管理者です。この記事は、防火管理者を決める義務のある建物を前提にしています。その義務があるかの確かめ方は、防火管理者の選任を扱った別の記事で整理しています。

・訓練の回数の義務は、建物の用途によって違います。まず、自分の建物の用途が、令別表第一(建物の使い方ごとの一覧表)のどの項に当たるかを確かめてください。

・この記事は制度の一般的な説明です。確認のしかたは第7章にまとめています。

「作る」「届ける」「訓練する」の3段階を、図にすると次のとおりです。

1
作る
防火管理者が、消防計画を作ります
▼
2
届ける
作った消防計画を、所轄消防長又は消防署長に届け出ます
▼
3
訓練する
消防計画に基づいて、消火・通報・避難の訓練をします
目次

1. 消防計画とは。「作る・届ける・訓練する」の3段階

この章のポイント

消防計画は、作って終わりではありません。

その計画に基づいて、訓練まで行います。

消防計画とは、その建物の防火管理をどう行うかを決めた計画書のことです。

消防法は、防火管理者に行わせる業務として、次のように書いています。

「消防計画の作成、当該消防計画に基づく消火、通報及び避難の訓練の実施」

つまり、計画を作るだけでは足りません。その計画に基づいて、訓練を実施します。

3段階を、表にまとめます。

段階 誰が 何をするか 根拠
作る 防火管理者 建物の防火管理についての消防計画を作成する 令第3条の2第1項、規則第3条第1項
届ける 防火管理者 作成した消防計画を、所轄消防長又は消防署長に届け出る。変更するときも届け出る 令第3条の2第1項、規則第3条第1項
訓練する 防火管理者 消防計画に基づく消火・通報・避難の訓練を実施する。対象の項では、消火訓練と避難訓練を年2回以上行い、その訓練を実施する場合には、あらかじめ消防本部へ通報する 令第3条の2第2項、規則第3条第10項・第11項

「対象の項」と訓練の回数・事前の通報は、第4章で説明します。「対象の項」とは、年2回以上の訓練と事前通報の決まりがある、令別表第一の項のことです。令別表第一は、建物の使い方を(一)項、(二)項…と番号で分けた一覧表です。

用語の補足

・法・令・規則: 表では、法は消防法、令は消防法施行令、規則は消防法施行規則を指します。

・防火対象物: 消防法の規制の対象になる建物などです。

・所轄消防長又は消防署長: 建物を管轄する消防本部の長、または消防署の長のことです。

消防計画の書類と消火器のイメージ

2. 誰が作り、どこへ届けるのか

この章のポイント

消防計画を作るのは、防火管理者です。

届け先は、所轄消防長又は消防署長です。変更するときも届け出ます。

条文には、次のように書かれています。

「防火管理者は、総務省令で定めるところにより、当該防火対象物についての防火管理に係る消防計画を作成し、所轄消防長又は消防署長に届け出なければならない。」(消防法施行令第3条の2第1項)

この文のポイントは、次の3つです。

  • 作るのは、防火管理者です。
  • 届ける先は、所轄消防長又は消防署長です。
  • 消防計画を変更するときも、同じように届け出ます。

防火管理者は、「権原を有する者」の指示を受けて、消防計画を作ります。権原を有する者とは、その建物の管理について決める権利を持つ人、という意味合いの言葉です。

届出には、決まった様式を使います。様式は「別記様式第一号の二」の届出書です。

1
指示を受ける
防火管理者が、権原を有する者の指示を受けます
▼
2
消防計画を作る
建物の防火管理についての計画を作ります
▼
3
届出書に書く
別記様式第一号の二の届出書を使います
▼
4
届け出る
所轄消防長又は消防署長に届け出ます

届出書の入手先や提出方法(窓口・郵送・電子)は、第7章のチェックリストで確認します。

くわしく知りたい方へ

消防計画作成変更届出|書き方から必要書類まで完全解説(届出書の書き方と必要書類)

3. 消防計画に決める事項

この章のポイント

建物の区分のうち、ここで扱う区分では、決める事項が12個あります。

訓練を定期的に行うことも、その1つです。

消防計画に決める事項は、国の決まり(消防法施行規則)に、おおむね次の事項として挙げられています。建物の位置、構造、設備の状況、使用状況に応じて決めます。

ここでは、そのうち、ここで扱う区分の事項を、やさしい言葉に言い換えて並べます。条文の逐語ではありません。

決める事項 どんなことか
自衛消防の組織 自分たちで火災に対応する体制のこと
自主検査 火災予防の面から、建物を自分たちで検査すること
設備の点検・整備 消防用設備等(特殊なものを含む)の点検と整備のこと
避難施設の維持管理 避難通路、避難口など、避難のための施設の維持管理と案内のこと
防火上の構造の維持管理 防火壁、内装など、防火上の構造の維持管理のこと
収容人員の適正化 定員を守ることなど、建物にいる人数の適正化のこと
防火管理上必要な教育 防火管理のために必要な教育のこと
訓練の定期的な実施 消火、通報、避難の訓練など、防火管理上必要な訓練を定期的に行うこと
災害時の活動 火災、地震などが起きたときの消火活動、通報連絡、避難誘導のこと
消防機関との連絡 防火管理について、消防機関と連絡をとること
工事中の火気の監督 増築、改築、移転、修繕、模様替えの工事中に、火気の使用や取扱いを監督すること。防火管理者又はその補助者の立会いなどが例です
そのほか 上の事項のほか、防火管理に関して必要な事項

訓練を定期的に行うことは、消防計画に決める事項の1つです。

ただし、この事項自体に、回数の定めはありません。

回数は、第4章の「対象の項」の決まりで確認します。

ここで挙げたのは、建物の区分によって決める事項の一部です。ほかの区分の事項が自分の建物に必要かは、消防本部に確認してください(第7章)。

飲食店で消火訓練を行うイメージ

4. 訓練の義務。年2回以上と、事前の通報

この章のポイント

対象の項の建物は、消火訓練と避難訓練を年2回以上行います。

対象の項の建物は、その消火訓練・避難訓練を実施する場合に、あらかじめ消防本部に通報します。

特定防火対象物(飲食店、物販店など)は対象の項に当たり、非特定防火対象物(工場、事業場(事務所など))は挙がっていません。

含まれない用途でも、訓練の実施と消防計画への記載は必要です(第5章)。

訓練について、決まりを表にまとめます。

項目 内容 根拠
訓練の実施 消防計画に基づく消火・通報・避難の訓練の実施は、防火管理者の業務 法第8条第1項、令第3条の2第2項
計画への記載 訓練の定期的な実施を、消防計画に決める 規則第3条第1項第1号チ
回数 対象の項の防火管理者は、消火訓練と避難訓練を年2回以上行う 規則第3条第10項
事前の通報 対象の項の防火管理者は、その消火訓練・避難訓練を実施する場合に、あらかじめ、消防本部に通報する 規則第3条第11項

「年2回以上」は、消火訓練と避難訓練についての決まりです。通報の訓練(火災の連絡をする訓練)の回数の定めがあるかは、消防本部に確認してください(第7章)。

対象の項は、国の決まり(消防法施行規則)に挙げられています。

令別表第一の次の項です。

  • (一)項から(四)項まで(飲食店などを含みます)
  • (五)項イ
  • (六)項
  • (九)項イ
  • (十六)項イ
  • (十六の二)項

回数は、条文に次のように書かれています。

「令第三条の二第二項の消火訓練及び避難訓練を年二回以上実施しなければならない」

事前の通報は、条文の次の項(第11項)に、次のように書かれています。

「前項の防火管理者は、同項の消火訓練及び避難訓練を実施する場合には、あらかじめ、その旨を消防機関に通報しなければならない。」

前項とは、対象の項を挙げた項(第10項)のことです。

対象の項の訓練の流れは、次のとおりです。

1
消防計画に決める
訓練を定期的に行うことを、消防計画に決めます
▼
2
消防本部に通報する
訓練を実施する場合に、あらかじめ通報します
▼
3
訓練を実施する
消火訓練と避難訓練を、年2回以上行います

用途ごとにあてはめると、次のとおりです。

区分 訓練の扱い
特定防火対象物(飲食店、物販店など) 防火管理者を決める建物では、消火訓練と避難訓練を年2回以上行います。訓練を実施する場合には、あらかじめ消防本部へ通報します
非特定防火対象物(工場、事業場(事務所など)) 年2回以上と事前通報の決まりは、条文に挙がっていません。ただし、訓練の実施と消防計画への記載は必要です(第5章)

2つの区分の違いは、特定防火対象物と非特定防火対象物の違いで説明しています。

自分の建物が当たるかは、第7章で確認します。

例(実際の判定ではありません)

防火管理者を決めている、1つの用途だけの建物の飲食店があるとします。

この店は、消火訓練と避難訓練を、年に2回以上行います。訓練を実施する場合には、あらかじめ消防本部へ通報します。

これは決まりを知るための例です。実際の判定ではありません。

守らなかった場合

消防計画の作成と、消防計画に基づく消火・通報・避難の訓練の実施は、防火管理者の業務です(消防法第8条第1項)。これらの業務が法令の規定や消防計画に従って行われていないと認めるときは、消防長または消防署長が、権原を有する者に、必要な措置を講じるよう命じることができます(消防法第8条第4項)。

罰則は、次の表のとおりです。拘禁刑は、刑事施設に拘置される刑です(刑法第12条)。拘留は、1日以上30日未満、刑事施設に拘置される刑です(刑法第16条)。

違反した内容 罰則
業務の是正命令に違反した(消防法第8条第4項、第41条第1項第2号) 1年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金
防火管理者の選任・解任の届出を怠った(消防法第8条第2項、第44条第8号) 30万円以下の罰金または拘留

上の命令違反について、法人または個人事業主の従業者などが、その業務に関して違反したときは、法人や個人事業主にも罰金刑が科されます(消防法第45条第3号)。選任・解任の届出については、防火管理者の選任が必要かの確かめ方。用途と収容人員の見方で説明しています。

店内の通路と出入口のイメージ

5. うちの建物は、対象の項? 判定と他の自治体の例

この章のポイント

特定防火対象物(飲食店、物販店など)は、年2回以上の訓練と事前通報の対象です。

非特定防火対象物(工場、事業場(事務所など))は、その決まりが条文に挙がっていません。

含まれない用途の回数・通報、通報の方法・様式は、第7章で確認します。

自分の建物が対象の項に含まれるかを、図で確かめましょう。

Q1. 飲食店だけ、工場だけなど、1つの用途だけの建物ですか?
はい次の質問へ進みます
いいえビルの一室など、いくつかの用途が入る建物では、建物全体の区分で扱いが変わることがあります。消防本部に確認してください。建物全体の用途区分(令別表第一の項)と収容人員は、ビルの管理会社やオーナー、または消防本部に聞きます。自分の店が対象の項に当たるかは、消防本部に確認してください
▼
Q2. 特定防火対象物(飲食店、物販店など)ですか?
はい対象の項に含まれます。消火訓練と避難訓練を年2回以上行います。実施する場合には、あらかじめ消防本部へ通報します。通報の方法や様式は、消防本部に確認してください
いいえ次の質問へ進みます
▼
Q3. 非特定防火対象物(工場、事業場(事務所など))ですか?
はい対象の項には含まれません。訓練の実施と消防計画への記載は必要です。回数と通報の要否は、消防本部に確認してください
いいえ令別表第一で、自分の建物が当たる項を確かめます。第4章の対象の項に当たれば、上の「含まれる」場合と同じです。当たらない場合も、訓練の実施と消防計画への記載は必要です。回数と通報の要否は、消防本部に確認してください

対象の項に含まれない用途でも、次のことは同じです。訓練の実施は防火管理者の業務です。訓練を定期的に行うことは、消防計画に決めます。

対象の項の訓練では、事前の通報が必要です。回数の定めがあるか(条例などの別の決まりを含む)と、含まれない用途で通報が必要かは、消防本部に確認してください。通報の方法(書面・電話・電子)や様式は、消防本部に確認してください。これは対象の項の建物も同じです(第7章)。「うちは含まれない用途だから、訓練は要らない」と決めてしまわないでください。

他の自治体の例

参考までに、ある自治体の消防本部の案内の内容を紹介します。2026年10月30日に、その公式ページで確認した内容です。栃木県内の運用ではありません。

項目 ある自治体の案内の内容
回数 特定の用途の消火訓練・避難訓練は、年2回以上です
事前の手続き 訓練の実施前に、電子申請または「自衛消防訓練通知書」を消防署に提出します
記録 訓練の実施結果を記録した書類は、提出は不要です。3年間の保管の定めがあります
訓練の内容 消火器や屋内消火栓の使い方を覚えること、火災の発見から消防隊への情報提供までの総合的な活動、が挙げられています

栃木県内の通報の方法や様式は、この自治体の案内と同じとは限りません。

くわしく知りたい方へ

【記入例あり】消防訓練実施計画通知書&結果報告書の作成方法まとめ(訓練に関する書類の書き方の参考。この記事の事前通報と同じ手続とは限りません)

固定電話とメモ帳のイメージ

6. まとめ

この章のポイント

消防計画は、防火管理者が作って、届けて、訓練まで行います。

対象の項の建物は、消火訓練と避難訓練を年2回以上行います。

その消火訓練・避難訓練を実施する場合には、あらかじめ消防本部に通報します。

  • 消防計画は、防火管理者が作成し、所轄消防長又は消防署長に届け出ます。変更するときも届け出ます。
  • 消防計画には、自衛消防の組織、自主検査、設備の点検・整備、避難施設の維持管理、教育、訓練の定期的な実施などを決めます。
  • 特定防火対象物(飲食店、物販店など)の防火管理者は、消火訓練と避難訓練を年2回以上行います。訓練を実施する場合には、あらかじめ消防本部に通報します。
  • 含まれない用途でも、訓練の実施と消防計画への記載は必要です。
  • 非特定防火対象物(工場、事業場(事務所など))の訓練の回数は、消防本部に確認してください(第7章)。
  • 通報の方法・様式は、対象の項の建物も含めて、消防本部に確認してください。通報の訓練(火災の連絡をする訓練)の回数も同じです(第7章)。
  • 消防計画の作成や訓練など防火管理者の業務が行われていないときは、命令を出すことができる定めがあります。命令に違反すると、1年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金の対象です(消防法第8条第4項、第41条第1項第2号)。法人や個人事業主にも罰金刑が科されます(第45条第3号)。

7. 確認のしかた

この章のポイント

建物によって変わる事項は、消防本部にご確認ください。

下のチェックリストを、そのまま使えます。

消防本部に確認すること
☐自分の建物の用途が、令別表第一のどの項に当たるか
☐消防計画の届出書の様式の入手先と、提出先・提出方法(窓口・郵送・電子)
☐消防計画に決める事項のうち、この記事で挙げた区分以外の、建物の区分によって決める事項が、自分の建物に必要か
☐訓練の回数の定めがあるか(対象の項以外の用途の場合や、条例などの定めを含む)
☐訓練を実施するときの事前通報の方法と様式
☐通報の訓練(火災の連絡をする訓練)の回数の定めがあるか

ご自身の建物に何が必要か、最終的な判断も含めて、消防本部にご確認ください。

複雑な届出は、専門家に依頼する方法もあります

消防計画の届出書など、書類の作成や提出が難しいと感じるときは、行政書士などの専門家に依頼するのも一つの方法です。依頼すると、たとえば次のような点で、手間や間違いを減らせる場合があります。

・届出書の書式の選び方や、記載する事項の確認を相談できるため、記載の漏れや、書式の取り違えを減らせる場合があります。

・届出書の作成や提出を任せられるため、書類を見直す手間や、提出に出向く時間を減らせる場合があります。

・手続きにかける時間を、店や工場の準備や営業に回しやすくなる場合があります。

消防計画は、防火管理者が作成して届け出るものです。どの書類を任せられるかは、依頼先の専門家に確認してください。依頼するかどうかは、書類の数や内容、ご自身が使える時間を見て決めてください。

※本記事は一般的な情報提供を目的としており、個別の建物や店舗への適用を保証するものではありません。実際の取り扱いは、管轄の消防本部にご確認ください。

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

コメント

コメントする

目次