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個人事業の開業届(開業・廃業等届出書)。出す先と時期、書く事項、あわせて検討する書類と提出方法

個人事業の開業届(開業・廃業等届出書)。出す先と時期、書く事項、あわせて検討する書類と提出方法

個人で事業を始めるときに「開業届を出しておいてください」と言われても、いつまでに、どこへ、何を書いて出すのかは、すぐには分かりません。青色申告承認申請書や給与に関する届出書が、同じ届出に含まれるのか、別の書類なのかも、気になるところです。開業届の正式な名称は「個人事業の開業・廃業等届出書」で、納税地の税務署に、確定申告期限までに出します。説明は、所得税法と同法施行規則、国税庁の案内に沿って進めます。この記事を読むと、届出書の内容、あわせて検討する書類、従業員を雇うときの届出、提出の方法について知ることができます。

目次

1. 開業届は、納税地の税務署へ、確定申告期限までに出す

開業届の正式な名称は「個人事業の開業・廃業等届出書」で、所得税法では「開業等の届出」といいます。国内で新たに不動産所得、事業所得または山林所得を生ずべき事業を開始したとき、その事業の事務所や事業所を設けたとき、移転したとき、廃止したときに、届出書を税務署長に提出します(所得税法第229条)。事業をやめたときも、同じ届出書を使います。国税庁の記載要領は、この届出書を、事業を開始したとき、事務所・事業所を新設、増設、移転、廃止したとき、事業を廃止したときに提出するものと説明しています。

提出先は、納税地の所轄税務署長です(所得税法施行規則第98条)。納税地は、国内に住所があれば、その住所地です(所得税法第15条第1号)。国内に住所のほかに居所があれば居所地を、住所地以外に事業場などがあれば、その事業場などの所在地を、納税地にすることもできます(所得税法第16条第1項・第2項)。国税庁の手続案内(A1-5)では、事業所の所在地が納税地と異なっていても、納税地を所轄する税務署長以外の税務署長への提出は不要とされています。

期限は、事業を開始した日など、届出の対象になる事実があった日の属する年分の所得税の確定申告期限までです(所得税法第229条)。確定申告の期間は、翌年の2月16日から3月15日までです(所得税法第120条第1項)。仮の例として、令和9年4月1日に事業を開始した場合は、令和9年分の確定申告期限(令和10年3月15日)までに出します。国税庁の手続案内(A1-5)では、提出期限が土曜日、日曜日、祝日などに当たる場合は、これらの日の翌日が期限とされています。

この期限(所得税法第229条)は、令和8年1月1日以後に生じた事実に適用されます。令和7年以前に生じた事実には、改正前の規定が適用されます(所得税法等の一部を改正する法律(令和5年法律第3号)附則第10条)。期限が改正されているため、日付の古い資料を見るときは、令和8年1月1日以後の事実に適用される規定かどうかを確かめます。

開業届は、所得税法に基づく税務署への届出です。営業に必要なほかの法令の許可や届出は、それぞれの法令で定められています。たとえば、消防の手続きは別の窓口(消防本部)に出します。

書類とペンが置かれた机

2. 届出書に書く事項と、様式の欄

届出書に書く事項は、5つ定められています(所得税法施行規則第98条)。

  • 氏名、住所(国内に住所がない場合は居所)、個人番号。住所地と納税地が異なるときは、納税地
  • 事業を開始した旨(または事務所等を設け、移転し、廃止した旨)と、その年月日
  • 新たに事業を開始した場合は、事業の概要
  • 事務所等の所在地(移転した場合は、移転後の所在地)
  • その他参考となるべき事項

実際に使う様式は、国税庁が公表しています。国税庁(福岡国税局)の記載例で確認できる欄は、氏名、生年月日、職業、屋号、電話番号、納税地の区分と納税地、納税地以外の住所地や事業所、届出の区分(開業、廃業、事務所・事業所の新設等)、所得の種類、開業・廃業等日、事業の概要、給与等の支払の状況、開業・廃業に伴う届出書の提出の有無などです。ここで挙げた欄は国税庁の記載例のもので、様式によって欄の並びや名称が異なる場合があります。使う様式は、税務署の案内で確認してください。

  • 屋号: 所得税法施行規則が定める記載事項ではありません(所得税法施行規則第98条)。国税庁の様式には、屋号とそのフリガナを書く欄があります(記載例で確認)。
  • 納税地の区分: 記載例には、原則は住所地(住民票上の住所)、選択できるのは居所地と事業所等(店舗・事務所等)、という注記があります。税務署からのお知らせは、納税地宛てに送られるとも注記されています。
  • 所得の種類: 国税庁の記載要領は、新たに開始した事業に係る所得の種類について、該当するものにレ印を付けるとしています。様式には、不動産所得、山林所得、事業(農業)所得の欄があります。
  • 開業日: 書くのは、事業を開始した年月日です(所得税法施行規則第98条第2号)。
  • 事業の概要: 記載例の欄に「できるだけ具体的に記載します」と示されています。
  • 給与等の支払の状況: 記載要領では、届出日現在の給与の支給人員、給与等の支払の状況、源泉徴収をすべき税額があるかどうかを書く欄です。第4章で説明します。
  • 個人番号と本人確認: 書面で提出するときは、個人番号の記載と、本人確認書類の提示または写しの添付が必要です(国税庁の記載要領)。

3. あわせて検討する書類

開業届の様式には、「開業・廃業に伴う届出書の提出の有無」の欄があり、青色申告承認申請書や、消費税の課税事業者選択届出書を出すかどうかを書きます(国税庁の記載例)。これらは開業届とは別の書類で、根拠の条文も期限も別です。

書類 出す場面 時期 根拠
青色申告承認申請書 青色の申告書で確定申告をしようとするとき その年3月15日まで。1月16日以後に新たに業務を開始した場合は、開始日から2か月以内 所得税法第144条
青色事業専従者給与に関する書類 青色申告者と生計を一にする15歳以上の親族が、専らその事業に従事し、給与を支払うとき その年3月15日まで。1月16日以後に新たに事業を開始した場合は、開始日から2か月以内 所得税法第57条第1項・第2項
給与支払事務所等の開設届出書 給与等の支払事務を取り扱う事務所等を設けたとき その事実があった日から1か月以内 所得税法第230条
源泉所得税の納期の特例の承認申請書 給与等の支払を受ける者が常時10人未満の事務所等で、納期の特例の承認を受けようとするとき 承認を受けた日の属する月から、その半期の最終月までの分が特例の対象 所得税法第216条、第217条
課税事業者選択届出書 消費税の課税事業者を選択するとき 適用を受けようとする課税期間の初日の前日まで。事業を開始した日の属する課税期間を選ぶ場合は、その課税期間中 国税庁タックスアンサー No.2090

「青色事業専従者給与に関する書類」は、条文では、青色事業専従者の氏名、職務の内容、給与の金額、給与の支給期などを記載した書類とされています(所得税法第57条第2項)。国税庁のタックスアンサー No.2090 では、「青色事業専従者給与に関する届出書」の名前で案内されています。

期限は書類ごとに異なります。開業届は確定申告期限まで、青色申告承認申請書は3月15日または開始日から2か月以内、給与支払事務所等の開設届出書は1か月以内です。青色申告承認申請書の期限、承認の流れ、帳簿については、別の記事で説明しています。

課税事業者選択届出書は、消費税の届出です。この記事では、国税庁のタックスアンサーにある期限の紹介にとどめ、消費税の仕組みは扱いません。

色分けされたファイル

4. 従業員を雇うとき: 開設届出書と納期の特例

給与等の支払事務を取り扱う事務所や事業所を設けたときは、給与支払事務所等の開設届出書を、その事実があった日から1か月以内に、税務署長に出します(所得税法第230条)。この規定も、令和8年1月1日以後に生ずる事実に適用されます(令和5年法律第3号附則第10条)。開業届と期限の数え方が異なります。

提出先は、給与支払事務所等の所在地の所轄税務署長です(所得税法施行規則第99条)。開業届の提出先は納税地の所轄税務署長ですから、納税地と事業所の所在地が異なるときは、提出先の税務署が分かれることがあります。ただし、その事実について開業等の届出書を提出すべき場合は、給与支払事務所等の届出書を出す対象から除かれています(同第99条)。届出書に書く事項は、氏名または名称、住所、設けた旨とその年月日、給与支払事務所等の所在地、届出日現在の給与等の支払を受ける者の職種等の別の人員数、その他参考となるべき事項です(所得税法施行規則第99条)。

源泉所得税の納期の特例は、給与等を支払うときに源泉徴収した所得税を、半期ごとにまとめて納める制度です。次の要件と内容が、条文に定められています。

  • 対象は、給与等の支払を受ける者が常時10人未満の事務所等です。事務所等の所在地の所轄税務署長の承認を受けます(所得税法第216条)。
  • 納付の期限は、1月から6月までの分が7月10日、7月から12月までの分が翌年1月20日です。承認を受けた日の属する半期は、その日の属する月からその半期の最終月までの分が対象になります(所得税法第216条)。
  • 申請書には、承認を受けようとする事務所等の所在地、給与等の支払を受ける者の数などを書きます(所得税法第217条第1項)。所得税法施行規則は、氏名・住所、最近6か月間の月別の給与等の支払を受ける者の数と給与等の金額(臨時に雇用している者がいる場合は、その内訳)、国税の滞納の事情、過去1年以内の取消しの通知の有無などを定めています(所得税法施行規則第78条)。
  • 税務署長は、常時10人未満と認められないとき、取消しの通知を受けた日以後1年以内に申請したとき、国税の滞納があり徴収が著しく困難であるなどの理由があるときは、申請を却下できます(所得税法第217条第2項)。
  • 申請書を提出した日の属する月の翌月末日までに、承認も却下の処分もなかったときは、その日に承認があったものとみなされます(所得税法第217条第5項)。
  • 承認を受けたあと、給与等の支払を受ける者が常時10人未満でなくなったときは、遅滞なく届出書を出します(所得税法第218条)。

給与支払事務所等の届出書も納期の特例も、給与等の支払事務を取り扱う事務所等があることが前提です。給与等を支払わない事業は、対象になりません。

5. 提出の方法

提出の方法は、国税庁の手続案内(A1-5)では、e-Taxと書面です。書面は、持参または送付で出します。

e-Taxは、e-Taxソフトで届出書を作成し、e-Taxで提出します。初めて利用するときは、利用者識別番号を取得する必要があります。e-Taxで提出するときは、本人確認書類の提示または写しの添付は不要です(国税庁の手続案内(A1-5))。

書面で出すときは、届出書に個人番号を記載し、本人確認書類を提示するか、その写しを添付します(国税庁の記載要領)。同じ記載要領は、届出書の控えを保管するときは、控えには個人番号を記載しないこと(複写で控えを作るときは、個人番号の部分が複写されない措置を講じること)にも触れています。

給与支払事務所等の開設届出書も、国税庁の手続案内(A2-7)では、e-Taxと書面(持参または送付)で出します。

提出先は、第4章で触れたとおり、開業届が納税地の所轄税務署、給与支払事務所等の開設届出書が事務所等の所在地の所轄税務署です。

封筒とノートパソコン

6. 出すのが遅れたとき、出さなかったとき

開業等の届出は、所得税法が「提出しなければならない」と定める届出です(所得税法第229条)。一方で、開業等の届出に罰則の定めはありません(所得税法第6編、第238条〜第243条)。

開業届を出していないことと、事業から生じた所得の申告や帳簿の義務は、別の話です。事業所得を生ずべき業務を行う居住者は、青色申告の承認を受けていなくても、帳簿を備え付けて総収入金額と必要経費に関する事項を記録し、その帳簿を保存しなければなりません(所得税法第232条第1項)。確定申告が必要なときは、期間内に申告書を出します(所得税法第120条第1項)。

青色申告の承認申請(所得税法第144条)と、納期の特例の承認申請(同第217条)は、開業届の提出を要件としていません。それぞれの書類に、それぞれの期限があります。開業届が遅れたときの個別の取り扱いは、納税地の所轄税務署に確認してください。

まとめ

覚えておきたいポイント

・開業届(個人事業の開業・廃業等届出書)は、納税地の所轄税務署長に出します(所得税法施行規則第98条)。

・期限は、事実があった日の属する年分の確定申告期限までです。令和8年1月1日以後に生じた事実に適用されます(所得税法第229条)。

・書く事項は、氏名・住所・個人番号、開始した年月日、事業の概要、事務所等の所在地などです。屋号は所得税法施行規則が定める記載事項ではありませんが、様式には屋号の欄があります。

・青色申告承認申請書の期限は、3月15日または開始日から2か月以内です(所得税法第144条)。開業届とは別の書類です。

・給与等の支払事務所を設けたときは、1か月以内に開設届出書を出します。納期の特例は、給与等の支払を受ける者が常時10人未満の事務所等が対象です。

・提出は、e-Taxまたは書面(窓口・郵送)です。書面は個人番号の記載と本人確認書類が必要です。

・不明な場合は、納税地の所轄税務署に確認してください。

※本記事は一般的な情報提供を目的としており、個別の税務の取り扱いを保証するものではありません。実際の取り扱いは、納税地の所轄税務署に確認してください。

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