事務所や店舗を借りることになり、事業を始める準備を進めています。消火器は置かなければならないのか、何㎡から対象になるのかを、確かめておきたいところです。消火器が必要かどうかは、建物の使い方(項)ごとの面積の基準を軸に、階の条件や、危険物などを扱うかどうかも加わって決まります。このため、同じ飲食店や事務所でも、広さや階によって答えが変わります。この記事を読むと、消防法施行令別表第一の用途ごとの基準を中心に、火を使う設備がある場合や、対象になったあとに決まることについて知ることができます。
1. 消火器が必要かどうかを決める5つの区分
消防法施行令は、消火器と簡易消火用具をあわせて「消火器具」と呼び、置く建物を5つの区分で定めています(消防法施行令第10条第1項)。この記事では、まとめて「消火器」と書きます。
- 面積に関係なく対象になる項(第1号)
- 延べ面積150㎡以上で対象になる項(第2号)
- 延べ面積300㎡以上で対象になる項(第3号)
- 少量危険物や指定可燃物を貯蔵し、または取り扱う建築物(第4号)
- 地階・無窓階・3階以上の階で、床面積が50㎡以上のもの(第5号)
自分の建物がどの項にあたるかによって、第1号から第3号のどれで見るかが変わります。項の調べ方は、こちらで説明しています。
くわしく知りたい方へ

2. 自分の建物は、どの項にあたるか
中小企業に多い建物は、次の項にあたります(消防法施行令別表第一)。
- 飲食店は、(三)項ロです。
- 物販店(百貨店、マーケットなどの物品販売業を営む店舗や展示場)は、(四)項です。
- 工場や作業場は、(十二)項イです。
- 倉庫は、(十四)項です。
- 事務所などの事業場は、(十五)項「前各項に該当しない事業場」です。
3. 項ごとの設置基準
基準は、項(イ・ロなどに分かれる項は、その区分)ごとに分かれます(消防法施行令第10条第1項第1号〜第3号)。表の用途名は、消防法施行令別表第一の区分に対応しています。
| 項 | 用途 | 消火器を置く対象になる基準 |
|---|---|---|
| (一)項イ | 劇場、映画館、演芸場又は観覧場 | 面積に関係なく |
| (一)項ロ | 公会堂又は集会場 | 延べ面積150㎡以上 |
| (二)項 イ〜ニ | キャバレー、カフェー、ナイトクラブ、遊技場、ダンスホール、カラオケボックスなど | 面積に関係なく |
| (三)項イ | 待合、料理店その他これらに類するもの | 火を使用する設備・器具を設けたもの=面積に関係なく。設けていないもの=延べ面積150㎡以上 |
| (三)項ロ | 飲食店 | 火を使用する設備・器具を設けたもの=面積に関係なく。設けていないもの=延べ面積150㎡以上 |
| (四)項 | 百貨店、マーケツトその他の物品販売業を営む店舗又は展示場 | 延べ面積150㎡以上 |
| (五)項イ | 旅館、ホテル、宿泊所その他これらに類するもの | 延べ面積150㎡以上 |
| (五)項ロ | 寄宿舎、下宿又は共同住宅 | 延べ面積150㎡以上 |
| (六)項イ(1)〜(3) | 病院、患者を入院させるための施設を有する診療所、入所施設を有する助産所 | 面積に関係なく |
| (六)項イ(4) | 患者を入院させるための施設を有しない診療所、入所施設を有しない助産所 | 延べ面積150㎡以上 |
| (六)項ロ | 老人短期入所施設、特別養護老人ホーム、介護老人保健施設、救護施設、乳児院、障害児入所施設、障害者支援施設など | 面積に関係なく |
| (六)項ハ | 老人デイサービスセンター、保育所、児童発達支援センター、身体障害者福祉センターなど | 延べ面積150㎡以上 |
| (六)項ニ | 幼稚園又は特別支援学校 | 延べ面積150㎡以上 |
| (七)項 | 小学校、中学校、高等学校、大学、専修学校、各種学校その他これらに類するもの | 延べ面積300㎡以上 |
| (八)項 | 図書館、博物館、美術館その他これらに類するもの | 延べ面積300㎡以上 |
| (九)項イ | 公衆浴場のうち、蒸気浴場、熱気浴場その他これらに類するもの | 延べ面積150㎡以上 |
| (九)項ロ | イに掲げる公衆浴場以外の公衆浴場 | 延べ面積150㎡以上 |
| (十)項 | 車両の停車場又は船舶若しくは航空機の発着場(旅客の乗降又は待合いの用に供する建築物に限る) | 延べ面積300㎡以上 |
| (十一)項 | 神社、寺院、教会その他これらに類するもの | 延べ面積300㎡以上 |
| (十二)項イ | 工場又は作業場 | 延べ面積150㎡以上 |
| (十二)項ロ | 映画スタジオ又はテレビスタジオ | 延べ面積150㎡以上 |
| (十三)項イ | 自動車車庫又は駐車場 | 延べ面積150㎡以上 |
| (十三)項ロ | 飛行機又は回転翼航空機の格納庫 | 延べ面積150㎡以上 |
| (十四)項 | 倉庫 | 延べ面積150㎡以上 |
| (十五)項 | 前各項に該当しない事業場 | 延べ面積300㎡以上 |
| (十六)項イ | 複合用途防火対象物のうち、その一部が(一)項から(四)項まで、(五)項イ、(六)項又は(九)項イに掲げる防火対象物の用途に供されているもの | 用途に当たる部分ごとに、その用途の項の基準を適用します(消防法施行令第9条) |
| (十六)項ロ | イに掲げる複合用途防火対象物以外の複合用途防火対象物 | 用途に当たる部分ごとに、その用途の項の基準を適用します(消防法施行令第9条) |
| (十六の二)項 | 地下街 | 面積に関係なく |
| (十六の三)項 | 建築物の地階で連続して地下道に面して設けられたものと、その地下道とを合わせたもの((一)項から(四)項まで、(五)項イ、(六)項又は(九)項イの用途に供される部分が存するものに限る) | 面積に関係なく |
| (十七)項 | 重要文化財、重要有形民俗文化財、史跡若しくは重要な文化財として指定され、又は重要美術品として認定された建造物 | 面積に関係なく |
| (十八)項 | 延長五十メートル以上のアーケード | 第1号〜第3号に定めはありません |
| (十九)項 | 市町村長の指定する山林 | 第1号〜第3号に定めはありません |
| (二十)項 | 総務省令で定める舟車 | 面積に関係なく |
(六)項イは、(1)から(3)までが面積に関係なく、(4)が延べ面積150㎡以上と、消防法施行令が分けています(消防法施行令第10条第1項第1号イ・第2号イ)。
(十六)項は、(十六)項から(二十)項までを除く各項の用途に当たる部分を、その用途に供される一の防火対象物とみなす、と消防法施行令が定めています。消火器の定めである第10条は、このみなす扱いから除かれていません(消防法施行令第9条)。
表の第1号〜第3号のほかに、少量危険物や指定可燃物を貯蔵し、または取り扱う別表第一の「建築物その他の工作物」は第6章の基準(第4号)、別表第一の「建築物」の地階・無窓階・3階以上の階は第5章の基準(第5号)があります(消防法施行令第10条第1項第4号・第5号)。(十八)項と(十九)項は、第1号〜第3号に定めがありません。
ここで気をつけたいのは、面積の基準が、特定防火対象物か非特定防火対象物かでは決まらないことです。飲食店と店舗は特定防火対象物、工場、倉庫、事務所は非特定防火対象物ですが、同じ非特定防火対象物でも、工場は150㎡以上、事務所は300㎡以上と基準が違います(消防法施行令第34条の4、別表第一)。基準は、特定か非特定かではなく、項ごとに定められています。
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4. 飲食店などは、火を使う設備があれば面積に関係なく対象
小さな飲食店でも、火を使用する設備や器具を設けていれば、消火器を置く対象です(消防法施行令第10条第1項第1号ロ)。火を使用する設備や器具を設けていない(三)項の建物は、延べ面積150㎡以上で対象になります(消防法施行令第10条第1項第2号ロ)。
ただし、火を使用する設備や器具のうち、防火上有効な措置として総務省令で定める措置が講じられたものは、ここでいう設備や器具から除かれます(消防法施行令第10条第1項第1号ロ)。第2号ロは、第1号ロに掲げるものを除く(三)項を、延べ面積150㎡以上と定めています(消防法施行令第10条第1項第2号ロ)。どの設備が「火を使用する設備」にあたるか、どの措置が総務省令の措置にあたるかは、不明な場合は管轄の消防本部に確認してください。
延べ面積が80㎡の飲食店があり、火を使用する設備を設けているとします。(三)項は火を使用する設備を設けていれば面積に関係なく対象なので、80㎡でも消火器を置く対象です(消防法施行令第10条第1項第1号ロ)。

5. 延べ面積が基準に届かなくても、階で対象になる場合
延べ面積が150㎡や300㎡に届かない建物でも、地階、無窓階、3階以上の階の床面積が50㎡以上なら、その階は消火器を置く対象です。第1号から第4号の対象にならない建築物について、消防法施行令が別に定めています(消防法施行令第10条第1項第5号)。
無窓階とは、建築物の地上階のうち、総務省令で定める避難上または消火活動上有効な開口部を有しない階のことです(消防法施行令第10条第1項第5号)。無窓階の基準は、こちらで説明しています。
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第2号と第3号は建物全体の延べ面積で見ますが、第5号は階ごとの床面積で見ます。
延べ面積が280㎡で、3階建ての事務所があるとします。事務所などの事業場は延べ面積300㎡以上が基準なので、280㎡では第3号の対象になりません。ただし、3階の床面積が90㎡なら、3階は50㎡以上なので、その階は消火器を置く対象です(消防法施行令第10条第1項第3号・第5号)。少量危険物などの取り扱いはないものとします。
6. 危険物や指定可燃物を扱う場合
少量危険物や指定可燃物を貯蔵し、または取り扱う建築物は、第1号から第3号の対象にならなくても、消火器を置く対象です(消防法施行令第10条第1項第4号)。この号には、面積による区切りがありません。
少量危険物とは、危険物のうち、指定数量の5分の1以上で、指定数量未満のものです。指定可燃物とは、危険物の規制に関する政令の別表第四の品名欄に掲げる物品で、数量欄に定める数量以上のものです(消防法施行令第10条第1項第4号)。工場や倉庫でこうした物を扱う場合は、対象です。

7. 対象になったあとに決まること
対象になったら、次に決まるのは、置く場所と本数です。
置く場所は、通行や避難に支障がなく、使うときに容易に持ち出せる箇所です(消防法施行令第10条第2項第2号)。
本数は、建物の延べ面積などを項ごとの面積で割った数以上になるように、消火器の能力(能力単位)の合計を設けて決めます(消防法施行規則第6条第1項)。少量危険物や指定可燃物を扱う場合、変圧器や配電盤などの電気設備がある場合、鍛造場、ボイラー室、乾燥室など多量の火気を使用する場所がある場合には、追加の定めがあります(消防法施行規則第6条第3項から第5項)。計算の方法は、こちらで説明しています。
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8. まとめ
覚えておきたいポイント
・消火器を置く対象かどうかは、項ごとの面積の基準、階の条件、少量危険物・指定可燃物の有無で決まります。
・面積に関係なく対象になるのは、(一)項イ、(二)項、(六)項イ(1)〜(3)、(六)項ロ、(十六の二)項、(十六の三)項、(十七)項、(二十)項です。(三)項は、火を使用する設備・器具を設けていれば面積に関係なく対象です。
・延べ面積150㎡以上で対象になるのは、(一)項ロ、(三)項(火を使用する設備・器具なし)、(四)項、(五)項、(六)項イ(4)・ハ・ニ、(九)項、(十二)項〜(十四)項です。
・延べ面積300㎡以上で対象になるのは、(七)項、(八)項、(十)項、(十一)項、(十五)項(事務所などの事業場)です。
・面積の基準は、特定防火対象物か非特定防火対象物かではなく、項ごとに決まります。
・延べ面積が基準に届かなくても、地階・無窓階・3階以上の階で床面積が50㎡以上なら、その階は対象です。
・少量危険物や指定可燃物を貯蔵し、または取り扱う建築物は、面積に関係なく対象です。
・何本必要かは、面積と能力単位から計算します。
・不明な場合は、管轄の消防本部に確認してください。
※本記事は一般的な情報提供を目的としており、個別の建物や店舗への適用を保証するものではありません。実際の取り扱いは、管轄の消防本部に確認してください。

コメント
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