建物を借りることになり、あるいは改装を決めたところで、「特定一階段等防火対象物に当たる」と言われました。階段が1つだと何が変わるのか、確かめたくなります。この区分は、消防法施行規則が煙感知器の設置基準の中で定めていて、用途、階、階段の数の3つの条件を満たすと当たります。階段が1つだから当たる、という単純な話ではなく、どの用途の部分が、どの階にあり、階段がどのような階段かで結論が変わります。結論から言えば、当たるかどうかは階段の条件で分かれ、当たると防火対象物点検と自動火災報知設備に関わります。この記事を読むと、その根拠となる階段の条件、防火対象物点検への影響、自動火災報知設備への影響について知ることができます。
1. 特定一階段等防火対象物とは
「特定一階段等防火対象物」は、消防法施行規則が、煙感知器(光電式分離型感知器を除く)の設置基準の中で使っている用語です。消防法施行令別表第一の(一)〜(四)項、(五)項イ、(六)項、(九)項イの用途に使われる部分が避難階以外の階にあり、その階から避難階または地上に直通する階段の数が足りない建物を指します(消防法施行規則第23条第4項第7号ヘの定義)。
条件の中身は、消防法施行令第4条の2の2第2号と第21条第1項第7号に、階段の数の条件として定められています。
階段が1つだから当たる、という単純な話ではありません。どの用途の部分が、どの階にあり、階段がどのような階段かで、結論が変わります。

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2. 階段の条件
条件は、用途、階、階段の数の順に見ます。
| 見るところ | 条件 |
|---|---|
| 用途 | (一)〜(四)項、(五)項イ、(六)項、(九)項イの用途に使われる部分があること |
| 階 | その部分が、避難階以外の階(1階と2階を除く)にあること |
| 階段 | その階から避難階または地上に直通する階段が、2以上設けられていないこと |
(消防法施行令第4条の2の2第2号、第21条第1項第7号)
用途は、消防法施行令別表第一に、劇場や集会場、遊技場、飲食店、百貨店などの物販店、旅館・ホテル、病院や福祉施設、蒸気浴場などが挙がっています。飲食店は(三)項ロ、物販店は(四)項、旅館・ホテルは(五)項イです。工場((十二)項イ)、倉庫((十四)項)、事務所などの事業場((十五)項)は、挙がっていない用途です。
避難階とは、地上に出られる階のことです。消防法施行令第4条の2の2第2号は、避難階を次のように定めています。
「避難階(建築基準法施行令(昭和二十五年政令第三百三十八号)第十三条第一号に規定する避難階をいう。以下同じ。)」(消防法施行令第4条の2の2第2号)
避難階以外の階について、同じ号は次のように定めています。
「一階及び二階を除くものとし、総務省令で定める避難上有効な開口部を有しない壁で区画されている部分が存する場合にあつては、その区画された部分とする。」(消防法施行令第4条の2の2第2号)
つまり、避難階以外の階でも1階と2階は除かれ、区画された部分があるときは、その区画された部分で見ます。
階段には、「建築基準法施行令第二十六条に規定する傾斜路を含む」と定められています(消防法施行令第4条の2の2第2号)。
階段の数は、原則として2以上が必要です。ただし、階段が屋外に設けられているか、総務省令で定める避難上有効な構造を有するときは、1以上で足ります(消防法施行令第4条の2の2第2号、第21条第1項第7号)。
「避難上有効な構造」の中身は、消防法施行規則第4条の2の3が次のように定めています。
「建築基準法施行令(昭和二十五年政令第三百三十八号)第百二十三条及び第百二十四条に規定する避難階段(屋内に設けるもので消防庁長官が定める部分を有するものに限る。)又は特別避難階段である場合」(消防法施行規則第4条の2の3)
つまり、屋内の階段でも、避難階段(消防庁長官が定める部分を有するもの)または特別避難階段であれば、階段が1つでこの条件に当たらないことがあります。
3階に飲食店((三)項ロ)があり、避難階または地上に直通する階段が1つだけの建物を考えます。その階段が屋外に設けられておらず、避難上有効な構造でもないときは、2以上設けられていないため、この条件に当たります。同じ階段1つでも、屋外に設けられているときは、1以上あれば足りるため、この条件には当たりません(消防法施行令第4条の2の2第2号)。

3. 防火対象物点検への影響
防火対象物点検の対象になるのは、防火管理者を定める建物(消防法第8条第1項の防火対象物)のうち、政令で定めるものです(消防法第8条の2の2第1項)。その政令が、収容人員が300人以上のものを第1号、この階段の条件に当たるものを第2号として挙げています(消防法施行令第4条の2の2)。防火管理者を定める建物がこの階段の条件に当たると、収容人員が300人に満たなくても、防火対象物点検の対象になります。
防火対象物点検は、建物の管理について権原を有する人が、防火対象物点検資格者に点検させ、その結果を消防長または消防署長に報告する制度です(消防法第8条の2の2第1項)。点検は1年に1回行います。新型インフルエンザ等そのほか消防庁長官が定める事由により、その期間ごとの点検が困難なときは、消防庁長官が定める期間ごとに行います(消防法施行規則第4条の2の4第1項)。点検の流れや表示は、下の記事で説明しています。
収容人員の数え方は、防火対象物の収容人員の算定方法|用途別の式と計算例で案内しています。
4. 自動火災報知設備への影響
自動火災報知設備は、延べ面積の基準に届かない建物でも、この階段の条件に当たると設置が必要です。消防法施行令第21条第1項第7号は、第1号〜第6号に掲げる防火対象物以外の防火対象物のうち、この階段の条件に当たるものを、設置の対象にしています。この号に、延べ面積の基準は付いていません。
設置する場合の基準にも、特別な定めがあります。煙感知器(光電式分離型感知器を除く)のうち、階段と傾斜路に設けるものは、通常は垂直距離15メートル(3種の感知器は10メートル)につき1個以上ですが、特定一階段等防火対象物に存するものは、1種または2種の感知器を垂直距離7.5メートルにつき1個以上設けます(消防法施行規則第23条第4項第7号ヘ)。
受信機(感知器の信号を受ける装置)の地区音響停止スイッチ(地区音響装置の鳴動を止めるスイッチ)を設ける場合も、特定一階段等防火対象物には定めがあります。停止状態にある間に受信機が火災信号を受信したときは、そのスイッチが一定時間以内に自動的に地区音響装置を鳴動させる状態に移行するものでなければなりません(消防法施行規則第24条第2号ハ)。
スプリンクラー設備などを設置したときに自動火災報知設備を設置しないことができる例外(消防法施行令第21条第3項)からは、(一)〜(四)項、(五)項イ、(六)項、(九)項イなどの防火対象物またはその部分が除かれます(消防法施行規則第23条第2項)。階段の条件に当たる建物は、この用途の部分が避難階以外の階にあるため、スプリンクラー設備を設置しても、自動火災報知設備が不要になるわけではありません。
設置基準の全体は、下の記事で項ごとに説明しています。階段の条件に当たるかどうかが分からない場合は、管轄の消防本部に確認してください。
くわしく知りたい方へ

5. まとめ
覚えておきたいポイント
・「特定一階段等防火対象物」は、消防法施行規則が自動火災報知設備の煙感知器(光電式分離型感知器を除く)の基準で使う用語です。
・階段の条件は、(一)〜(四)項、(五)項イ、(六)項、(九)項イの用途の部分が、避難階以外の階(1階と2階を除く)にあり、避難階または地上に直通する階段が2以上ないことです。
・階段が屋外に設けられ、または避難上有効な構造を有するときは、1以上で足ります。避難上有効な構造は、避難階段(消防庁長官が定める部分を有する屋内のもの)または特別避難階段です。
・防火管理者を定める建物(消防法第8条第1項の防火対象物)が条件に当たると、収容人員が300人未満でも、防火対象物点検の対象になります。点検は1年に1回です。
・条件に当たると、延べ面積の基準に関係なく、自動火災報知設備の設置が必要になります。階段の煙感知器は、垂直距離7.5メートルにつき1個以上(1種または2種)です。
・階段に関する定めは、ほかにもあります(消防法施行令第35条・第36条)。
・不明な場合は、管轄の消防本部に確認してください。
※本記事は一般的な情報提供を目的としており、個別の建物や店舗への適用を保証するものではありません。実際の取り扱いは、管轄の消防本部に確認してください。

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