「防火管理者をお願いします」と言われて引き受けたものの、実際に何をする役割なのかは、はっきりしません。訓練は年に何回やるのか、設備の点検や消防への報告はだれの仕事なのか、といった点です。防火管理者の業務は消防法に挙げられていて、訓練の回数は、建物が特定防火対象物か非特定防火対象物かで変わります。この記事を読むと、業務の内容、消防計画、訓練、点検と報告、地震などへの備え、外部への委託、自分の建物への当てはめについて知ることができます。
1. 防火管理者の業務は、消防法に挙がっています
防火管理者がする仕事は、消防法に列挙されています。建物の管理について「権原」を持つ人(防火管理者を決める人)は、これらを防火管理者に「行わせなければならない」とされています(消防法第8条第1項)。
(前略)消防計画の作成、当該消防計画に基づく消火、通報及び避難の訓練の実施、消防の用に供する設備、消防用水又は消火活動上必要な施設の点検及び整備、火気の使用又は取扱いに関する監督、避難又は防火上必要な構造及び設備の維持管理並びに収容人員の管理その他防火管理上必要な業務を行わせなければならない。
この条文を日常の言葉にすると、7つの業務になります。
| 業務 | 内容 |
|---|---|
| 消防計画の作成 | 建物に合わせた、防火管理のための計画を作る |
| 訓練の実施 | 消防計画に基づいて、消火、通報、避難の訓練を行う |
| 設備の点検・整備 | 消火器などの消防の用に供する設備、消防用水、消火活動上必要な施設を点検し、整える |
| 火気の監督 | 火を使う場面や、火を使う器具の取扱いを見て、指導する |
| 構造・設備の維持管理 | 避難や防火のために必要な建物の構造と設備を、使える状態に保つ |
| 収容人員の管理 | 建物にいる人の数を管理する |
| その他 | 防火管理上必要な業務 |
防火管理者になれるのは、消防法施行令に定められた資格を持つ人です。資格の内容は防火管理者とは?役割・選任・届出をやさしく解説【2026年版】、選任の届出は防火管理者の選任・解任の届出書の書き方。項目ごとの記入のしかたと添付書類で案内しています。
防火管理者自身の責務は、4点あります。総務省令に従って消防計画を作り、所轄の消防長または消防署長に届け出ること。その計画に基づいて、先の7つの業務を行うこと。業務にあたっては、必要に応じて権原を有する者の指示を求め、誠実に職務を遂行すること。設備の点検・整備や火気の監督では、火元責任者その他の防火管理の業務に従事する人に、必要な指示を与えること(消防法施行令第3条の2)。
くわしく知りたい方へ

2. 消防計画に書く内容
消防計画は、防火管理者が作ります。建物の位置、構造、設備の状況と使い方に応じて、権原を有する者の指示を受けながら作り、消防計画の届出書で管轄の消防長または消防署長に届け出ます。変更するときも同じ手続です(消防法施行規則第3条第1項。規則の別記様式は第一号の二)。
書く項目の要旨は以下の12点で、一つひとつが先ほどの業務に対応しています(消防法施行規則第3条第1項第1号)。
- 自衛消防の組織
- 防火対象物の火災予防上の自主検査
- 消防用設備等または特殊消防用設備等の点検と整備
- 避難通路、避難口、安全区画、防煙区画その他の避難施設の維持管理と案内
- 防火壁、内装その他の防火上の構造の維持管理
- 定員の遵守その他の収容人員の適正化
- 防火管理上必要な教育
- 消火、通報、避難の訓練その他、防火管理上必要な訓練の定期的な実施
- 火災、地震その他の災害が発生した場合の消火活動、通報連絡、避難誘導
- 防火管理についての消防機関との連絡
- 増築、改築、移転、修繕または模様替えの工事中の建物での、防火管理者またはその補助者の立会いその他、火気の使用や取扱いの監督
- そのほか、防火管理に関し必要な事項
自主検査のやり方は、ここでは「消防計画に定める」ことまでが決まりです。これらは「おおむね」挙げられた事項で、実際の計画は建物の実態に合わせて作ります。
くわしく知りたい方へ
3. 消防訓練は年に何回か。特定か非特定かで変わります
消火、通報、避難の訓練は防火管理者の業務です。回数は、建物が特定防火対象物か非特定防火対象物かで変わります。
特定防火対象物は、多数の者が出入りする建物として法令が定めるものです(消防法第17条の2の5第2項第4号、消防法施行令第34条の4)。飲食店や店舗は特定防火対象物、工場、事務所、倉庫は非特定防火対象物です。令別表第一では、飲食店が(三)項ロ、店舗が(四)項、工場が(十二)項イ、倉庫が(十四)項、事務所が(十五)項です。見分け方の詳細は、特定防火対象物と非特定防火対象物の違い。該当する項と、点検報告・訓練・防火管理者の基準で案内しています。
訓練の回数は、区分ごとに決まっています。
| 区分 | 消火訓練・避難訓練の回数 |
|---|---|
| 特定防火対象物 | 年2回以上 |
| 非特定防火対象物 | 消防計画に定めた回数 |
特定防火対象物は、消火訓練と避難訓練を年2回以上行います(消防法施行規則第3条第10項)。訓練を行うときは、あらかじめ消防機関に通報します(消防法施行規則第3条第11項)。非特定防火対象物は、消防計画に定めた回数で行います。
なお、消防法施行規則第3条第10項の対象は、特定防火対象物のうち、(十六の三)項(建築物の地階で連続して地下道に面して設けられたものなど)を除いたものです。
非特定防火対象物で、あらかじめの通報が必要かどうかは、不明な場合は管轄の消防本部に確認してください。
くわしく知りたい方へ

4. 日々の管理と、定期点検・報告はだれがするのか
日々の点検・整備は防火管理者の業務です。消防用設備等の定期点検と消防への報告は別の決まりで、報告の義務を負うのは防火対象物の関係者であり、防火管理者ではありません。
日々の管理にあたるのは、設備の点検・整備、火気の監督、避難施設と防火上の構造の維持管理、収容人員の管理です。避難通路や避難口を使える状態に保つ、防火壁や内装といった防火上の構造を維持する、定員を守る、といった内容は、消防計画の項目にも挙がっています(第2章)。
これとは別に、消防用設備等には、定期の点検とその結果の報告が決まっています。
点検は、設備の種類と点検の内容に応じて、一年以内で消防庁長官が定める期間ごとに行います。点検するのは、防火対象物のうち政令で定めるものでは、消防設備士免状の交付を受けている人か、総務省令で定める資格を持つ人です(消防法第17条の3の3、消防法施行規則第31条の6)。それ以外は、関係者が自ら点検します。結果は維持台帳に記録します。点検の方法と報告書の様式は、消防庁長官が定めます(消防法施行規則第31条の6)。
点検の結果は、消防長または消防署長に報告します。この報告の義務を負うのは関係者で、防火管理者ではありません。報告の対象からは「政令で定めるものを除く」とされていますが、その範囲は、自分の建物が当たるかどうか不明な場合、管轄の消防本部に確認してください(消防法第17条の3の3)。
報告の間隔は、特定防火対象物か非特定防火対象物かで変わります(消防法施行規則第31条の6第3項)。
| 区分 | 報告の間隔 |
|---|---|
| 特定防火対象物 | 1年に1回 |
| 非特定防火対象物 | 3年に1回 |
令別表第一の(十九)項と(二十)項には、報告の間隔の定めがありません(消防法施行規則第31条の6第3項)。
5. 地震など、火災以外の災害への備え
消防計画には、火災だけでなく、地震その他の災害が発生した場合の消火活動、通報連絡、避難誘導も書きます(第2章)。
加えて、次の地域にある一定の施設の防火管理者は、消防計画へ地震に関する事項を定めます(消防法施行規則第3条第4項・第6項・第8項)。
- 地震防災対策強化地域(大規模地震対策特別措置法による指定)
- 南海トラフ地震防災対策推進地域
- 日本海溝・千島海溝周辺海溝型地震防災対策推進地域
定める事項は、警戒宣言の場合の自衛消防の組織、避難誘導、防災訓練、教育と広報などで、地域により書きぶりは異なります。どの施設が対象になるかは関連法令の政令で決まるため、自分の建物が当たるかどうかは、その政令の定めによります。
6. 業務を外部に委託する場合
防火管理の業務の一部を外部に任せている建物では、消防計画に定める事項が増えます。
業務の一部を、関係者(所有者、管理者または占有者)とその雇用者(その建物で勤務している人)以外に委託しているときは、受託者の氏名と住所(法人は名称と主たる事務所の所在地)、受託者が行う業務の範囲と方法を定めます。消防用設備等の点検は、この対象から除かれています(消防法施行規則第3条第2項)。
どの業務が委託されているかは、契約の実態によって決まります。
7. 自分の建物に当てはめるとき
ここまでの内容で、建物ごとに答えが変わるのは、特定防火対象物か非特定防火対象物か、委託の有無、所在地域の3点です。
業務が行われていない場合の定めもあります。消防長または消防署長は、業務が法令の規定や消防計画に従って行われていないと認めるときは、権原を有する者に対し、必要な措置を講ずべきことを命ずることができます(消防法第8条第4項)。消防計画を変更するときに届出が必要なことは、第2章のとおりです。
くわしく知りたい方へ
8. まとめ
覚えておきたいポイント
・防火管理者の業務は、消防法に挙げられています。消防計画の作成、訓練、設備の点検・整備、火気の監督、避難施設などの維持管理、収容人員の管理などです。
・防火管理者を決めて業務を行わせるのは、建物の権原を持つ人の義務です。
・消防計画は、作成も変更も、消防に届け出ます。
・自分の建物が特定防火対象物か、非特定防火対象物かを確かめます。これで、訓練の回数と、点検結果の報告の間隔が決まります。
・訓練は、特定防火対象物が年2回以上(事前の通報あり)、非特定防火対象物は消防計画に定めた回数です。
・消防用設備等の定期点検の結果は、特定防火対象物が1年に1回、非特定防火対象物が3年に1回、消防に報告します。報告の義務を負うのは関係者で、防火管理者ではありません。
・業務を外部に委託している場合は、消防計画に追加で定める事項があります。
・不明な場合は、管轄の消防本部に確認してください。
※本記事は一般的な情報提供を目的としており、個別の建物や店舗への適用を保証するものではありません。実際の取り扱いは、管轄の消防本部に確認してください。

コメント
コメント一覧 (5件)
[…] ・防火管理者の業務とは?法令に定められた内容を一覧で整理 […]
[…] 防火管理者がやるべき業務一覧|査察で確認される内容 […]
[…] ・防火管理者の業務とは?法令に定められた内容を一覧で整理 […]
[…] ・防火管理者の業務とは?法令に定められた内容を一覧で整理 […]
[…] ・防火管理者の業務とは?法令に定められた内容を一覧で整理 […]