消防法令手続きから設備点検、防火管理サポートまでワンストップで支援

民泊に必要な消防の手続き。用途の判定、消防法令適合通知書、設備と届出の流れ

民泊に必要な消防の手続き。用途の判定、消防法令適合通知書、設備と届出の流れ

同じ民泊の準備でも、住宅宿泊事業の届出と消防の手続きでは、出す先が違います。届出の宛先は、住宅宿泊事業法では都道府県知事など、消防用設備等では消防長または消防署長で、手続きごとに違います。自宅や空き家で民泊を始める準備をしていると、住宅宿泊事業の届出を出せば消防の手続きも済むのか、消防署にも別に出すものがあるのか、確かめたくなります。消防の側では、その住宅が、不在かどうかと宿泊室の床面積によって、消防法令上のどの用途として扱われるかが決まり、必要な設備も変わります。住宅宿泊事業法に基づいて民泊を営む住宅(一戸建て住宅や、アパート・マンションの1住戸など)を前提とし、旅館業法の許可を受けた施設などは、消防上の扱いが同じになる場合だけ、第2章で触れます。この記事を読むと、用途の判定から、消防法令適合通知書、設備、届出の時期までを、消防庁の通知に沿って知ることができます。

一戸建て住宅の玄関
目次

1. 民泊の届出と、消防の手続きは、宛先が別

住宅宿泊事業法は、民泊を営もうとする人に、住宅ごとの届出を求めています。届出をした人は、旅館業法の許可がなくても、住宅宿泊事業を営むことができます(住宅宿泊事業法第3条第1項)。届出の相手は都道府県知事で、保健所を設置する市や特別区が事務を処理する区域では、その市や区の長です(住宅宿泊事業法第3条第1項、第68条第1項)。

一方、消防用設備等を設置したときの届出の宛先は、消防長または消防署長です(消防法第17条の3の2)。同じ民泊でも、手続きごとに宛先が違います。

民泊と呼ばれる宿泊サービスには、手続きの違う3つの形があります。

形 営むための手続き
住宅宿泊事業(住宅宿泊事業法) 都道府県知事等への届出。人を宿泊させる日数が年間180日を超えない事業
旅館業(簡易宿所営業など) 都道府県知事等の許可
国家戦略特別区域法に基づく認定 一部の地域で、旅館業法の許可のほかに受ける方法がある

(住宅宿泊事業法第2条第3項、第3条第1項、旅館業法第2条第1項・第3条第1項、消防予第63号)

住宅宿泊事業法の施行前の平成29年3月に、消防庁は、住宅を利用する場合でも、有償で繰り返し宿泊サービスを提供することは基本的に旅館業にあたるとする通知を出しています(消防予第63号)。住宅宿泊事業法の届出をした場合は、旅館業法の許可がなくても住宅宿泊事業を営めます(住宅宿泊事業法第3条第1項)。この記事の中心は、届出で営む住宅宿泊事業です。

宿泊者の安全のために住宅宿泊事業者が講じる措置は、住宅宿泊事業法にも定められています。非常用照明器具の設置、避難経路の表示その他、火災などが起きた場合の宿泊者の安全確保に必要な措置で、国土交通省令で定めるものです(住宅宿泊事業法第6条)。消防庁のリーフレットは、非常用照明装置について、消防法を根拠とするものではなく、相談窓口は消防署ではなく、各自治体の住宅宿泊事業法や建築基準法を管轄する部署になると注記しています。

2. 消防法令上の用途は、不在かどうかと宿泊室の床面積で決まる

消防法令上、民泊の住宅が旅館やホテルと同じ扱いになるか、一般の住宅と同じ扱いになるかは、人を宿泊させる間に住宅宿泊事業者が不在になるかどうかと、宿泊室の床面積の合計で分かれます。

消防庁の通知は、住宅宿泊事業法の届出をして民泊を営む住宅(通知でいう「届出住宅」)を、原則として消防法施行令別表第一(五)項イ(旅館、ホテル、宿泊所その他これらに類するもの)またはその部分として扱うとしています。ただし、人を宿泊させる間、住宅宿泊事業者が不在とならない旨の届出があり、宿泊室の床面積の合計が50㎡以下のときは、住宅として扱います(消防予第330号 第1)。

人を宿泊させる間の不在 宿泊室の床面積の合計 消防法令上の扱い
不在とならない旨の届出がある 50㎡以下 住宅
不在とならない旨の届出がある 50㎡を超える (五)項イ、またはその部分
不在となる 面積に関係なく (五)項イ、またはその部分

「宿泊室」は、届出住宅のうち、宿泊者の就寝の用に供する室です。床面積に押入れや床の間は含まれず、算定は、壁その他の区画の中心線で囲まれた部分の水平投影面積で行います(消防予第2号 問2)。

ここでの「不在」は、住宅宿泊事業法の不在と同じ考え方です。日常生活を営む上で通常行われる行為に要する時間の範囲内の不在は、不在に当たりません(住宅宿泊事業法施行規則第9条第3項)。リーフレットによると、自宅と届出住宅の距離や、居室の数は、「不在」の定義と関係がありません。

不在とならない旨と宿泊室の床面積は、住宅宿泊事業法の届出で把握されます。不在とならない旨は届出事項で(住宅宿泊事業法施行規則第4条第3項第10号)、宿泊室の床面積は、届出に添える住宅の図面に明示する事項です(住宅宿泊事業法施行規則第4条第4項第1号ト)。

建物の形によって、不在かどうかを見る単位が変わります。一戸建て住宅は建物単位(リーフレット2ページ)、共同住宅は住戸単位です(消防予第2号 問5、リーフレット3ページ)。一戸建て住宅の一部だけを民泊にする場合も、民泊にしない部分を含む棟全体で判定します(消防予第2号 問16)。

共同住宅の一部の住戸で民泊を営む場合は、住戸ごとに用途を判定したうえで、棟全体の用途を昭和50年の消防予第41号・消防安第41号により判定します(消防予第330号 第1)。住戸を民泊にすることで建物全体の用途が変わり、建物全体で必要な設備が変わることがあります(リーフレット)。

旅館業法の許可を受けた施設でも、届出住宅と同様の利用形態であることが確認できるときは、同じ考え方で用途を判定します(消防予第330号 第2の1)。同様の利用形態とは、一戸建て住宅や共同住宅などの一住戸で宿泊のサービスを提供するものが想定されています(消防予第2号 問6)。国家戦略特別区域法第13条に基づく施設にも、この考え方を準用して差し支えないとされています(消防予第2号 問8)。

通知は、消防組織法第37条に基づく助言として出されています(消防予第330号)。不明な場合は、管轄の消防本部に確認してください。

3. 用途の判断に使われる情報と、住宅として扱う場合の確認

用途の判断に使われるのは、建物の種類、宿泊室の床面積の合計、人を宿泊させる間に居住者が不在になるかどうかです。旅館業法の許可を受けた施設の場合、通知は、これらが確認できる図面や書類が提出されたときを、届出住宅と同様の利用形態を確認できる場合の例として挙げています(消防予第2号 問7)。届出住宅の場合、不在と宿泊室の床面積は、住宅宿泊事業法の届出の内容から把握できるとされています(消防予第2号 問1)。

建物全体の床面積は、届出の内容では分かりません。そのため、消防法令適合通知書の交付申請書には、届出住宅が存する防火対象物の延べ面積と、届出住宅部分の床面積を記載することとされています(消防予第2号 問3)。

不在とならない旨の届出があり、宿泊室の床面積の合計が50㎡以下で、住宅として扱うときは、確認が一つ加わります。通知は、火災の発生時に、消火、延焼の防止、人命の救助を住宅宿泊事業者などが行うことを確認するのが適当としています(消防予第330号 第2の2)。確認の方法は、火災時に応急対応を行う旨を書いた書面の提出を受けることや、事前相談や立入検査などの機会に口頭で確認することが考えられるとされています(消防予第2号 問12)。

住宅宿泊事業者が日常生活の範囲で一時的に不在にする場合の対策として、通知は、火災時の応急対応を担う代理者を置くこと、不在の間の宿泊者の火気使用などを控えること、火災時に宿泊者と住宅宿泊事業者が常時連絡できる体制を確保することを挙げています(消防予第2号 問17)。

住宅として扱う場合も、宿泊室には、住宅用防災機器(住宅用火災警報器など)の設置義務があります(消防予第2号 問18)。設置と維持の基準は、政令で定める基準に従って市町村条例で定められます(消防法第9条の2)。宿泊室で火災が起きたとき、居住者が早く気づけるよう、連動型の住宅用防災警報器が望ましいとされています(消防予第2号 問18)。リーフレットは、この場合、新たに消防用設備等を設置する必要はないものの、住宅用火災警報器が適切に設置されているか確認するよう案内し、基本は寝室に、2階建てや3階建てでは寝室の位置によって階段部分にも必要になる場合があると説明しています。

間取り図を確認する机

4. (五)項イとして扱うときに求められる設備

(五)項イとして扱う場合、一戸建て住宅の民泊に必須の対応として、リーフレットは4つを挙げています。

  • 自動火災報知設備: 延べ面積が300㎡未満の一戸建て住宅なら、特定小規模施設用自動火災報知設備を設置できます。300㎡以上は、通常の自動火災報知設備です。
  • 誘導灯: 出入口、通路、階段などに設置します。
  • 防炎物品の使用: カーテンやじゅうたんなどを用いる場合は、防炎性能を持つ防炎物品にします。
  • 消防用設備等の点検と報告: 点検は年2回、報告は年1回です。

場合によって必要になる設備として、リーフレットは消火器を挙げています。延べ面積が150㎡以上のもの、または地階・無窓階・3階以上の階で床面積が50㎡以上のものです(消防法施行令第10条第1項第2号イ・第5号)。

誘導灯には、避難に支障が生じない場合に設置を免除できる特例があります。特例は、消防長または消防署長が、防火対象物の位置、構造、設備の状況から、基準によらなくても、火災の発生または延焼のおそれが著しく少なく、被害を最少限度に止められると認めるときに適用されます(消防法施行令第32条)。リーフレットは、避難階と2階以上の階に分けて、満たす要件を示しています。

設備の例(仮の数値です)

延べ面積が180㎡、2階建ての一戸建て住宅で、人を宿泊させる間、住宅宿泊事業者が不在になるとします。地階・無窓階・3階以上の階はないものとします。

用途: 不在となるため、(五)項イまたはその部分として扱います。

自動火災報知設備: 300㎡未満のため、特定小規模施設用自動火災報知設備を設置できます。

誘導灯: 設置の対象です。免除の特例を受けるかどうかは、別に判断します。

防炎物品: カーテンやじゅうたんを用いるなら、防炎物品にします。

消火器: 延べ面積が150㎡以上のため、対象です。

スプリンクラー設備、屋内消火栓設備、非常警報設備、避難器具など、面積や階、収容人員ごとの基準は、(五)項イの記事で設備ごとに説明しています。リーフレットも、建物の規模などによって、必須の対応のほかの設備が求められる場合があるとしています。

廊下の天井の警報器

5. 消防署に出す届出と、基準になる日

設備を設置する民泊で、消防署に出す届出は、着工届、設置届、防火管理者の選任の届出などです。それぞれ、出す人と基準になる日が違います。

届出 出す人 基準になる日
工事整備対象設備等着工届出書 工事をする甲種消防設備士 工事に着手しようとする日の10日前まで
消防用設備等設置届出書 防火対象物の関係者 工事が完了した日から4日以内
防火管理者の選任・解任の届出 防火管理者を定めた権原を有する者 遅滞なく
消防用設備等の点検結果の報告 防火対象物の関係者 (五)項イは1年に1回

(消防法第17条の14、第17条の3の2、第17条の3の3、第8条第2項、消防法施行規則第31条の3第1項、第31条の6第3項第1号)

着工届は、工事をする甲種消防設備士が出す届出で、対象は政令で定める工事です(消防法第17条の14)。リーフレットは、消火器や特定小規模施設用自動火災報知設備だけを設置するなら、自分で設置することもできると注記しています。誘導灯は、配線工事が必要なため、電気工事士などの資格を持つ人でなければ設置できないとしています。

設置届は、消防用設備等を設置したときの届出で、届け出たあとに消防機関の検査を受けます(消防法第17条の3の2)。(五)項イは、この届出と検査の対象です(消防法施行令第35条第1項第1号イ)。簡易消火用具と非常警報器具は、対象から除かれています(消防法施行令第35条第2項)。リーフレットは、「図面の作成」として、消火器の設置位置から最も遠い部分までの歩行距離を書き込む例や、特定小規模施設用自動火災報知設備の感知器の位置を示す例を載せています。

防火管理者は、収容人員が30人以上の(五)項イで定めます(消防法施行令第1条の2第3項第1号ロ)。収容人員は、(五)項イでは、従業者の数に、宿泊室ごとの数と、集会、飲食、休憩の用に供する部分の数を合わせて算定します。宿泊室は、洋式の宿泊室ならベッドの数、和式の宿泊室なら床面積を6㎡(簡易宿所や、主として団体客を宿泊させるものは3㎡)で除した数です(消防法施行規則第1条の3)。住宅宿泊事業者が不在とならない場合、その事業者は「従業者の数」として算定します(消防予第2号 問20)。

収容人員の例(仮の数値です)

不在とならない旨の届出があり、宿泊室の床面積の合計が60㎡の住宅を考えます。和式の宿泊室が合計36㎡、洋式の宿泊室が2室でベッドが合計4台、集会・飲食・休憩の用に供する部分は算定しないものとします。

従業者: 住宅宿泊事業者の1人

和式の宿泊室: 36㎡ ÷ 6㎡ = 6人

洋式の宿泊室: ベッド4台 = 4人

合計: 11人

宿泊室の床面積の合計が50㎡を超えるため(五)項イとして扱い、収容人員は11人です。30人に届かないため、この例では防火管理者を定める対象に当たりません。

収容人員が30人以上になる場合、リーフレットは、防火管理者の選任のほかに、消防計画の作成と届出も必要になるとしています(リーフレット22ページ)。

このほか、市町村等の火災予防条例により、防火対象物使用開始届出書の提出が必要となる場合があります(リーフレット)。

6. 消防法令適合通知書と、住宅宿泊事業の届出の関係

住宅宿泊事業法施行規則が添付書類として定めているのは、定款や登記事項証明書、住宅の図面などです(住宅宿泊事業法施行規則第4条第4項)。消防法令適合通知書を届出時に求めているのは、ガイドライン(住宅宿泊事業法施行要領)です(消防予第2号 問14)。ガイドラインの該当部分を引用します。

都道府県知事等は、「その他国土交通省令・厚生労働省令で定める書類」のほか、届出住宅が消防法令に適合していることを担保し、住宅宿泊事業の適正な運営を確保する目的から、消防法令適合通知書を届出時にあわせて提出することを求めるものとする。(ガイドライン 別紙20ページ)

リーフレットが示す、交付までの流れは3段階です。

1. 交付申請: 管轄の消防署へ、所定の様式で申請します。申請書に書く面積は、第3章で説明したとおりです。

2. 消防法令適合状況の調査: 管轄の消防署が、立入検査等を行い、消防法令への適合状況を調査します。

3. 交付: 調査の結果、消防法令に適合していると認められる場合に、通知書が交付されます。

住宅宿泊事業の届出は、事業を開始しようとする日の前日までに行います(住宅宿泊事業法施行規則第4条第1項)。通知書は届出時にあわせて提出するとされているため、届出より前に交付を受けておく流れが想定されます。そのため、事業を始める日から逆算して、事前相談の時期を決めます。リーフレットも、手続きの最初の段階を「お近くの消防署へ事前相談」としています。

通知書は、消防機関が届出住宅を把握する手段でもあります。通知は、消防機関が届出住宅を把握する方法として、住宅宿泊事業法の届出の内容の確認と、消防法令適合通知書の交付申請を挙げています(消防予第2号 問14)。

届出書に書く事項と、添付書類の全体は、住宅宿泊事業の届出を扱った記事で説明しています。

まとめ

覚えておきたいポイント

・住宅宿泊事業の届出先は都道府県知事等、消防用設備等の届出先は消防長または消防署長です。宛先が別です。

・消防法令上、届出住宅は原則として(五)項イまたはその部分です。不在とならない旨の届出があり、宿泊室の床面積の合計が50㎡以下なら、住宅として扱います。

・「宿泊室」は就寝の用に供する室で、押入れや床の間を含みません。一戸建ては建物単位、共同住宅は住戸単位で不在を見ます。

・住宅として扱う場合も、宿泊室には住宅用防災機器の設置義務があります。

・(五)項イとして扱う一戸建ての必須の対応は、自動火災報知設備、誘導灯、防炎物品、点検(年2回)と報告(年1回)です。消火器は延べ150㎡以上などの場合に必要です。

・着工届は工事着手の10日前まで、設置届は工事完了から4日以内です。防火管理者は収容人員30人以上の(五)項イで定めます。30人以上のときは、消防計画の作成と届出も必要になります(リーフレット)。

・消防法令適合通知書は、ガイドラインで届出時にあわせて提出するとされています。交付までは、交付申請、適合状況の調査、交付の3段階です。

・不明な場合は、管轄の消防本部に確認してください。

複雑な届出は、専門家に依頼する方法もあります

届出書など、書類の作成や提出が難しいと感じるときは、行政書士などの専門家に依頼するのも一つの方法です。なお、どの用途に当たるかは、管轄の消防本部に確認します。依頼すると、たとえば次のような点で、手間を減らせる場合があります。

・届出書の書式の選び方を相談できるため、書類を作り直す手間を減らせる場合があります。

・添える書面の確認を任せられるため、書類の不足や取り違えに気づきやすくなる場合があります。

・提出までの段取りを整理できるため、役所に出向く回数や、書類を何度も見直す手間を減らせる場合があります。

どの書類を任せられるかは、あらかじめ確認します。相談するかどうかは、ご自身で判断してください。

※本記事は一般的な情報提供を目的としており、個別の建物や店舗への適用を保証するものではありません。実際の取り扱いは、管轄の消防本部に確認してください。

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

コメント

コメント一覧 (2件)

コメントする

目次