青色申告の承認申請は、申請の期限と提出先、申請書に書く事項、承認までの扱い、承認のあとの帳簿、取りやめの順に進みます。個人で事業を始めるときや、すでに事業をしていて青色申告を考えるときは、承認申請書をいつまでに出せばよいのかが、最初に確かめたい点です。出したあとはいつ承認されるのか、承認を受けたら帳簿はどうなるのかも、先に知っておきたい点です。青色申告は、承認を受けた人だけが使える制度のため、申請書の出し方が最初の分かれ道になります。説明は、所得税法と同法施行規則、租税特別措置法、国税庁の案内に沿っています。この記事を読むと、青色申告の承認申請の期限と提出先、申請書に書く事項、承認のあとの帳簿について知ることができます。
1. 青色申告は、承認を受けた人が使う制度
青色申告は、承認を受けた人が、確定申告書を青色の申告書で提出する制度です。不動産所得、事業所得または山林所得を生ずべき業務を行う居住者が、納税地の所轄税務署長の承認を受けると、確定申告書と修正申告書を青色の申告書により提出できます(所得税法第143条)。承認を受けていなければ、青色の申告書は使えません。
承認を受けた人には、帳簿書類を備え付けて取引を記録し、保存する義務があります(所得税法第148条第1項)。青色申告書には、貸借対照表、損益計算書などの添付が必要です(所得税法第149条)。
承認を受けていると関係してくる制度は、条文に定められています。
- 青色申告特別控除: 不動産所得、事業所得、山林所得の金額から、一定の金額を控除します(租税特別措置法第25条の2)。
- 純損失の繰越控除: 青色申告書を提出している年に生じた純損失の金額は、前年以前3年内のものを、確定申告書に係る年分の所得の金額の計算上、控除します(所得税法第70条第1項)。
- 純損失の繰戻しによる還付: 青色申告書を提出する人は、その年に生じた純損失の金額があるときに、申告書の提出と同時に、前年分の所得税の還付を請求できます(所得税法第140条第1項)。前年分の所得税についても青色申告書を提出していて、その年分の青色申告書を期限までに提出した場合に限ります(同第4項)。その年に初めて青色申告書を提出する人は、前年分の青色申告書がないため、対象になりません。
- 青色事業専従者給与: 生計を一にする15歳未満でない親族が、専らその事業に従事して、届け出た方法と金額の範囲内で給与を受けたときは、その給与のうち労務の対価として相当なものが必要経費になります(所得税法第57条第1項)。届出が必要です(同第2項)。
青色申告特別控除の金額は、10万円、55万円、65万円の3通りです(租税特別措置法第25条の2)。
| 控除する金額 | 条文にある主な要件 |
|---|---|
| 10万円 | 青色申告書を提出することにつき承認を受けている個人。所得の金額が10万円より少ないときは、その所得の金額までです(第1項) |
| 55万円 | 承認を受けている個人で、不動産所得または事業所得を生ずべき事業を営むものが、帳簿書類を備え付けて、これらの所得に係る取引を記録している場合です。一切の取引の内容を詳細に記録している場合として財務省令で定める場合に限ります(第3項)。確定申告書に適用を受ける旨と控除額の計算に関する事項を記載し、貸借対照表、損益計算書などを添付して、期限までに提出します(第6項) |
| 65万円 | 55万円の場合に当たり、電子帳簿の保存を行っていること(第4項第1号)、または、確定申告書の提出期限までにe-Taxで、確定申告書に記載すべき事項と貸借対照表、損益計算書などに記載すべき事項の情報を送信したこと(同項第2号)のいずれかを満たすときです |
65万円の控除のうち、e-Taxで送信する場合(第4項第2号)には、第6項の貸借対照表などの添付の要件は適用されません。この場合は、貸借対照表などに記載すべき事項の情報の送信が要件になっています(第4項第2号、第6項)。
55万円と65万円の控除は、現金主義による所得計算の特例(所得税法第67条第1項)の適用を受ける人は対象から除かれています(租税特別措置法第25条の2第3項)。国税庁のタックスアンサー No.2070 では、令和4年分以後の65万円の控除を受けるには、仕訳帳と総勘定元帳について優良な電子帳簿の要件を満たして電子データで備付けと保存を行い、一定の事項を記載した届出書を提出する必要があるとされています(すでに電子帳簿保存の要件を満たして65万円の控除を受けていた人が、引き続き満たしている場合は、届出書の提出は不要)。
承認を受けていない事業所得などの人にも、帳簿を備え付けて記録し、保存する義務があります(所得税法第232条第1項)。青色申告の帳簿は、その義務とは別に、所得税法施行規則が細かく定めています(第5章)。

2. 申請の期限と、提出先
承認を受けようとする人は、承認を受けようとする年の3月15日までに、申請書を納税地の所轄税務署長に提出します。その年の1月16日以後に新たに事業を始めた場合は、その業務を開始した日から2か月以内です(所得税法第144条)。
| 状況 | 提出期限 | 根拠 |
|---|---|---|
| すでに事業を行っている場合、またはその年の1月15日までに新たに事業を始めた場合 | その年の3月15日まで | 所得税法第144条 |
| その年の1月16日以後に新たに事業を始めた場合 | 業務を開始した日から2か月以内 | 所得税法第144条 |
| 青色申告の承認を受けていた人の事業を、相続で承継した場合 | 死亡の日が1月1日〜8月31日なら、死亡の日から4か月以内。9月1日〜10月31日ならその年の12月31日まで。11月1日〜12月31日なら翌年の2月15日まで | 国税庁の手続案内(A1-8) |
仮の例として、すでに事業を行っている人が、令和9年分から青色申告をしたいときは、令和9年3月15日までに申請書を出します。令和9年4月1日に新たに事業を始めた場合は、4月1日から2か月以内が期限です。国税庁の手続案内(A1-8)では、提出期限が土曜日、日曜日、祝日などに当たる場合は、これらの日の翌日が期限とされています。
申請書は、承認を受けようとする年の「その年分以後」の所得税について出します(所得税法第144条)。いったん承認を受けると、取りやめや取消しがない限り、翌年以降も承認は続きます。取りやめと取消しは、第6章で説明します。
提出の方法は、国税庁の手続案内(A1-8)では、e-Taxと書面(持参または送付)です。
開業届の提出と、青色申告承認申請書の提出は、別の手続きです。青色申告の承認の申請は、開業届の提出を要件としていません(所得税法第144条)。開業届の期限や、あわせて検討する書類は、別の記事で説明しています。
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3. 申請書に書く事項
申請書に書く事項は、5つ定められています(所得税法施行規則第55条)。
- 申請書を提出する人の氏名、住所(国内に住所がない場合は居所)。住所地と納税地が異なるときは、納税地
- 申請書を提出したあと、最初に青色申告書を提出しようとする年
- 青色申告の承認を取り消された、または取りやめの届出書を提出した後に、再び申請するときは、取消しの通知を受けた日、または取りやめの届出書を提出した日
- その年の1月16日以後に新たに業務を開始した場合は、その開始した年月日
- その他参考となるべき事項
「最初に青色申告書を提出しようとする年」は、申請書の提出後に、最初に青色の申告書で申告する年です。申請するのは、その年分以後の各年分の所得税について承認を受けようとする人です(所得税法第144条)。
1月16日以後に新たに業務を開始した人は、開始した年月日を書きます。これは、期限の計算の出発点になる日です。開業届に書く開始の年月日は、事業を開始した年月日です(所得税法施行規則第98条第2号)。どちらも、事業や業務を開始した日を書きます。
過去に承認の取消しを受けた、または取りやめをした人が、再び申請するときは、その日から1年以内の申請は、却下されることがあります(所得税法第145条第3号)。国税庁の様式の書き方にも、同じ趣旨の注意が書かれています。
届出書の様式は、国税庁が公表しています。様式の欄の並びや名称は、様式によって異なる場合があります。使う様式は、税務署の案内で確認してください。現金主義による所得計算の特例を選ぶ場合には、特例の届出を兼ねた別の様式があります(国税庁の様式)。

4. 承認、却下、みなし承認
税務署長は、申請書の提出があったときに、承認または却下の処分をします。処分をするときは、申請した人に、書面でその旨を通知します(所得税法第146条)。
却下の事由は、3つです(所得税法第145条)。
- 承認を受けようとする年の帳簿書類の備付け、記録または保存が、帳簿書類に関する財務省令の定めに従って行われていないこと
- 備え付ける帳簿書類に、取引の全部または一部を隠ぺいし、または仮装して記載・記録していることその他、不実の記載・記録があると認められる相当の理由があること
- 青色申告の承認の取消しの通知を受け、または取りやめの届出書を提出した日以後1年以内に、申請書を提出したこと
条文は「却下することができる」と定めています。申請書の記載の仕方は、却下の事由ではありません。
申請書の提出があった場合に、期限までに承認も却下もなかったときは、承認があったものとみなされます(所得税法第147条)。
| 申請した年の事情 | 処分がなかったときに、承認があったとみなされる日 |
|---|---|
| 1月1日〜10月31日に業務を開始した場合、またはすでに事業を行っている場合 | 承認を受けようとする年の12月31日 |
| その年の11月1日以後に新たに業務を開始した場合 | その年の翌年の2月15日 |
仮の例として、令和9年3月に申請書を出した人は、令和9年12月31日までに承認も却下もなければ、その日に承認があったものとみなされます。国税庁の手続案内(A1-8)でも、承認を受けようとする年の12月31日(その年の11月1日以降に新たに業務を開始した場合は翌年の2月15日)までに処分の通知がなかったときは、承認されたものとみなされるとされています。
5. 承認を受けたあとの帳簿の備付けと保存
承認を受けた人は、財務省令で定めるところにより、業務につき帳簿書類を備え付けて取引を記録し、保存しなければなりません(所得税法第148条第1項)。納税地の所轄税務署長は、必要があると認めるときは、その帳簿書類について必要な指示ができます(所得税法第148条第2項)。
所得税法施行規則は、取引の記録、帳簿、決算、保存などを定めています。
- 取引の記録: 資産、負債、資本に影響を及ぼす一切の取引を、正規の簿記の原則に従い、整然と、かつ、明りように記録し、その記録に基づいて貸借対照表と損益計算書を作成します(所得税法施行規則第57条第1項)。
- 帳簿: すべての取引を借方と貸方に仕訳する帳簿(仕訳帳)と、すべての取引を勘定科目の種類別に分類して整理計算する帳簿(総勘定元帳)、その他必要な帳簿を備えます(所得税法施行規則第58条第1項)。仕訳帳には、取引の発生順に、年月日、内容、勘定科目、金額を記載します。総勘定元帳には、勘定ごとに、記載の年月日、相手方の勘定科目、金額を記載します(所得税法施行規則第59条)。
- 決算: 毎年12月31日に、棚卸資産の棚卸しなど、決算に必要な事項の整理を行い、貸借対照表と損益計算書を作成します(所得税法施行規則第60条第1項、第61条第1項)。その年に新たに青色申告者となった人は、その年の1月1日(年の途中で業務を開始した場合は開始した日)にも、棚卸しなどを行います(所得税法施行規則第60条第2項)。
- 簡易な方法: 帳簿書類は、財務大臣の定める簡易な記録の方法と記載事項によることもできます(所得税法施行規則第56条第1項ただし書)。この方法による人は、貸借対照表を青色申告書に添付する必要がありません(所得税法施行規則第65条第2項)。
- 保存: 帳簿と、決算に関する書類は、原則として起算日から7年間、保存します。取引の相手方から受け取った注文書、契約書、領収書などの書類は、現金預金取引等関係書類以外のものは5年間です。保存の場所は、住所地、居所地、または事業所などの所在地です。起算日は、帳簿は閉鎖の日の属する年の翌年3月15日の翌日、書類は作成または受領の日の属する年の翌年3月15日の翌日です(所得税法施行規則第63条第1項・第4項)。同条第2項に、一定の金額以下の青色申告者の書類の保存期間についての特例があります。
- 省略・変更: 業種、業態、規模などにより、帳簿の規定によりがたいときは、納税地の所轄税務署長の承認を受けて、記載事項の一部を省略し、または変更することができます(所得税法施行規則第64条)。
国税庁のタックスアンサー No.2070 では、正規の簿記によらず、現金出納帳、売掛帳、買掛帳、経費帳、固定資産台帳のような帳簿を備え付けて簡易な記帳をするだけでもよいとされています。
帳簿書類の備付け、記録、保存が財務省令のとおりに行われていないことは、申請の却下の事由にも(所得税法第145条第1号)、承認の取消しの事由にもなります(同第150条第1項第1号)。

6. 取りやめ、取消し、事務所の変更
取りやめ: 承認を受けている人が、その年分以後の青色申告書の提出をやめようとするときは、その年分の所得税に係る確定申告期限までに、やめようとする年などを記載した届出書を、納税地の所轄税務署長に提出します。届出書を提出すると、その年分以後の各年分について、承認は効力を失います(所得税法第151条第1項)。届出書に書く事項は、氏名、住所(国内に住所がない場合は居所)、住所地と納税地が異なるときは納税地、その他参考となるべき事項です(所得税法施行規則第66条)。この期限は、令和8年分以後の所得税について青色申告書の提出をやめようとする場合に適用されます。令和7年分以前については、従前の例によります(所得税法等の一部を改正する法律(令和5年法律第3号)附則第5条)。
業務の全部を譲渡し、または廃止した場合は、その譲渡または廃止の日の属する年の翌年分以後の各年分について、承認は効力を失います(所得税法第151条第2項)。国税庁の記載要領は、事業を廃止する人で青色申告の取りやめをする人は、「青色申告の取りやめ届出書」も提出するとしています。
取消し: 承認を受けた人に、次のいずれかの事実があるときは、税務署長は、その年までさかのぼって、承認を取り消すことができます(所得税法第150条第1項)。
- その年の帳簿書類の備付け、記録または保存が、財務省令の定めに従って行われていないこと
- その年の帳簿書類について、税務署長の指示に従わなかったこと
- その年の帳簿書類に、取引の全部または一部を隠ぺいし、または仮装して記載・記録し、その他、記載・記録した事項の全体についてその真実性を疑うに足りる相当の理由があること
取消しがあったときは、取り消された年分以後の各年分の所得税について提出した青色申告書は、青色申告書以外の申告書とみなされます(所得税法第150条第1項)。取消しの処分をするときは、書面で通知し、その書面に、取消しの基因となった事実がどの号に当たるかを付記します(同第2項)。
事務所の変更: 事業用の事務所や事業所を、新たに設けたとき、移転したとき、廃止したときは、開業等の届出書(開業届)を提出します(所得税法第229条、所得税法施行規則第98条)。
個別の事情による取り扱いは、納税地の所轄税務署に確認してください。
まとめ
覚えておきたいポイント
・青色申告は、納税地の所轄税務署長の承認を受けた人が、青色の申告書で確定申告をする制度です(所得税法第143条)。
・申請の期限は、その年の3月15日までです。1月16日以後に新たに事業を始めた場合は、開始日から2か月以内です(所得税法第144条)。
・申請書は、承認を受けようとする年の「その年分以後」の所得税について出します。申請は、開業届の提出を要件としていません。
・却下の事由は、帳簿書類の不備、不実の記載、取消し・取りやめから1年以内の申請の3つです(所得税法第145条)。
・期限までに承認も却下もなければ、12月31日(11月1日以後に開業した場合は翌年2月15日)に承認があったものとみなされます(所得税法第147条)。
・承認を受けたら、帳簿の備付け、記録、保存の義務があります(所得税法第148条)。保存は原則7年間です(所得税法施行規則第63条)。
・やめるときは、確定申告期限までに取りやめの届出書を出します(所得税法第151条)。帳簿の不備などがあると、さかのぼって取り消されることがあります(所得税法第150条)。
・不明な場合は、納税地の所轄税務署に確認してください。
※本記事は一般的な情報提供を目的としており、個別の税務の取り扱いを保証するものではありません。実際の取り扱いは、納税地の所轄税務署に確認してください。

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