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消防設備士とは。工事・整備・点検でできることと、免状・試験の仕組みをやさしく解説

消防設備士とは。工事・整備・点検でできることと、免状・試験の仕組みをやさしく解説

消防設備の工事と整備には免状が必要ですが、点検は免状がなくても行える場合があります。消防設備の工事や点検を頼むときや、消防設備士の資格を調べ始めるときに、まず知りたいのは、資格がないと何ができないのか、という点でしょう。仕事の種類によって、答えは少しずつ違います。資格を調べるなら、免状には甲種と乙種があり、類は設備ごとに決まっていて、その先に試験と講習の仕組みがあります。この記事を読むと、資格の入口として、仕事の範囲、免状の種類、試験と講習の仕組みについて、消防法令に沿って知ることができます。

目次

1. 免状がないと、行えない工事と整備がある

消防設備士免状の交付を受けていない人は、政令で定める消防用設備等の、設置に係る工事と整備を行ってはならないとされています(消防法第17条の5)。その政令が消防法施行令で、対象になる設備を定めています。

先に、工事、整備、点検の使い分けを説明します。工事は、設備を設置する作業です。免状が必要な工事は、設置に係るものに限られています(消防法第17条の5、消防法施行令第36条の2第1項)。整備は、設置した設備の修理や部品の交換などをする作業、点検は、設備が働くかどうかを確かめる作業です。整備と点検の定義は条文にないため、この2つは目安の説明として読んでください。

区分 設備
設置の工事と整備の両方が対象 屋内消火栓設備、スプリンクラー設備、水噴霧消火設備、泡消火設備、不活性ガス消火設備、ハロゲン化物消火設備、粉末消火設備、屋外消火栓設備、自動火災報知設備、ガス漏れ火災警報設備、消防機関へ通報する火災報知設備、金属製避難はしご(固定式のものに限る)、救助袋、緩降機
整備だけが対象 消火器、漏電火災警報器

(消防法施行令第36条の2第1項・第2項)

消火器と漏電火災警報器は、整備だけが免状の対象です。設置に係る工事は、免状が必要な工事に含まれません。免状が必要な工事と整備は、この表の設備のほか、表の設備に類するものとして消防庁長官が定める設備等も対象です(消防法施行令第36条の2第1項柱書・第2項)。センターの令和8年度の試験案内には、パッケージ型消火設備などが各類の設備として載っています。誘導灯や排煙設備は、消防法施行令第36条の2に挙がっていません。

表の設備でも、対象から除かれる部分があります。電源の部分は、屋内消火栓設備から消防機関へ通報する火災報知設備まで(第一号から第十号までの設備)で、工事と整備の対象から除かれます。金属製避難はしご、救助袋、緩降機は、この除外の対象ではありません。屋内消火栓設備、スプリンクラー設備、水噴霧消火設備、屋外消火栓設備は、電源に加えて、水源と配管の部分も除かれます(消防法施行令第36条の2第1項柱書・第2項第一号)。

整備にも、免状がなくても行える範囲があります。屋内消火栓設備の表示灯の交換など、総務省令で定める軽微な整備は、免状が必要な整備から除かれています(消防法施行令第36条の2第2項)。消防法施行規則が例に挙げているのは、屋内消火栓設備や屋外消火栓設備のホースやノズル、ヒューズ類、ネジ類などの部品の交換と、消火栓箱やホース格納箱などの補修です(消防法施行規則第33条の2の2)。消火器の整備は、軽微なものを除いて、免状が必要な整備の対象です(消防法施行令第36条の2第2項第二号)。軽微な整備にあたるかどうか不明な場合は、管轄の消防本部に確認してください。

作業台に並ぶ工具

2. 点検は、免状がなくても行える場合がある

消防用設備等の定期点検は、防火対象物の関係者の義務です。関係者は、定期に点検を行い、その結果を消防長または消防署長に報告しなければなりません(消防法第17条の3の3)。

点検をだれが行うかは、建物によって分かれます。政令で定める防火対象物では、消防設備士免状の交付を受けている人か、総務省令で定める資格を持つ人に点検させます。それ以外の防火対象物では、関係者が自ら点検します(消防法第17条の3の3)。

資格者に点検させる建物は、特定防火対象物では延べ面積が1,000㎡以上のもの、非特定防火対象物では延べ面積が1,000㎡以上のうち消防長または消防署長が火災予防上必要と認めて指定したもの、などです。飲食店や物販店は特定防火対象物、工場や事務所は非特定防火対象物です(消防法施行令第36条第2項、別表第一。特定防火対象物は消防法第17条の2の5第2項第4号、消防法施行令第34条の4)。

総務省令で定める資格を持つ人は、電気工事士、管工事施工管理技士、建築士などのうち、消防庁長官の登録を受けた法人の講習を修了して、その法人が発行する書類(免状)の交付を受けた人です。「消防設備点検資格者」と呼ばれます(消防法施行規則第31条の6第7項)。点検できる設備の種類は、消防庁長官が定めています(消防法施行規則第31条の6第6項)。

消防設備士の側から見ると、消防試験研究センターの令和8年度の試験案内では、甲種は工事・整備・点検、乙種は整備・点検ができるとされています。工事と整備は免状が必要な仕事で、点検は免状を持つ人のほか、点検資格者も行える仕事です。

3. 工事の前後に出す届出

免状が必要な工事は、着手する日の10日前までに、甲種消防設備士が消防長または消防署長へ届け出ます。届け出るのは、設備の種類、工事の場所などです(消防法第17条の14)。届出書は「工事整備対象設備等着工届出書」で、工事の設計に関する図書として、平面図、配管と配線の系統図、計算書の写しを添えます(消防法施行規則第33条の18)。

着工届出書や設置届出書の様式は、日本消防設備安全センターが出している様式に統一されています。ただし、添付する書類や提出の運用は消防本部によって異なる場合があるため、管轄の消防本部に確認してください。

工事が終わったあとの届出は、別の義務です。特定防火対象物などの関係者は、消防用設備等を設置したときに、消防長または消防署長に届け出て、検査を受けなければなりません(消防法第17条の3の2)。着工届を出すのは工事をする甲種消防設備士、設置の届出と検査は建物の関係者、と届け出る人が分かれます。

着工届に係る書類の写しは、設備の維持管理に使う書類をまとめた「維持台帳」にとじます(消防法施行規則第31条の6第3項)。

壁に設置された点検盤

4. 免状は甲種と乙種、類は設備ごとに決まる

消防設備士免状の種類は、甲種と乙種です。行える工事や整備の種類は、免状の種類と類に応じて、総務省令が定めています(消防法第17条の6)。

免状 できること(センターの令和8年度試験案内) 類
甲種 工事、整備、点検 特類、1類〜5類
乙種 整備、点検 1類〜7類

類は、扱う設備ごとに分かれています。たとえば、1類は屋内消火栓設備、スプリンクラー設備、水噴霧消火設備、屋外消火栓設備、4類は自動火災報知設備、ガス漏れ火災警報設備、消防機関へ通報する火災報知設備です(消防法施行規則第33条の3)。免状は、扱う設備に対応する類のものが必要です。

消火器は6類、漏電火災警報器は7類で、どちらも乙種にしかありません。甲種の免状を持っていても、これらの整備には、乙種の6類または7類の免状が必要です(消防法施行規則第33条の3第1項・第3項)。

免状は、試験に合格した人に、都道府県知事が交付します(消防法第17条の7第1項)。全類の対象設備は、別の記事で一覧にしています。設備ごとの試験の中身は、消火器(6類)、自動火災報知設備など(4類)、屋内消火栓設備やスプリンクラー設備など(1類)の記事で説明しています。

5. 試験の仕組み。受験資格、内容、合格基準

試験は、甲種と乙種の2種類があり、毎年1回以上、都道府県知事が行います(消防法第17条の8第2項・第3項)。都道府県知事は、試験の事務を、総務大臣が指定する者に行わせることができます(消防法第17条の9第1項)。センターの令和8年度の試験案内(東京試験)には、東京都知事から委任された消防設備士試験として実施すると記載されています。試験は、センターの中央試験センター(東京)と道府県支部で実施され、現住所や勤務地にかかわらず、希望する都道府県で受験できます(センターの消防設備士試験のページ)。

乙種は、受験資格が必要ありません。どなたでも受験できます(センターの令和8年度試験案内、消防法施行規則第33条の13第1項)。甲種は、次のいずれかにあたる人でなければ受験できません(消防法第17条の8第4項)。

  • 大学、高等専門学校、高等学校、中等教育学校で、機械、電気、工業化学、土木、建築に関する学科や課程を修めて卒業した人
  • 乙種消防設備士免状の交付を受けた後、2年以上、免状が必要な整備の経験がある人
  • 総務省令で定める人。電気工事士、技術士の第二次試験の合格者、第一種から第三種までの電気主任技術者免状の交付を受けている人、工事整備対象設備等の工事の補助者として5年以上の実務経験がある人などです(消防法施行規則第33条の8第1項)

甲種の特類は、1類から3類までのいずれか、4類、5類の免状の交付を受けている人が受験できます(消防法施行規則第33条の8第2項)。

試験は、筆記試験と実技試験で行います。筆記試験の科目は、機械または電気に関する基礎的知識、消防用設備等の構造・機能と工事または整備の方法、消防関係法令です(消防法施行規則第33条の10第2項)。甲種の特類は筆記のみで、実技はありません(消防法施行規則第33条の9)。

区分 筆記 実技 試験時間
甲種(特類を除く) 45問 鑑別等5問、製図2問 3時間15分
甲種特類 45問 なし 2時間45分
乙種 30問 鑑別等5問 1時間45分

(センターの令和8年度試験案内。筆記と実技は同じ試験時間の中で行い、一部免除を受けると試験時間は短くなります)

実技の試験は、鑑別等と製図に分かれ、どちらも写真、イラスト、図面などを使った記述式です。筆記は、4つの選択肢から選ぶ方式で、マークシートに記入します(センターの令和8年度試験案内)。

合格基準は、筆記が、科目ごとの成績が40%以上で、かつ科目全体の成績が60%以上、実技が成績60%以上です(消防法施行規則第33条の11の2)。全体の正答率は、各科目の正答率を平均したものではありません。センターの試験案内には、甲種(1〜5類)の合格の例として、消防関係法令10問/15問、基礎的知識4問/10問、構造・機能・工事・整備13問/20問、全体で27問/45問(60%)と示されています。免除を受けた場合は、免除されていない問題数で、同じ基準を満たした人が合格となります。

ほかの免状や電気工事士の免状などがあると、申請により一部の科目が免除されます(消防法施行規則第33条の11)。免除の決まりは、別の記事で説明しています。

試験手数料(消費税非課税)は、センターの令和8年度試験案内では、甲種6,600円、乙種4,400円です。電子申請では、別に決済手数料160円(税込)がかかります。書面申請でも、郵便振替以外の払込方法(ペイジー、コンビニエンスストア、クレジットカード、スマホ決済)では、160円(税込)が別にかかります。一度払い込んだ手数料は返金されません。

受験の申請は、電子申請(インターネット)と書面申請(願書)の2通りです。センターは、令和10年度から受験申込みは原則として電子申請のみとなる予定と案内しています(センターの消防設備士試験のページ)。合格率は、センターの試験実施状況で確認できます。日程と申請方法は、受験する都道府県の支部の案内で確認してください。

書類ファイルと筆記具

6. 免状を受けたあとの決まり

試験に合格したら、免状の交付を申請します。申請書には、試験に合格したことを証明する書類を添え、すでに免状を持っている人は、その免状も添えます(消防法施行令第36条の3、消防法施行規則第33条の4)。

消防設備士は、業務に従事するとき、免状を携帯していなければなりません(消防法第17条の13)。また、業務を誠実に行い、工事や整備の質の向上に努めなければなりません(消防法第17条の12)。

講習も、消防設備士の義務です。都道府県知事などが行う、工事または整備に関する講習を受けなければなりません(消防法第17条の10)。受ける時期は、免状の交付を受けた日以後の最初の4月1日から2年以内です。その後は、講習を受けた日以後の最初の4月1日から5年以内に受けます。以後も同じ決まりで受けます(消防法施行規則第33条の17第1項・第2項)。講習の科目や時間は、消防庁長官が定めています(消防法施行規則第33条の17第3項)。

7. まとめ

覚えておきたいポイント

・消防設備士免状がないと、政令で定める消防用設備等の、設置に係る工事と整備は行えません。

・対象の設備は消防法施行令第36条の2に定められ、消火器と漏電火災警報器は整備だけが対象です。

・点検は、消防設備士のほか、消防設備点検資格者も行えます。 資格者に点検させる建物は、消防法施行令が定めています。

・甲種は工事・整備・点検、乙種は整備・点検ができます。扱える設備は、類ごとに決まっています。

・試験は甲種と乙種があり、乙種は受験資格が不要、甲種は受験資格が必要です。

・免状の交付を受けたあとは、免状の携帯と、最初の4月1日から2年以内、その後は5年以内ごとの講習が義務です。

・設備や手続きで不明な場合は、管轄の消防本部に確認してください。試験や免除の最新情報は、消防試験研究センターの案内で確認してください。

※本記事は一般的な情報提供を目的としており、個別の建物や店舗への適用を保証するものではありません。設備や手続きは管轄の消防本部に、試験や免除はセンターの案内で確認してください。

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