同じ防火管理者の届出でも、選任のときは、防火管理者の資格を証する書面を添える点が加わります。防火管理者を決めたとき(選任)も、やめてもらったとき(解任)も、遅滞なく(遅れずに)消防に届け出ます。「前任の防火管理者が異動になった」「総務から、選任と解任の届出を出すように言われた」と急に任されたときは、届出書の項目ごとの記入のしかたから確かめていくことになります。防火管理者を決める必要があるかどうかは、防火管理者とは?役割・選任・届出をやさしく解説【2026年版】で説明しています。この記事を読むと、届出が必要な場面と届出書の様式、記入のしかた、防火管理者になれる人と添える書類、消防計画との関係、届出を怠った場合について、条文に沿って知ることができます。
1. 届出が必要な場面と、届出書の様式
防火管理者を決めたときも、解任したときも、届出が必要です。根拠は、消防法第8条第2項です。
前項の権原を有する者は、同項の規定により防火管理者を定めたときは、遅滞なくその旨を所轄消防長又は消防署長に届け出なければならない。
これを解任したときも、同様とする。(消防法第8条第2項)
届け出る人は、防火管理者を決める人、つまり建物の管理について「権原」(管理について決める権利)を持つ人です。会社であれば、様式の氏名の欄に、法人の名称と代表者の氏名を書きます。
消防法施行規則に別記様式が定められています(消防法施行規則第3条の2第1項)。ただし、実際に使う様式は消防本部ごとに異なるのが一般的です。使う様式は、管轄の消防本部に確認してください。条文が定めている期限は「遅滞なく」までです。
防火管理者を入れ替えるときは、新しい人の選任と、前の人の解任の、それぞれが届出の対象です。
2. 届出書の項目ごとの記入のしかた
ここでの説明は、規則の別記様式の欄に沿ったもので、消防本部の様式では欄の並びや名称が異なる場合があります。最初に、防火管理者の届出か防災管理者の届出かを、□にレ点を付けて選びます。

届出の基本
- あて先: 消防長(消防署長)(市町村長)です。建物を管轄する消防本部の宛名を書きます。
- 管理権原者: 建物の管理について権原を持つ人の、住所、氏名、電話番号です。法人の場合は、氏名の欄に名称と代表者氏名を書きます。
防火対象物の情報
- 所在地・電話: 建物の所在地と電話番号です。
- 名称: 建物の名称です。
- 管理権原: 「単一権原」「複数権原」の選択欄です。
- 用途: 用途と、消防法施行令別表第一の項、収容人員です。飲食店は(三)項ロ、物品販売店舗は(四)項です。
- 種別: 甲種か乙種かを選びます。区分は第3章で説明します。
用途の項の見分け方と、収容人員の数え方は、下の記事で説明しています。

選任する防火管理者の情報
| 項目 | 記入のしかた |
|---|---|
| 氏名(フリガナ) | 選任する人の氏名とフリガナ |
| 住所 | 選任する人の住所 |
| 選任年月日 | 防火管理者に選任した年月日 |
| 職務上の地位 | 選任する人の、組織の中での地位 |
| 講習の種別 | 甲種か乙種か。甲種は、新規講習か再講習かも選ぶ |
| 講習機関 | 講習を受けた機関名 |
| 修了年月日 | 修了証に書かれた修了年月日 |
| その他 | 講習以外の資格で選任するときに、消防法施行令第3条第1項の号と、消防法施行規則第2条の号を書く |
講習以外の資格で選任できる人は、第3章で説明します。
解任するとき
解任する人の氏名、解任年月日、解任理由を書きます。
その他必要事項と、書かない欄
「その他必要事項」の欄には、下の場合に書くことがあります。
- 新築工事中の建築物のうち、消防法施行令第1条の2第3項第2号または第3号の防火対象物は、工事が完了したときの規模を書きます。
- 消防法施行令第3条第2項を適用するときは、管理的または監督的な地位にある人のいずれもが、防火管理上必要な業務を適切に行えない理由を書きます。
受付欄と経過欄には、記入しません。
規則の別記様式の備考から、書くときの注意
- □のある欄は、当てはまる□にレ点を付けます。
- 選任の届出には、防火管理者の資格を証する書面を添えます。書面は第3章で説明します。
3. 防火管理者になれる人と、選任の届出に添える書類
防火管理者の資格は、建物が甲種防火対象物か乙種防火対象物かで決まります。選任の届出には、防火管理者の資格を証する書面を添えます。
防火管理者になれるのは、その建物で防火管理上必要な業務を遂行できる、管理的または監督的な地位にある人で、下の表の資格を持つ人です(消防法施行令第3条第1項)。
| 建物の区分 | 防火管理者になれる人 |
|---|---|
| 甲種防火対象物 | いずれかに当たる人。(1) 甲種防火管理講習の修了者 (2) 大学または高等専門学校で、総務大臣の指定する防災に関する学科・課程を修めて卒業し、1年以上防火管理の実務経験がある人 (3) 市町村の消防職員で、管理的または監督的な職に1年以上あった人 (4) (1)から(3)に準ずる人で、防火管理者として必要な学識経験があると、総務省令で定めるところにより認められる人 |
| 乙種防火対象物 | 乙種防火管理講習の修了者。甲種防火対象物の資格のある人((1)から(4))もなれる |
甲種防火対象物では、乙種防火管理講習の修了者だけでは資格になりません。甲種の資格は乙種防火対象物でも使えますが、反対は使えません。
自分の建物が甲種か乙種かは、用途と延べ面積で決まります。乙種防火対象物になるのは、防火管理者が必要な建物のうち、特定防火対象物は延べ面積300平方メートル未満、非特定防火対象物は500平方メートル未満のものです(消防法施行令第3条第1項第2号)。飲食店は(三)項ロで特定、工場は(十二)項イで非特定です。見分け方は、特定防火対象物と非特定防火対象物の違い。該当する項と、点検報告・訓練・防火管理者の基準で説明しています。
例外として、(六)項ロの施設(避難が困難な要配慮者の施設)は甲種防火対象物です。(十六の三)項と(十八)項から(二十)項は、この基準の対象外です。また、防火管理者が必要になる建物のうち、乙種防火対象物以外はすべて甲種防火対象物で、新築工事中の建築物も含まれます(消防法施行令第3条第1項第1号、第1条の2第3項)。
選任の届出に添える書類は、消防法施行規則に定めがあります。
前項の届出書には、選任の届出にあつては、防火管理者の資格を証する書面を添えなければならない。(消防法施行規則第3条の2第2項)
「資格を証する書面」は、新しく選ばれた人に防火管理者の資格があることを示す書面です。講習を修了した人の場合は、講習の修了証が代表的です。たとえば甲種防火管理講習の修了証を持つ人なら、届出書の「講習の種別」は「甲種」、「講習機関」は講習を行った機関、「修了年月日」は修了証のとおりに書きます。条文が定めているのは「資格を証する書面を添える」までです。写しか原本の提示か、通数については、不明な場合は、管轄の消防本部に確認してください。
4. 消防計画との関係
防火管理者が変わると、消防計画の内容も変わることがあります。消防計画を変更するときも、届出が必要です。
消防計画は、防火管理者が作って消防本部に届け出ます。変更についても、同じ条文に定めがあります。
防火管理に係る消防計画を変更するときも、同様とする。(消防法施行規則第3条第1項)
消防計画の届出書は、選任・解任の届出書とは別の書類です(消防法施行規則第3条第1項、第3条の2第1項)。消防計画に防火管理者の氏名など、防火管理者が変わると書き換わる内容が載っている場合、どの内容が変わったときに変更の届出が必要かは、自分の消防計画の内容によります。

5. 届出を怠った場合
選任・解任の届出を怠った場合には、罰則があります。消防法は、30万円以下の罰金または拘留(短い期間、刑事施設に収容される刑)と定めています(消防法第44条第8号)。
この罰則は、防火管理者を決める人(権原を持つ人)に関するものです。防火管理者を決めていない場合に、消防長または消防署長が出す命令と、その命令に違反した場合の罰則は、別の定めです(防火管理者とは?役割・選任・届出をやさしく解説【2026年版】で説明しています)。
6. まとめ
覚えておきたいポイント
・防火管理者を決めたとき(選任)も、解任したときも、遅滞なく消防に届け出ます。
・届け出るのは、建物の管理について権原を持つ人です。
・届出には、選任・解任の届出書を使います。様式は消防本部ごとに異なるのが一般的です。
・届出書には、管理権原者、防火対象物、選任する人、解任する人、その他必要事項の欄があります。□のある欄は、当てはまるものにレ点を付けます。
・防火管理者になれる人は、建物が甲種防火対象物か乙種防火対象物かで決まります。乙種防火対象物では、甲種の資格のある人もなれます。
・選任の届出には、防火管理者の資格を証する書面を添えます。
・消防計画を変更するときも届出が必要です。消防計画の届出書は、選任・解任の届出書とは別の書類です。
・選任・解任の届出を怠ると、罰則(30万円以下の罰金または拘留)があります。
・不明な場合は、管轄の消防本部に確認してください。
複雑な届出は、専門家に依頼する方法もあります
届出書など、書類の作成や提出が難しいと感じるときは、行政書士などの専門家に依頼するのも一つの方法です。なお、建物がどの項に当たるかは、管轄の消防本部に確認します。依頼すると、たとえば次のような点で、手間を減らせる場合があります。
・届出書の書式の選び方を相談できるため、書類を作り直す手間を減らせる場合があります。
・添える書面の確認を任せられるため、書類の不足や取り違えに気づきやすくなる場合があります。
・提出までの段取りを整理できるため、役所に出向く回数や、書類を何度も見直す手間を減らせる場合があります。
どの書類を任せられるかは、あらかじめ確認します。相談するかどうかは、ご自身で判断してください。
※本記事は一般的な情報提供を目的としており、個別の建物や店舗への適用を保証するものではありません。実際の取り扱いは、管轄の消防本部に確認してください。

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