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屋内消火栓設備の設置基準。項ごとの面積と、倍読みの考え方

屋内消火栓設備の設置基準。項ごとの面積と、倍読みの考え方

建物を借りることになり、改装も考えています。「屋内消火栓設備は要るのか。700㎡という数字をよく見るが、自分の建物は当たるのか」と、確かめたくなる場面です。屋内消火栓設備が必要かどうかは、建物の使い方(項)ごとの延べ面積の基準を軸に、地階・無窓階・4階以上の床面積の基準も加わって決まります。さらに、耐火構造や壁・天井の仕上げの条件を満たすと、基準の面積を2倍や3倍に読み替える「倍読み」があり、同じ広さでも答えが変わります。この記事を読むと、飲食店、店舗、工場、倉庫、事務所がそれぞれどの項に当たるか、面積の基準、倍読みの当てはめ方について知ることができます。

目次

1. 飲食店・店舗・工場・事務所は、どの項に当たるか

屋内消火栓設備の基準は、建物の使い方を分けた「項」ごとに決まっています。この記事で例にする飲食店、物販店、工場、倉庫、事務所などの事業場は、次の項に当たります。

  • 飲食店は(三)項ロ
  • 物販店(百貨店、マーケットなど)は(四)項
  • 工場は(十二)項イ
  • 倉庫は(十四)項
  • 事務所などの事業場は(十五)項

項の見分け方の詳細は、下の記事で説明しています。

2. 項ごとの延べ面積の基準

屋内消火栓設備は、建物の延べ面積が項ごとに決まった数値以上のとき、設置が必要になります(消防法施行令第11条第1項第1号〜第4号)。飲食店・物販店・工場・倉庫は700㎡以上、事務所などの事業場は1,000㎡以上です。

下の表は、消防法施行令第11条が面積の基準を定めている項を、項ごとに1行で示したものです。表の用途名は、消防法施行令別表第一の区分に対応しています。右の列は、第3章で説明する、地階・無窓階・4階以上の階の床面積の基準です。

項 用途(消防法施行令別表第一) 延べ面積 地階・無窓階・4階以上の階の床面積
(一) イ 劇場、映画館、演芸場、観覧場 / ロ 公会堂、集会場 500㎡以上 100㎡以上
(二) イ キャバレー、カフェー、ナイトクラブなど / ロ 遊技場、ダンスホール / ハ 性風俗関連特殊営業を営む店舗など / ニ カラオケボックスなど 700㎡以上 150㎡以上
(三) イ 待合、料理店など / ロ 飲食店 700㎡以上 150㎡以上
(四) 百貨店、マーケットその他の物品販売業を営む店舗、展示場 700㎡以上 150㎡以上
(五) イ 旅館、ホテル、宿泊所など / ロ 寄宿舎、下宿、共同住宅 700㎡以上 150㎡以上
(六) イ 病院、診療所、助産所 / ロ 老人短期入所施設、特別養護老人ホーム、介護老人保健施設、障害児入所施設など / ハ 老人デイサービスセンター、保育所、児童発達支援センターなど / ニ 幼稚園、特別支援学校 700㎡以上 150㎡以上
(七) 小学校、中学校、義務教育学校、高等学校、中等教育学校、高等専門学校、大学、専修学校、各種学校など 700㎡以上 150㎡以上
(八) 図書館、博物館、美術館など 700㎡以上 150㎡以上
(九) イ 公衆浴場のうち、蒸気浴場、熱気浴場など / ロ イ以外の公衆浴場 700㎡以上 150㎡以上
(十) 車両の停車場、船舶・航空機の発着場(旅客の乗降または待合いの用に供する建築物に限る) 700㎡以上 150㎡以上
(十一) 神社、寺院、教会など 1,000㎡以上 200㎡以上
(十二) イ 工場、作業場 / ロ 映画スタジオ、テレビスタジオ 700㎡以上 150㎡以上
(十四) 倉庫 700㎡以上 150㎡以上
(十五) 前各項に該当しない事業場(事務所など) 1,000㎡以上 200㎡以上
(十六) イ 複合用途防火対象物のうち、その一部が(一)項から(四)項まで、(五)項イ、(六)項又は(九)項イに掲げる防火対象物の用途に供されているもの / ロ イに掲げる複合用途防火対象物以外の複合用途防火対象物 用途に当たる部分ごとに、その用途の項の基準を適用します(消防法施行令第9条) 用途に当たる部分ごとに、その用途の項の基準を適用します(消防法施行令第9条)
(十六の二) 地下街 150㎡以上 ―

(消防法施行令第9条、第11条第1項第1号〜第4号、第6号、別表第一)

(十六)項は、一つの建物に複数の用途が入る場合です。消防法施行令第9条により、(十六)項の建物の部分で(一)項から(十五)項までのいずれかの用途に当たるものは、屋内消火栓設備の基準については、その用途に当たる一つの防火対象物とみなされます。

表に載せていないのは、(十三)項(自動車車庫・駐車場、航空機の格納庫)、(十六の三)項、(十七)項〜(二十)項です。これらの項は、面積の基準を定めた同条第1項第1号〜第4号・第6号に定めがありません。ただし、指定可燃物を多く貯蔵し、または取り扱う場合の基準(同項第5号。第6章)は、項を問わず適用されるため、表にない項にも当てはまります。

表の延べ面積は、いずれも第4章の倍読みの対象です。

地下階へ続く通路

3. 地階・無窓階・4階以上は、その階の床面積で見る

延べ面積が基準に届かなくても、地階、無窓階、4階以上の階は、その階の床面積が基準以上のとき、設置が必要です(消防法施行令第11条第1項第6号)。無窓階とは、地上階のうち、避難や消火活動のために有効な開口部がない階のことです(消防法施行令第10条第1項第5号)。無窓階の見分け方は、無窓階とは。定義と、消火器・自動火災報知設備などの基準の違いの記事で説明しています。

床面積の基準は、(一)項が100㎡以上、(二)項から(十)項まで、(十二)項、(十四)項が150㎡以上、(十一)項と(十五)項が200㎡以上です。飲食店、物販店、工場、倉庫は150㎡、事務所などの事業場は200㎡になります。(十六の二)項は延べ面積150㎡以上で見るため、この基準はありません。

床面積の例(仮の数値です)

延べ面積が500㎡の事務所((十五)項)でも、地階の床面積が220㎡あれば、地階だけで200㎡以上になるため、設置が必要です(消防法施行令第11条第1項第6号)。

4. 倍読みとは何か

倍読みとは、特定主要構造部を耐火構造(火災に耐える性能をもつ構造)とした場合などに、第2章・第3章の面積の数値を2倍または3倍に読み替える決まりです(消防法施行令第11条第2項)。

3倍読みと2倍読みは、建物の構造と、壁・天井の室内に面する部分の仕上げの2点で分かれます。

読み替え 建物の構造 壁・天井の仕上げ
3倍読み 特定主要構造部を耐火構造とした建物 難燃材料でしてある
2倍読み(その1) 特定主要構造部を耐火構造とした建物 条件なし
2倍読み(その2) 準耐火建築物のうち、条文が定める2つの区分(イ・ロ)のどちらかに当たるもの(建築基準法第2条第9号の3イ・ロ) 難燃材料でしてある

(消防法施行令第11条第2項)

自分の建物に当てはめると、次のようになります。

  • 耐火構造で、壁・天井の仕上げも難燃材料 → 3倍読み
  • 耐火構造で、仕上げは難燃材料ではない → 2倍読み
  • 準耐火建築物(イ・ロ)で、壁・天井の仕上げが難燃材料 → 2倍読み
  • 上のどれにも当たらない → 読み替えはなく、通常の数値のまま

仕上げの条件が加わるのは、3倍読みと、準耐火建築物の2倍読みです。耐火構造の建物の2倍読みには、仕上げの条件はありません。

「特定主要構造部」は、建物の主要な構造部分のうち、建築基準法で定められたものです(建築基準法第2条第9号の2イ)。「難燃材料」は、燃えにくい建築材料のうち、建築基準法施行令で定められたものです(建築基準法施行令第1条第6号)。不燃材料と準不燃材料は、難燃材料より基準が厳しいので、これらで仕上げた場合も、難燃材料でしてあるものとして扱われます。内装制限そのものは、別の記事で説明しています。

読み替えたあとの数値は、次のとおりです。

通常の基準 2倍読み 3倍読み
100㎡以上 200㎡以上 300㎡以上
150㎡以上 300㎡以上 450㎡以上
200㎡以上 400㎡以上 600㎡以上
500㎡以上 1,000㎡以上 1,500㎡以上
700㎡以上 1,400㎡以上 2,100㎡以上
1,000㎡以上 2,000㎡以上 3,000㎡以上

表の数値には、上限が掛かる場合があります。消防法施行令第12条第1項第1号に掲げる防火対象物((六)項イ・ロの一部の施設)で、延べ面積700㎡以上の基準を読み替えるときは、読み替え後の数値が、3倍または2倍の数値と、1,000㎡に総務省令で定める部分の床面積の合計を加えた数値のうち、小さいほうになります(消防法施行令第11条第2項)。

読み替えの対象は、延べ面積だけではありません。地階・無窓階・4階以上の床面積の数値も読み替えます。

この章のポイント

倍読みになるのは、耐火構造などの構造の条件を満たしたときです。3倍と、準耐火建築物の2倍では、壁・天井の仕上げの条件も加わります。条件の当てはまりは、建物ごとに異なります。

また、読み替えの対象にならないものもあります。指定可燃物を多く貯蔵する建物(第5号)は、読み替えの対象外です(消防法施行令第11条第2項)。

倍読みの考え方

5. 倍読みの当てはめ方

倍読みを使うと、延べ面積では設置の対象から外れる建物があります。

工場の例(仮の数値です)

延べ面積800㎡の工場((十二)項イ)があるとします。通常の基準は700㎡以上なので、そのままでは設置が必要です。この工場が、特定主要構造部を耐火構造とした建物であれば、2倍読みで1,400㎡以上が基準になり、800㎡は下回ります(消防法施行令第11条第1項第2号、第2項)。ただし、地階・無窓階・4階以上の階がないものとし、指定可燃物の貯蔵や取り扱いも考えない場合です。

このように、倍読みになるかどうかで、設備の有無が変わります。倍読みの条件には、構造がかかわり、仕上げがかかわる場合もあります。不明な場合は、管轄の消防本部に確認してください。

耐火構造の建物の外観

6. 面積以外の決まりと、設置の基準

面積のほかに、屋内消火栓設備が必要になる場合があります。指定可燃物を、危険物の規制に関する政令別表第四で定める数量の750倍以上貯蔵し、または取り扱う建築物などです(消防法施行令第11条第1項第5号)。ただし、可燃性液体類に係るものは除きます。

設置する場合の基準(技術上の基準)は、建物の使い方で分かれます。工場((十二)項イ)と倉庫((十四)項)に係る部分、および指定可燃物を750倍以上貯蔵し、または取り扱う建築物などは、用途を問わず、各階のどの部分からでも、ホース接続口(ホースをつなぐ口)まで水平距離25メートル以下になるように設ける基準です(消防法施行令第11条第3項第1号)。指定可燃物の場合は、飲食店や事務所などでも、この25メートルの基準になります。それ以外の部分では、これに加えて、水平距離15メートル以下とする基準や、25メートル以下で水量・放水量を別に定めた基準も選べます(消防法施行令第11条第3項第2号)。細かい寸法や性能は、規則に定めがあります(消防法施行規則第12条)。

屋内消火栓設備の代わりに、スプリンクラー設備などを、それぞれの技術上の基準に従って設置したときは、その有効範囲内の部分には設置しないことができます(消防法施行令第11条第4項)。対象になる設備や範囲は、条文で決まっています。パッケージ型消火設備との違いは、下の記事で説明しています。

7. まとめ

覚えておきたいポイント

・屋内消火栓設備は、建物の項ごとの延べ面積の基準で設置が決まります。(一)項は500㎡以上、(二)〜(十)項、(十二)項、(十四)項は700㎡以上、(十一)項と(十五)項は1,000㎡以上、(十六の二)項(地下街)は150㎡以上です。

・飲食店は(三)項ロ、物販店は(四)項、工場は(十二)項イ、倉庫は(十四)項、事務所などの事業場は(十五)項です。

・地階・無窓階・4階以上は、その階の床面積で見ます。基準は100㎡、150㎡、200㎡のいずれかです。

・倍読みは、構造の条件を満たすと、面積の数値を2倍または3倍に読み替える決まりです。耐火構造で仕上げも難燃材料なら3倍、耐火構造なら仕上げに関係なく2倍、準耐火建築物(イ・ロ)で仕上げが難燃材料なら2倍です。

・指定可燃物を750倍以上貯蔵し、または取り扱う建築物などは、面積に関係なく対象になります。倍読みの対象外です。

・工場と倉庫に係る部分と、指定可燃物を750倍以上扱う建築物などは、用途を問わず水平距離25メートル以下の基準です。それ以外の部分は、これに加えて15メートル以下などの基準も選べます。

・不明な場合は、管轄の消防本部に確認してください。

※本記事は一般的な情報提供を目的としており、個別の建物や店舗への適用を保証するものではありません。実際の取り扱いは、管轄の消防本部に確認してください。

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