同じ人数が働く建物でも、建物の用途(項)によって、防火管理者を定める必要があるかどうかの判断が変わります。その判断に使う数が収容人員で、「うちの店の収容人員は、どう計算するのか」という疑問につながります。収容人員は、建物の用途(項)ごとに決まった式で出します。式は消防法施行規則に載っていますが、従業者を何人と数えるか、客席をどう分けるかで、答えが変わります。計算例の数字は式の形を知るための仮のもので、実際の判定ではありません。この記事を読むと、飲食店、物品販売店舗、工場、事務所などの事業場の式の順に、収容人員の計算のしかたについて知ることができます。
1. 収容人員とは
収容人員は、防火管理者を定めなければならない建物かどうかの判断に使う数です。消防法施行令は、収容人員を「当該防火対象物に出入し、勤務し、又は居住する者の数」と定め(消防法施行令第1条の2第3項第1号イ)、その算定方法は総務省令で定めるとしています(同条第4項)。
基準の人数は、特定防火対象物は30人以上、非特定防火対象物は50人以上です。例外は、(六)項ロの10人以上などです(消防法施行令第1条の2第3項第1号)。飲食店((三)項ロ)と物品販売店舗((四)項)は特定防火対象物、工場((十二)項イ)と事務所などの事業場((十五)項)は非特定防火対象物です。
くわしく知りたい方へ

2. 式に出てくる言葉と、項の調べ方
自分の建物の項を調べ、その項の式に、従業者の数、席の数、床面積を当てはめて足します。項が分からないときは、あなたの建物は何項?防火対象物の用途別項判定をわかりやすく解説で調べてください。
式に出てくる言葉の意味は、こうです。
- 従業者: 事業所で働く人のことです。規則は、医師、看護師、神職、僧侶、牧師などを従業者として数える例に挙げています(消防法施行規則第1条の3第1項)。
- 固定式のいす席: 床に固定されたいすの席です。席の数が、そのまま人数になります。
- 長いす: 何人かで並んで座る、ベンチのようないすです。正面の幅を0.4mまたは0.5mで割り、1未満の端数は切り捨てます(消防法施行規則第1条の3第1項)。
- 床面積を3㎡で割る: 床面積(㎡)を3で割った数が、その部分の人数です。
3. 飲食店・店舗・工場・事務所などの式
飲食店の式は、従業者の数、固定式のいす席の席数、長いすの正面幅÷0.5m、その他の部分の床面積÷3㎡を足したものです。客席の部分ごとに数えます。規則は、(二)項と(三)項をまとめて一つの区分とし、その中を遊技場と「そのほかのもの」に分けています。飲食店は「そのほかのもの」に当たり、(三)項イの待合、料理店なども同じ式です(消防法施行規則第1条の3第1項)。
従業者が8人、固定席が32席、長いすの正面幅が4m、座敷が18㎡とします。
従業者 → 8人
固定席 → 32人
長いす → 4÷0.5 = 8人
座敷 → 18÷3 = 6人
合計は、8 + 32 + 8 + 6 = 54人です。
物品販売店舗((四)項)の式は、従業者の数に、主として従業者以外の者の使用に供する部分を加えたものです。その部分のうち、飲食又は休憩の用に供する部分は床面積÷3㎡、その他の部分は床面積÷4㎡で数えます(消防法施行規則第1条の3第1項)。
従業者が6人、飲食・休憩の部分が9㎡、その他の部分が100㎡とします。
従業者 → 6人
飲食・休憩の部分 → 9÷3 = 3人
その他の部分 → 100÷4 = 25人
合計は、6 + 3 + 25 = 34人です。
工場((十二)項イ)は、従業者の数だけで出します。従業者が52人なら、収容人員は52人です(消防法施行規則第1条の3第1項)。
事務所などの事業場((十五)項)は、従業者の数に、主として従業者以外の者の使用に供する部分の床面積÷3㎡を足します(消防法施行規則第1条の3第1項)。
従業者が8人、主として従業者以外の者の使用に供する部分が30㎡とします。
従業者 → 8人
従業者以外の者が使う部分 → 30÷3 = 10人
合計は、8 + 10 = 18人です。

4. そのほかの用途の式
そのほかの用途の式は、項の順に並べると、下の表のようになります(消防法施行規則第1条の3第1項)。
| 項 | 用途 | 収容人員の式 |
|---|---|---|
| (一)項 | 劇場、映画館、演芸場、観覧場、公会堂、集会場 | 従業者の数 + 客席の部分ごとに、固定式のいす席は「席数 + 長いすの正面幅÷0.4m」、立見席は「床面積÷0.2㎡」、その他の部分は「床面積÷0.5㎡」 |
| (二)項ロ | 遊技場 | 従業者の数 + 遊技のための機械器具を使用して遊技を行うことができる者の数 + 観覧・飲食・休憩の固定式いす席の席数 + 長いすの正面幅÷0.5m |
| (五)項イ | 旅館、ホテル、宿泊所など | 従業者の数 + 洋室はベッドの数 + 和室は床面積÷6㎡(簡易宿所と、主として団体客を宿泊させるものは3㎡) + 集会・飲食・休憩の部分は、固定式いす席は「席数 + 長いすの正面幅÷0.5m」、その他は「床面積÷3㎡」 |
| (五)項ロ | 寄宿舎、下宿、共同住宅 | 居住者の数 |
| (六)項イ | 病院、診療所、助産所 | 医師、看護師などの従業者の数 + 病室内の病床の数 + 待合室の床面積÷3㎡ |
| (六)項ロ・ハ | 老人短期入所施設、特別養護老人ホーム、老人デイサービスセンター、保育所など | 従業者の数 + 老人、乳児、幼児、身体障害者、知的障害者その他の要保護者の数 |
| (六)項ニ | 幼稚園、特別支援学校 | 教職員の数 + 幼児、児童又は生徒の数 |
| (七)項 | 小学校、中学校、高等学校、大学、各種学校など | 教職員の数 + 児童、生徒又は学生の数 |
| (八)項 | 図書館、博物館、美術館など | 従業者の数 + 閲覧室、展示室、展覧室、会議室又は休憩室の床面積の合計÷3㎡ |
| (九)項 | 公衆浴場 | 従業者の数 + 浴場、脱衣場、マッサージ室及び休憩の用に供する部分の床面積の合計÷3㎡ |
| (十)項 | 停車場・発着場 | 従業者の数 |
| (十一)項 | 神社、寺院、教会など | 神職、僧侶、牧師その他従業者の数 + 礼拝、集会又は休憩の用に供する部分の床面積の合計÷3㎡ |
| (十二)項〜(十四)項 | 工場、映画スタジオ、車庫、格納庫、倉庫 | 従業者の数 |
| (十七)項 | 重要文化財などに指定された建造物 | 床面積÷5㎡ |
(十六の三)項と(十八)項から(二十)項までは、式がなく、防火管理者を定める基準の対象にもなりません(消防法施行令第1条の2第3項第1号の括弧書き)。

5. 数え方で結果が変わる点
数える前に決めておきたいのは、4点あります。
- 従業者を何人と数えるか。 ほとんどの式は従業者の数を足しますが、交代制の人やパートの人の数え方について、条文が定めているのは「従業者の数」を足すところまでです。
- 客席をどう分けるか。 飲食店では、固定式のいす席の部分は席の数、その他の部分は床面積÷3㎡です。どこまでを固定式のいす席の部分とするかで、人数が変わります。
- 長いすの幅を何mで割るか。 (一)項は0.4m、(三)項や(五)項イは0.5mです。項が違うと、同じ長いすでも人数が変わります。
- 項を取り違えていないか。 飲食店と物品販売店舗では、式が違います。(二)項と(三)項の区分の中でも、遊技場(二)項ロとそのほかのものでは式が違うため、項を取り違えると、式の全体を選び直すことになります。
「主として従業者以外の者の使用に供する部分」にどこが当たるかは、(四)項と(十五)項の式に関わります。従業者の数え方や、床面積を割ったときの端数の扱いも含め、不明な場合は、管轄の消防本部に確認してください。
数え方の違いは、基準との比べ方にも響きます。
(三)項ロの飲食店で、固定席が10席、座敷が24㎡とします。座敷は24÷3 = 8人です。
従業者を10人と数えると、10 + 10 + 8 = 28人です。従業者を12人と数えると、12 + 10 + 8 = 30人です。
(三)項ロは、収容人員が30人以上で防火管理者を定める基準の対象になります(消防法施行令第1条の2第3項第1号)。28人と30人では、基準に当たるかどうかが変わります。
基準と比べる方法は、防火管理者とは?役割・選任・届出をやさしく解説【2026年版】で説明しています。
6. まとめ
覚えておきたいポイント
・収容人員は、建物の用途(項)ごとに決まった式で出す数で、防火管理者を定める基準との比較に使います。
・飲食店((三)項ロ)は、従業者 + 席の数 + 長いすの幅÷0.5m + その他の部分の床面積÷3㎡です。
・物品販売店舗((四)項)は、従業者 + 飲食・休憩の部分÷3㎡ + その他の部分÷4㎡です。
・工場((十二)項イ)は、従業者の数だけです。事務所などの事業場((十五)項)は、従業者 + 主として従業者以外の者の使用に供する部分÷3㎡です。
・長いすは、幅を割ります。(一)項は0.4m、(三)項や(五)項イは0.5mで、1未満の端数は切り捨てます。
・基準の人数は、特定防火対象物(飲食店、物品販売店舗など)が30人以上、非特定防火対象物(工場、事業場など)が50人以上です。
・従業者の数え方と客席の分け方で、人数が変わり、基準に当たるかどうかも変わります。
・不明な場合は、管轄の消防本部に確認してください。
※本記事は一般的な情報提供を目的としており、個別の建物や店舗への適用を保証するものではありません。実際の取り扱いは、管轄の消防本部に確認してください。

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