「午前0時を過ぎてもお酒を出すなら、警察署に届出が要る」と聞いて、店を開く準備の手続きを調べ始める方もいるでしょう。要るならいつまでに何を出すのか、が最初の疑問です。バーや酒場のように酒類を出す飲食店が深夜に営業するときは、風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律(以下「風営法」)に基づく届出が、営業所ごとに必要です。ただし、接待や遊興がある店は届出ではなく許可の手続きになり、住居地域では深夜に営業できないなど、場所の条件もあります。届出の窓口は、営業所を管轄する警察署で、地域の決まりは、栃木県の条例を例にしています。この記事を読むと、対象になる営業、提出期限、添付書類、営業所の基準、営業できない地域、届出後の決まりについて、風営法と施行令・施行規則の原文に沿って知ることができます。
1. 午前0時から午前6時に酒類を出す店は、営業所ごとの届出が必要です
酒類提供飲食店営業を深夜において営もうとする者は、営業所ごとに、営業所の所在地を管轄する都道府県公安委員会へ届出書を提出しなければなりません(風営法第33条第1項、第3条第1項)。「深夜」は、午前0時から午前6時までの時間です(風営法第13条第1項)。
「酒類提供飲食店営業」は、食品衛生法の許可を受けて営む飲食店営業のうち、バー、酒場その他客に酒類を提供して営む営業です。営業の常態として、通常主食と認められる食事を提供して営むものは含まれません。午前6時から午後10時までの時間にだけ営むものも含まれません(風営法第2条第13項第4号)。飲食店営業の許可は都道府県知事、風営法の届出は公安委員会が相手になり、手続きの窓口は別です(食品衛生法第55条第1項、風営法第33条第1項)。
届出が必要になるのは、この営業を深夜に営むときです。営業が午前0時前に終わる店は、この届出の対象ではありません(風営法第33条第1項)。ただし、午前6時から午後10時までの時間にだけ営む場合を除く酒類提供飲食店営業には、従業者名簿の備え付けなど、届出とは別の決まりが及びます(風営法第33条第6項、第36条)。
食事と酒類の両方を出す店が、この営業に当たるのかどうかは、迷うところです。「営業の常態として」「通常主食と認められる食事」という表現に当たるかどうかは、条文だけでは判断できません。不明な場合は、営業所を管轄する警察署に確認してください。

2. 接待や遊興がある店は、届出ではなく許可の手続きです
深夜酒類提供飲食店営業の届出で済むのは、風俗営業や特定遊興飲食店営業に当たらない店です。条文の定義でも、酒類提供飲食店営業は、接待飲食等営業、店舗型性風俗特殊営業、特定遊興飲食店営業に該当するものを除いた飲食店営業とされています(風営法第2条第13項第1号〜第4号)。
| 営業 | 手続き | 分かれ目 |
|---|---|---|
| 接待飲食等営業(風俗営業) | 営業所ごとに公安委員会の許可(風営法第3条第1項) | 客の接待をして客に遊興又は飲食をさせる営業。照度を10ルクス以下にして営むバーなど、他から見通すことが困難で広さが5平方メートル以下の客席を設けて営むバーなども含みます(風営法第2条第1項第1号〜第3号、第4項) |
| 特定遊興飲食店営業 | 公安委員会の許可(風営法第31条の22) | ナイトクラブなど、設備を設けて客に遊興をさせ、かつ飲食をさせる営業のうち、酒類を提供して営み、午前6時後翌日の午前0時前の時間にだけ営むもの以外(風営法第2条第11項) |
| 深夜における酒類提供飲食店営業 | 営業所ごとに届出(風営法第33条第1項) | 上の2つに当たらない、客に酒類を提供する飲食店営業(風営法第2条第13項第4号) |
「接待」は、歓楽的雰囲気を醸し出す方法により客をもてなすことです(風営法第2条第3項)。個々の接客がこの定義に当たるかが、風俗営業との分かれ目になります。営業の方法は、届出書に添える「営業の方法を記載した書類」にも書くことになります(風営法第33条第3項)。
営業時間の枠も、手続きの区分で変わります。風俗営業者は、深夜には営業してはなりません。都道府県の条例に特別の定めがある場合に限り、定められた地域内で、午前0時以後も条例で定める時まで営業できます(風営法第13条第1項)。深夜に営業する前提の店が、接待を伴う形になると、手続きだけでなく、営業できる時間も変わります。
3. 営業所は、施行規則の6つの基準を満たして維持します
深夜に飲食店営業を営む者は、営業所の構造と設備を、国家公安委員会規則で定める技術上の基準に適合するように維持しなければなりません(風営法第32条第1項)。基準は、風営法施行規則第99条に6つあります。
- 客室の床面積は、一室につき9.5平方メートル以上。客室が一室だけの場合は、この限りではありません(第1号)
- 客室の内部に、見通しを妨げる設備を設けない(第2号)
- 善良の風俗又は清浄な風俗環境を害するおそれのある写真、広告物、装飾その他の設備を設けない(第3号)
- 客室の出入口に施錠の設備を設けない。営業所外に直接通ずる客室の出入口は除く(第4号)
- 営業所内の照度が20ルクス以下とならないように維持するための構造又は設備を有する(第5号)
- 騒音又は振動が、条例で定める数値に満たないように維持するための構造又は設備を有する(第6号)
客室を個室のように仕切る計画や、客室の扉に鍵を付ける計画は、第2号と第4号に直接関わります。
照度は、客席に食卓その他の飲食物を置く設備があるときは、その上面など、客が通常利用する部分の水平面で測ります(風営法施行規則第100条)。照度には、2つの数値が関わります。営業所内の照度を10ルクス以下として営むバーなどは、風俗営業に当たります(風営法第2条第1項第2号)。深夜に飲食店営業を営む営業所は、照度が20ルクス以下とならないように、つまり20ルクスを超える明るさに維持する基準があります(風営法施行規則第99条第5号、第101条)。
騒音と振動は、営業所の周辺で条例の数値以上が生じないように営みます(風営法第32条第2項で準用する第15条)。栃木県の施行条例にも、深夜に飲食店営業を営む者の騒音・振動の数値が定められています(栃木県風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律施行条例第18条)。
届出書には、営業所の構造及び設備の概要を書きます(風営法第33条第1項第3号)。基準を満たす設計になっているかどうかが、そのまま届出書の内容になります。

4. 住居地域では、深夜の営業ができません
営業できる場所にも、決まりがあります。都道府県は、善良の風俗や清浄な風俗環境を害する行為、少年の健全な育成に障害を及ぼす行為を防ぐために必要があるときは、条例で、地域を定めて、深夜の酒類提供飲食店営業を禁止できます(風営法第33条第4項)。
国の政令は、条例が定める基準を2つ置いています。禁止する地域の指定は住居集合地域内の地域について行うこと、指定は必要な最小限度のものであることです(風営法施行令第27条)。住居集合地域は、住居が多数集合しており、住居以外の用途に供される土地が少ない地域です(風営法施行令第6条第1号イ)。
栃木県の例規集で公開されている施行条例では、第19条が「酒類提供飲食店営業は、住居地域において、深夜においては、これを営んではならない。」と定めています(栃木県風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律施行条例第19条)。「住居地域」は、都市計画法の第一種低層住居専用地域、第二種低層住居専用地域、第一種中高層住居専用地域、第二種中高層住居専用地域、第一種住居地域、第二種住居地域、準住居地域、田園住居地域の8種類をまとめた語です(栃木県風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律施行条例第2条第1項第1号)。
この条例の規定は、施行や適用の際にすでに届出をして深夜に営んでいる人の営業には、適用されません(風営法第33条第5項)。これから始める店は、この例外に当たりません。条例の禁止に違反した場合は、1年以下の拘禁刑もしくは100万円以下の罰金に処せられ、またはこの両方が科されます(風営法第51条第1項第10号)。
風俗営業の許可では、学校や病院などの保全対象施設の周辺が制限される地域もあります(風営法施行令第6条第1号ロ)。深夜酒類提供飲食店営業の禁止地域について風営法施行令第27条が定めているのは、住居集合地域内の地域です。物件を契約する前に、営業所の所在地が住居地域に当たらないかを、管轄の警察署に確かめておきます。
5. 届出書、添付書類、提出先、提出期限
届出書に書く事項は、法律が3つ定めています。氏名又は名称及び住所(法人は代表者の氏名も)、営業所の名称及び所在地、営業所の構造及び設備の概要です(風営法第33条第1項第1号〜第3号)。届出書には、営業の方法を記載した書類その他の内閣府令で定める書類を添付します(風営法第33条第3項)。
届出書の様式は別記様式第四十七号、営業の方法を記載した書類の様式は別記様式第四十八号です(風営法施行規則第103条第1項・第2項)。栃木県警察の風営様式一覧にも、様式第47号と様式第48号が掲載されています(栃木県警察「風営様式一覧」)。風営法施行規則に別記様式が定められています。ただし、実際に使う様式や運用は窓口ごとに異なる場合があります。使う様式は、窓口に確認してください。
添付書類は、風営法施行規則ではなく、「風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律に基づく許可申請書の添付書類等に関する内閣府令」に定められています。同府令第24条第1号は、営業を営もうとする場合の書類を、4つ定めています。
- 営業の方法を記載した書類
- 営業所の平面図
- 個人の場合は、住民票の写し
- 法人の場合は、定款、登記事項証明書、役員に係る住民票の写し
すでに同じ公安委員会の管轄区域内で同種の営業を営んでいる人が、別の営業所で始める場合は、住民票や定款などが不要です(同内閣府令第24条第1号)。
提出先は、営業所の所在地を管轄する公安委員会で、営業所の所在地の所轄警察署長を経由して、一通を提出します(風営法施行規則第1条第1項)。
提出期限は、深夜において酒類提供飲食店営業を開始しようとする日の10日前までです(風営法施行規則第103条第3項)。届出書には構造及び設備の概要を書き、添付書類には平面図が入るため、客室の配置が決まらないと書類が作れません。
届出書を提出しないで深夜の営業を始めた場合は、50万円以下の罰金に処せられます。届出書や添付書類に虚偽の記載をした場合も同じです(風営法第55条第6号)。

6. 営業を始めた後の変更届と廃止届
届出をした後、営業を廃止したとき、または届出事項に変更があったときは、公安委員会に届出書を提出します(風営法第33条第2項)。変更の届出の対象になるのは、氏名又は名称、住所、法人の代表者の氏名、営業所の名称、営業所の構造及び設備の概要です。営業所の所在地は、この規定の対象に含まれていません(風営法第33条第2項)。
提出期限は、廃止または変更の日から10日以内です。変更が法人の名称、住所、代表者の氏名に係るものであるときは、20日以内です(風営法施行規則第104条、第42条第2項)。様式は、廃止が別記様式第十八号、変更が別記様式第十九号です(風営法施行規則第104条、第42条第1項)。
構造・設備の変更は、軽微な変更を除いて届け出ます(風営法第33条第2項)。内閣府令第22条は、建築基準法上の大規模な修繕・模様替えに当たる変更、客室の位置・数・床面積の変更、営業所の内部を仕切る設備の変更、照明設備の変更、音響設備・防音設備の変更を、軽微な変更から除いています(同内閣府令第22条)。内装を変える工事は、この5つに当たるかどうかが分かれ目になります。
複数の営業所について、廃止や、氏名・名称・住所・代表者の氏名の変更を同時に届け出るときは、いずれか1つの営業所の所轄警察署長を経由すれば足ります(風営法施行規則第1条第2項第10号)。
届出書を提出しなかったり、虚偽の記載をしたりした場合は、30万円以下の罰金に処せられます(風営法第56条第3号)。
7. 営業中に守る決まりと、守らなかった場合の定め
飲食店営業を営む者には、風営法第22条第1項の禁止行為の一部が準用されます(風営法第32条第3項)。深夜酒類提供飲食店営業の店に関わる主なものは、4つです。
- 客引きをすること、客引きのために道路その他公共の場所で人の身辺に立ちふさがり、またはつきまとうこと。深夜における営業に限ります(風営法第22条第1項第1号・第2号)
- 午後10時から翌日の午前6時までの時間に、18歳未満の者を、客に接する業務に従事させること(風営法第22条第1項第4号)
- 午後10時から翌日の午前6時までの時間に、18歳未満の者を客として立ち入らせること。保護者が同伴する18歳未満の者を立ち入らせる場合は除きます(風営法第22条第1項第5号)
- 20歳未満の者に酒類又はたばこを提供すること(風営法第22条第1項第6号)
18歳未満に関する2つは、営業の常態として通常主食と認められる食事を提供する飲食店営業などを除く扱いが、国家公安委員会規則にあります。除外されるのは、営業の常態として通常主食と認められる食事を提供して営む飲食店営業と、茶菓類以外の飲食物を提供し、酒類を提供しない飲食店営業です(風営法施行規則第102条)。
罰則は、客引きなどが6月以下の拘禁刑もしくは100万円以下の罰金、またはその両方です(風営法第53条第1号)。18歳未満の者の従事・立入り、20歳未満の者への酒類・たばこの提供は、1年以下の拘禁刑もしくは100万円以下の罰金、またはその両方です(風営法第51条第1項第4号)。
営業所では、従業者名簿を備える決まりもあります。業務に従事する者の住所、氏名その他内閣府令で定める事項を記載し、従業者が退職した日から3年を経過する日まで備えます(風営法第36条、風営法施行規則第106条)。客に接する業務に従事させようとする者については、生年月日や国籍などを書類で確認し、記録を作って、退職した日から3年を経過する日まで保存します(風営法第36条の2、風営法施行規則第108条)。接客従業者に、支払能力に照らして不相当に高額の債務を負担させ、辞めるときは直ちに完済させる条件を付ける行為なども、禁止されています(風営法第33条第6項で準用する第18条の2第1項)。
違反があると、公安委員会は、風俗環境を害し、または少年の健全な育成に障害を及ぼすおそれがあると認めるときに、必要な指示をすることができます。著しいおそれがあるときは、6月を超えない範囲で営業の全部または一部の停止を命ずることができます(風営法第34条)。警察職員は、法の施行に必要な限度で営業所に立ち入ることができます(風営法第37条第2項)。
まとめ
覚えておきたいポイント
・深夜(午前0時から午前6時)に酒類を出す飲食店は、営業所ごとに公安委員会へ届出が必要です(風営法第33条第1項)。
・営業の常態として通常主食と認められる食事を出す店は、酒類提供飲食店営業に含まれません(風営法第2条第13項第4号)。
・接待を伴う営業は風俗営業の許可、遊興をさせる営業は特定遊興飲食店営業の許可で、届出とは別の手続きです。
・営業所は、客室9.5平方メートル以上、見通しを妨げない、客室の出入口に施錠しない、照度20ルクス以下とならないなど、6つの基準を満たして維持します(風営法施行規則第99条)。
・栃木県では、住居地域で深夜に営業することが禁止されています(栃木県施行条例第19条)。
・届出書は営業開始の10日前までに、営業所の所轄警察署長を経由して提出します(風営法施行規則第103条第3項、第1条第1項)。
・添付書類は、営業の方法を記載した書類、営業所の平面図、住民票の写しなど(法人は定款・登記事項証明書も)です。
・廃止・変更は、10日以内(法人の名称・住所・代表者の氏名は20日以内)に届け出ます。
・営業中は、18歳未満と20歳未満に関する禁止行為、従業者名簿、客に接する業務に従事する者の確認と記録を守ります。
・不明な場合は、営業所を管轄する警察署(届出の窓口)に確認してください。
複雑な届出は、専門家に依頼する方法もあります
届出書など、書類の作成や提出が難しいと感じるときは、行政書士などの専門家に依頼するのも一つの方法です。なお、営業所が届出の対象に当たるかは、警察署(届出の窓口)に確認します。依頼すると、たとえば次のような点で、手間を減らせる場合があります。
・届出書の書式の選び方を相談できるため、書類を作り直す手間を減らせる場合があります。
・添える書面の確認を任せられるため、書類の不足や取り違えに気づきやすくなる場合があります。
・提出までの段取りを整理できるため、役所に出向く回数や、書類を何度も見直す手間を減らせる場合があります。
どの書類を任せられるかは、あらかじめ確認します。相談するかどうかは、ご自身で判断してください。
※本記事は一般的な情報提供を目的としており、個別の営業所への適用を保証するものではありません。実際の取り扱いは、届出の窓口(営業所を管轄する警察署)に確認してください。

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