店舗や事務所を新しく開く準備で目にする「防火対象物の使用開始届出」は、自分も出すものなのでしょうか。いつまでに出せばよいのかも、気になるところです。この届出は、市町村の火災予防条例が定める手続きで、日数などの定めは、消防本部ごとの条例によって異なる場合があります。結論から言えば、今回読んだ現行の火災予防条例では、届出の時期は使用開始の日の7日前までで、この日数は原文のとおりです。その根拠と、どの場合に届け出るのかを、条例の原文で確かめます。この記事を読むと、届出の根拠と対象になる場合、名前の似た別の届出との違いについて知ることができます。
くわしく知りたい方へ
1. 使用開始の届出は、現行の火災予防条例では第43条に定められている
現行の条例は、防火対象物の使用開始の届出を、第43条で定めています。
令別表第1に掲げる防火対象物(同表(19)項及び(20)項に掲げるものを除く。)をそれぞれの用途に使用しようとする者は、使用開始の日の7日前までに、その旨を消防長に届け出なければならない。(現行の条例第43条第1項)
この1文には、4つのことが入っています。届け出る人は、建物をそれぞれの用途に使用しようとする者です。届け出る先は、消防長(管轄の消防本部)です。届け出る時期は、使用開始の日の7日前までです。対象は、消防法施行令の別表第一に掲げる防火対象物です。
別表第一のうち、(十九)項は市町村長の指定する山林、(二十)項は総務省令で定める舟車で、この条例では対象から除かれています(消防法施行令別表第一)。それ以外の項が対象です。飲食店は(三)項ロ、物販店舗は(四)項、工場は(十二)項イ、倉庫は(十四)項、事務所などの事業場は(十五)項(「前各項に該当しない事業場」)で、いずれも(十九)項・(二十)項ではありません(消防法施行令別表第一)。
「令別表第1」の「項」は、建物の使い方を区分したものです。自分の建物がどの項に当たるかは、冒頭の「あなたの建物は何項?」の記事で案内しています。
2. 届出の時期は、使用開始の日の7日前まで
条例が定めているのは「7日前まで」です。「あらかじめ」ではなく、日数で定められています(条例第43条第1項)。休日をはさむ場合など、日数の数え方で迷うときは、管轄の消防本部に確認してください。
同じ条例の、火を使う設備の設置の届出は、「あらかじめ」とだけあり、日数の定めはありません(条例第44条第1項)。同じ事業所の届出でも、時期の書き方が違います。設備の設置届出は、火を使用する設備の設置届出。対象設備・提出時期・様式を、現行の火災予防条例の条文で解説で説明しています。

3. 用途、構造、消防用設備等を変更するときも届出が必要
使用を始めるときだけでなく、変更するときにも、同じ届出が必要です。第43条の第2項が、第1項を準用しているためです。
前項の規定は、防火対象物の用途、構造又は消防用設備等若しくは特殊消防用設備等を変更しようとする場合について準用する。(現行の条例第43条第2項)
「準用する」とは、第1項の定めを、変更の場合にも同じように当てはめるという意味です。変更の届出も、届け出る先は消防長で、第1項の「7日前まで」が当てはまります。ただし、変更の場合に、7日前の基準になる日を「変更の日」とみるのか、ほかの日とみるのかは、条文には書かれていません。
準用の対象になる変更は、用途、構造、消防用設備等(または特殊消防用設備等)の3つです。条例が定めているのは、この3つの変更までで、内装の模様替えや設備の入れ替えといった具体的な工事の例は挙げていません。
用途の変更は、令別表第一の区分が変わる場合がわかりやすい例です。たとえば、物販店舗((四)項)だった建物を飲食店((三)項ロ)として使う場合は、令別表第一の区分が変わります。この例は、仮のものです。同じ区分の中での入れ替えや、内装の改装が、この「変更」に当たるかどうかは、個々の内容で決まります。不明な場合は、管轄の消防本部に確認してください。
変更の届出は、火を使う設備の変更とは別の条文です。火を使う設備を変更するときの届出は第44条第2項に、防火対象物の用途、構造、消防用設備等を変更するときの届出は第43条第2項に定められています。同じ工事でも、設備の変更と、建物の用途や構造の変更とでは、根拠になる条文が異なります。
届出書の名前は、第1項の届出も第2項の準用の届出も、「防火対象物使用開始(変更)届出書」です。現行の火災予防規則が、第43条第1項(同条第2項で準用する場合を含む)の届出を、この届出書によると定めています(火災予防規則第16条)。
4. 届出書の種類、部数、問い合わせ前にそろえる情報
届出書の名前は、前の章のとおり「防火対象物使用開始(変更)届出書」です(別記様式第14号)。題名に「(変更)」が入っているとおり、使い始めるときと変更するときの両方に、この届出書を使います。この規則に別記様式が定められていますが、ほかの消防本部では、様式が異なるのが一般的です。使う様式は、管轄の消防本部に確認してください。
届出書は2部を提出します。受理した消防本部が、火災予防上または消防活動上支障がないと認めるときは、届出済印を押して1部を交付します(火災予防規則第22条第1項第17号、第2項)。規則が定めているのは、届出書の名称、部数、届出済印の扱いまでです。
消防本部に問い合わせるときは、建物の所在地と名称、建物の使い方(飲食店、物販店舗、事務所、工場、倉庫など)と令別表第一の項、使い始める予定の日、階数と延べ面積を、伝えられるようにしておきます。

5. 名前の似た別の届出との違い
届出の名前が似ているため、使用開始の届出と、消防法などで定められた別の届出を取り違えることがあります。使用開始の届出以外の主な届出と報告では、届け出る人と時期が、それぞれ違います。
| 届出・報告 | 届け出る人 | 時期 |
|---|---|---|
| 防火管理者の選任・解任の届出(消防法第8条第2項) | 防火管理者を定めた権原を有する者(建物の管理について決める権利のある人) | 遅滞なく |
| 消防計画の届出(消防法施行規則第3条) | 防火管理者 | 消防計画を作成したとき。変更するときも同様 |
| 消防用設備等の設置の届出と検査(消防法第17条の3の2) | 政令で定める防火対象物の関係者 | 工事が完了した日から4日以内(消防法施行規則第31条の3) |
| 消防用設備等の工事の着工届(消防法第17条の14) | 甲種消防設備士 | 政令で定める工事に着手しようとする日の10日前まで |
| 防火対象物の定期点検の報告(消防法第8条の2の2) | 政令で定める防火対象物の管理について権原を有する者 | 一年に一回の点検の結果を報告(消防法施行規則第4条の2の4) |
| 消防用設備等の点検結果の報告(消防法第17条の3の3) | 防火対象物の関係者 | 定期に点検し、その結果を報告 |
使用開始の届出を出したからといって、これらが済むわけではありません。防火管理者を置く建物では、選任・解任の届出が別に必要です。選任・解任については、消防法が定めています。
前項の権原を有する者は、同項の規定により防火管理者を定めたときは、遅滞なくその旨を所轄消防長又は消防署長に届け出なければならない。
これを解任したときも、同様とする。(消防法第8条第2項)
設置の届出と検査の対象は、消防法施行令第35条に定められています。たとえば、飲食店((三)項)や物販店舗((四)項)は延べ面積が300平方メートル以上の場合です。工場や事務所などは、延べ面積が300平方メートル以上で、消防長または消防署長が火災予防上必要があると認めて指定したものです(消防法施行令第35条第1項)。着工届は、工事をする甲種消防設備士が行う届出で、対象は政令で定める工事です(消防法第17条の14)。
防火対象物の定期点検の対象は、令別表第一の(一)項から(四)項まで、(五)項イ、(六)項、(九)項イなどで、収容人員が300人以上のものなどです(消防法施行令第4条の2の2)。
くわしく知りたい方へ
・防火管理者とは?役割・選任・届出をやさしく解説【2026年版】
・防火管理者の選任・解任の届出書の書き方。項目ごとの記入のしかたと添付書類

6. 工事から使用開始までは、基準になる日が届出ごとに違う
新しい建物を使い始めるまでには、消防用設備等の工事が入ることがあります。その場合、届出ごとに、基準になる日が違います。
- 工事に着手する日の10日前までに、政令で定める消防用設備等の工事をする甲種消防設備士が、着工届を出します(消防法第17条の14)。
- 工事が完了した日から4日以内に、設置の届出と検査の対象になる防火対象物の関係者が、消防用設備等の設置の届出をします(消防法施行規則第31条の3第1項)。
- 使用開始の日の7日前までに、この記事で扱った使用開始の届出を出します(条例第43条第1項)。
- 火を使う設備は、設置する前に届け出ます(条例第44条第1項)。
工事完了後4日以内の届出と、使用開始の7日前の届出のどちらが先になるかは、工事と開業の日程によって変わります。たとえば、工事の完了から開業までの間が短い日程では、2つの期限が近づくため、着工届の日、工事完了の日、使用開始の日を、日程表に並べて確認します(この日程は仮の例です)。
検査との関係も、届出ごとに異なります。消防用設備等の設置の届出は、届け出たあとに検査を受けるものです(消防法第17条の3の2)。使用開始の届出について、条例が定めているのは届出までです。
7. まとめ
覚えておきたいポイント
・防火対象物の使用開始の届出は、現行の火災予防条例の第43条に定められています。
・対象は、令別表第一に掲げる防火対象物です。(十九)項と(二十)項は除かれています。
・条例が定めている届出の時期は、使用開始の日の7日前までです。
・用途、構造、消防用設備等の変更をしようとするときも、同じ届出が準用されます。
・届出書の名前は防火対象物使用開始(変更)届出書で、2部提出します。
・防火管理者の選任・解任、消防計画、消防用設備等の設置届・着工届・点検報告、火を使う設備の設置届出は、別の届出です。
・不明な場合は、管轄の消防本部に確認してください。
複雑な届出は、専門家に依頼する方法もあります
届出書など、書類の作成や提出が難しいと感じるときは、行政書士などの専門家に依頼するのも一つの方法です。なお、建物がどの項に当たるかは、管轄の消防本部に確認します。依頼すると、たとえば次のような点で、手間を減らせる場合があります。
・届出書の書式の選び方を相談できるため、書類を作り直す手間を減らせる場合があります。
・添える書面の確認を任せられるため、書類の不足や取り違えに気づきやすくなる場合があります。
・提出までの段取りを整理できるため、役所に出向く回数や、書類を何度も見直す手間を減らせる場合があります。
どの書類を任せられるかは、あらかじめ確認します。相談するかどうかは、ご自身で判断してください。
※本記事は一般的な情報提供を目的としており、個別の建物や店舗への適用を保証するものではありません。実際の取り扱いは、管轄の消防本部に確認してください。

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