倉庫や工場の中を壁や床で区切るとき、一定の条件で区画された部分は、設備の基準を見るうえで、別の防火対象物とみなされます(消防法施行令第8条)。この区画を、以下「令8区画」と呼びます。ただし、壁や床を設ければよいわけではなく、区画には構造の条件があり、区画の種類によって求められる中身が違います。この記事を読むと、区画の条件、区画すると変わる設備の例と防火管理の範囲、区画に関わる手続について、条文に沿って知ることができます。
1. 消防法施行令第8条は、区画した部分を別の防火対象物とみなす
令8区画は、消防法施行令第8条が定める仕組みです。
「防火対象物が次に掲げる当該防火対象物の部分で区画されているときは、その区画された部分は、この節の規定の適用については、それぞれ別の防火対象物とみなす。」(消防法施行令第8条)
「この節」は、消防法施行令の第2章第3節「設置及び維持の技術上の基準」です。消火設備、警報設備、避難設備、消防用水、消火活動上必要な施設などの基準が、この節にまとめられています。つまり、条件を満たす区画で仕切ると、1つの建物でも、これらの基準を見るときは、区画した部分ごとに別の防火対象物として扱われます。
ただし、壁や床を設ければ、それだけで令8区画になるわけではありません。区画する部分には、構造の条件があります。

2. 区画は、2種類ある
消防法施行令第8条は、区画する部分を2つに分けています。
- 第1号: 開口部のない耐火構造の床または壁。
- 第2号: 床、壁その他の建築物の部分、または防火設備(防火戸その他の総務省令で定めるものに限る)のうち、防火上有効な措置として総務省令で定める措置が講じられたもの(第1号に掲げるものを除く)。
「耐火構造」は、建築基準法に規定する耐火構造です(消防法施行令第8条第1号)。条件の具体的な中身は、総務省令である消防法施行規則が定めています(第1号は消防法施行規則第5条の2、第2号は同規則第5条の3)。
第1号の条件は第3章と第4章で、第2号の条件は第5章で説明します。第2号の基準のうち、渡り廊下に関するものは、下の記事で取り上げています。
3. 第1号の壁と床に求められる構造
第1号の「開口部のない耐火構造の床または壁」(以下「耐火構造の壁等」)には、構造の条件が定められています(消防法施行規則第5条の2)。
1つ目は、材質と強さです。
「耐火構造の壁等は、鉄筋コンクリート造、鉄骨鉄筋コンクリート造その他これらに類する堅ろうで、かつ、容易に変更できない構造であること。」(消防法施行規則第5条の2第1号)
2つ目は、火に耐える時間です。
「耐火構造の壁等は、建築基準法施行令第百七条第一号の表の規定にかかわらず、同号に規定する通常の火災による火熱が二時間加えられた場合に、構造耐力上支障のある変形、溶融、破壊その他の損傷を生じないものであること。」(消防法施行規則第5条の2第2号)
3つ目が、壁の端の処理です。耐火構造の壁等の両端または上端は、防火対象物の外壁または屋根から50センチメートル以上突き出していなければなりません(消防法施行規則第5条の2第3号)。
この突出には、ただし書きがあります。耐火構造の壁等と、これに接する外壁または屋根の幅3.6メートル以上の部分を耐火構造とし、さらに、その部分が次の二つのどちらかを満たすときは、突出させなくてもかまいません(消防法施行規則第5条の2第3号ただし書)。
- 開口部が設けられていないこと。
- 開口部に防火戸が設けられており、かつ、耐火構造の壁等を隔てた開口部どうしが90センチメートル以上離れていること。
条文は、壁そのものの構造に加えて、外壁や屋根との取り合い、開口部の位置まで定めています。

4. 区画の壁に配管を通すとき
耐火構造の壁等は、配管を貫通させないことが原則です(消防法施行規則第5条の2第4号)。ただし、配管と、配管が貫通する部分(貫通部)が、表の条件にすべて適合する場合は、貫通が認められます。
| 項目 | 条件 |
|---|---|
| 配管の用途 | 原則として給排水管 |
| 配管の呼び径 | 200ミリメートル以下 |
| 貫通部の内部の断面積 | 直径300ミリメートルの円の面積以下 |
| 貫通部を2つ以上設けるとき | 貫通部どうしの距離は、直径が大きい貫通部の直径の長さ以上(その直径が200ミリメートル以下なら200ミリメートル以上) |
| 隙間の処理 | 配管と貫通部の隙間を不燃材料により埋める方法その他これに類する方法により、火災時に生ずる煙を有効に遮ること |
| 壁等との一体性 | 配管と貫通部は、耐火構造の壁等と一体として、消防法施行規則第5条の2第2号の性能(2時間の火熱に耐えること)を持つこと |
| 可燃物との接触 | 配管の表面に可燃物が接触しないような措置を講じること(接触しても発火するおそれがないと認められる場合を除く) |
後から設備を増設して配管を通す場合も、貫通させないことが原則で、表の条件に適合するときだけ例外になります。

5. 第2号の区画は、防火戸と措置で成り立つ
第2号の区画は、防火設備と、防火上有効な措置の組み合わせでできています。
防火設備は「防火戸」です(消防法施行規則第5条の3第1項)。防火上有効な措置は、壁等(床、壁その他の建築物の部分または防火戸)の区分に応じた基準に適合させるための措置です(消防法施行規則第5条の3第2項)。
区分の1つめは、渡り廊下または建築基準法施行令第128条の7第2項に規定する室(廊下、階段その他の通路、便所その他これらに類するものに限る)を構成する壁等で、建築基準法第21条第3項、第27条第4項または第61条第2項の規定の適用がある防火対象物の壁等です。基準は、防火戸が閉鎖したときに防火上支障のない遮煙性能を持つこと、区画された部分のそれぞれの避難階以外の階に直通階段が設けられていることです(同条第2項第1号)。
区分の2つめは、これらに類するものとして消防庁長官が定める壁等で、消防庁長官が定める基準によります(同条第2項第2号)。
第1号の区画は「開口部のない」壁等ですが、第2号は防火戸を使った区画を含む点が違います。
6. 区画すると変わる設備の例と、防火管理の範囲
令8区画で区画された部分は、消防用設備等の技術上の基準で、それぞれ別の防火対象物として扱われます。設備の判断がどう変わるかを、仮の数値で考えます。
倉庫((十四)項)の建物で、延べ面積が1,200㎡だとします。この建物を令8区画で、600㎡ずつの2つに区画した場合を考えます。
| 設備 | 区画しない場合(1,200㎡) | 区画した場合(600㎡ずつ) |
|---|---|---|
| 屋内消火栓設備(延べ面積700㎡以上。消防法施行令第11条第1項第2号) | 対象に当たる | どちらも700㎡に届かない |
| 自動火災報知設備(延べ面積500㎡以上。消防法施行令第21条第1項第4号) | 対象に当たる | どちらも500㎡以上で、対象に当たる |
区画をしても、判断が変わる設備と、変わらない設備があります。屋内消火栓設備には、建物の構造や仕上げによって面積の数値を2倍、3倍に読み替える規定もあります(消防法施行令第11条第2項)。ほかの条件に当たる場合も、別に判断します。
消防法施行令第8条が別の防火対象物とみなすのは、「この節の規定の適用」についてです。防火管理者を定める防火対象物の規定は、第1章「火災の予防」にあり、「この節」には含まれません(消防法施行令第1条の2)。同じ敷地内で、管理について権原を有する人が同一の防火対象物が2つ以上あるときは、防火管理者を定める義務の適用では、1つの防火対象物とみなされます(消防法第8条第1項、消防法施行令第2条)。区画した建物の防火管理をどの単位で行うかは、消防法施行令第2条の定めと、管轄の消防本部の取扱いを確認してください。
7. 区画に関わる手続
消防法施行令第8条と消防法施行規則第5条の2・第5条の3が定めているのは、区画の条件までです。
区画の計画は、建築や設備の手続と一緒に動きます。建築物の新築、増築、改築、修繕、模様替、用途の変更などの許可や確認をする行政庁等は、あらかじめ、その建築物の所在地を管轄する消防長または消防署長の同意を得なければなりません。例外として、一定の住宅の場合があります(消防法第7条)。
区画した結果、消防用設備等を設置するときは、防火対象物の用途や延べ面積などによって、設置の届出と検査の対象になります(消防法第17条の3の2)。対象になる防火対象物は、政令で用途ごとに定められています。たとえば、物販店((四)項)や飲食店((三)項ロ)は、延べ面積300㎡以上のものが対象です(消防法施行令第35条第1項第2号)。倉庫((十四)項)や工場((十二)項イ)は、延べ面積300㎡以上のもののうち、消防長または消防署長が火災予防上必要があると認めて指定するものが対象です(消防法施行令第35条第1項第3号)。対象になる消防用設備等から、簡易消火用具と非常警報器具は除かれます(消防法施行令第35条第2項)。
対象のときは、工事が完了した日から4日以内に、消防長または消防署長に届け出ます(消防法施行規則第31条の3第1項)。設備の工事を行う甲種消防設備士は、工事に着手しようとする日の10日前までに、工事整備対象設備等の種類や工事の場所などを届け出ます(消防法第17条の14)。設置した後は、定期に点検し、その結果を報告します(消防法第17条の3の3)。
8. まとめ
覚えておきたいポイント
・令8区画は、消防法施行令第8条により、区画された部分を、消防用設備等の技術上の基準の適用で、別の防火対象物とみなす仕組みです。
・区画は、第1号(開口部のない耐火構造の床または壁)と、第2号(防火戸と防火上有効な措置)の2種類です。
・第1号の壁等は、堅ろうで容易に変更できない構造で、2時間の火熱に耐え、両端または上端を外壁・屋根から50センチメートル以上突き出すことが原則です(消防法施行規則第5条の2)。
・突出は、幅3.6メートル以上を耐火構造とし、開口部がないか、防火戸があり開口部どうしが90センチメートル以上離れているときは不要です。
・配管の貫通は原則禁止です。給排水管、呼び径200ミリメートル以下、断面積は直径300ミリメートルの円以下などの条件に適合するときだけ認められます。
・区画すると、面積で決まる設備の判断が変わることがありますが、変わらない設備もあります。
・条文上、消防法施行令第8条は「この節」の規定の適用について、区画された部分を別の防火対象物とみなします。防火管理の単位は、消防法施行令第2条の定めと、消防本部の取扱いを確認します。
・不明な場合は、管轄の消防本部に確認してください。
※本記事は一般的な情報提供を目的としており、個別の建物や店舗への適用を保証するものではありません。実際の取り扱いは、管轄の消防本部に確認してください。

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