消防法令手続きから設備点検、防火管理サポートまでワンストップで支援

圧縮アセチレンガス等の貯蔵・取扱い届出とは。対象の物質と数量、届出が要らない場合を、消防法第9条の3から解説

圧縮アセチレンガス等の貯蔵・取扱い届出とは。対象の物質と数量、届出が要らない場合を、消防法第9条の3から解説

ガスのボンベや薬品、資材を置いている事業所で、この量でも消防への届出が要るのでしょうか。圧縮アセチレンガスや液化石油ガスなどを一定の数量以上貯蔵し、または取り扱うときは、消防法第9条の3により、始める前の届出が必要です。押さえておきたいのは、対象が物質ごとに数量で定められていて、危険物の指定数量とは別の手続きになっている点です。数量の例は仮の数値で、実際の判定ではありません。条例の例は今回読んだ現行の火災予防条例で、条例は消防本部ごとに異なる場合があります。この記事を読むと、届出の対象になる物質と数量、届出が要らない場合、届出書の根拠について、条文に沿って知ることができます。

目次

1. 届出の根拠は、消防法第9条の3

この届出は、市町村の条例ではなく、消防法そのものに定められています。第9条の3第1項は、届出をする人、時期、届出先を、一つの文で定めています。

圧縮アセチレンガス、液化石油ガスその他の火災予防又は消火活動に重大な支障を生ずるおそれのある物質で政令で定めるものを貯蔵し、又は取り扱う者は、あらかじめ、その旨を所轄消防長又は消防署長に届け出なければならない。

(消防法第9条の3第1項)

この文が定めている点は、4つあります。

  • 対象は、政令で定める物質です。法律の本文は、圧縮アセチレンガスと液化石油ガスを例に挙げ、そのほかの物質と数量を政令に任せています。
  • 届け出る人は、その物質を「貯蔵し、又は取り扱う者」です。
  • 時期は「あらかじめ」、つまり貯蔵や取扱いを始める前です。
  • 届出先は、所轄の消防長または消防署長です。

貯蔵や取扱いをやめるときも、届出が必要です。第2項が「前項の規定は、同項の貯蔵又は取扱いを廃止する場合について準用する」と定めています(消防法第9条の3第2項)。「準用する」とは、前項の規定を、廃止の場合にも同じように当てはめるという意味です。

危険物との違いにも触れておきます。危険物の品名を並べた消防法別表第一には、圧縮アセチレンガス、液化石油ガス、無水硫酸、生石灰の名前はありません(消防法別表第一)。指定数量以上の危険物は、貯蔵所以外の場所で貯蔵することができません(消防法第10条第1項)。品名や指定数量が異なる危険物を同じ場所で貯蔵するときは、それぞれの数量を指定数量で割った商を足し合わせる定めもあります(消防法第10条第2項)。第9条の3の届出は、これらとは別の条文で、物質ごとに数量を定めた手続きです。

市町村の条例を根拠とする届出は、さらに別の手続きです。火を使用する設備の設置届出が、その一例です。指定数量の5分の1以上指定数量未満の危険物などの届出も、条例に定められています(現行の条例第46条第1項)。

2. 届出の対象になる物質と数量

法律は、圧縮アセチレンガスと液化石油ガスを名前で挙げたうえで、「その他」の物質を政令に任せています。その政令にあたる危険物の規制に関する政令の第1条の10が、対象の物質と数量を定めています。物質は6つの号に分かれ、数量はいずれも「以上」です(危険物の規制に関する政令第1条の10第1項)。法第9条の3にいう「政令で定める物質」は、この6つの号がすべてです。

物質 数量
圧縮アセチレンガス 40キログラム
無水硫酸 200キログラム
液化石油ガス 300キログラム
生石灰(酸化カルシウム80パーセント以上を含有するもの) 500キログラム
毒物及び劇物取締法の毒物のうち、別表第一に掲げる物質 物質ごとに別表第一が定める数量
毒物及び劇物取締法の劇物のうち、別表第二に掲げる物質 物質ごとに別表第二が定める数量

(危険物の規制に関する政令第1条の10第1項第1号〜第6号)

数量は「以上」ですから、表の数量ちょうどの場合も対象です。たとえば圧縮アセチレンガスが40キログラムなら対象になり、30キログラムなら、この政令が定める数量には達しません。生石灰は、酸化カルシウムを80パーセント以上含有するものが対象で、含有率が低いものは第4号の生石灰にはあたりません。

数量の単位はキログラムです。ボンベの本数や容器の大きさではなく、物質の重さで見ます。第1条の10は、物質ごとに号を分けて数量を定めているため、扱っている物質の名前を、表と照らして確かめます。

屋外に並ぶガス容器

3. 毒物・劇物は、別表に挙がった物質が対象

毒物及び劇物取締法の毒物・劇物であれば何でも対象になる、というわけではありません。対象は、毒物及び劇物取締法の毒物のうち、危険物の規制に関する政令の別表第一に挙がった物質(第5号)と、劇物のうち別表第二に挙がった物質(第6号)です。数量は、別表が物質ごとに定めています(危険物の規制に関する政令第1条の10第1項第5号・第6号)。ここでいう別表第一・別表第二は、毒物及び劇物取締法の別表ではなく、危険物の規制に関する政令自身の別表です。第1章で触れた消防法別表第一(危険物の品名)とも別のものです。

区分 別表に挙がった物質 数量
毒物(別表第一) シアン化水素、シアン化ナトリウム、水銀、セレン、ひ素、ふつ化水素、モノフルオール酢酸 それぞれ30キログラム
劇物(別表第二) アンモニア、塩化水素、クロルスルホン酸、クロルピクリン、クロルメチル、クロロホルム、けいふつ化水素酸、四塩化炭素、臭素、発煙硫酸、ブロム水素、ブロムメチル、ホルムアルデヒド、モノクロル酢酸、よう素、硫酸、りん化亜鉛 それぞれ200キログラム

(危険物の規制に関する政令別表第一、別表第二)

硫酸は劇物の別表第二に、無水硫酸は前の章の第2号に、それぞれ挙がっています。数量はどちらも200キログラムですが、挙がっている場所が違う別の物質です。

別表には、もう一つ項目があります。毒物の別表第一の(八)と、劇物の別表第二の(十八)で、「水又は熱を加えること等により、人体に重大な障害をもたらすガスを発生する等消火活動に重大な支障を生ずる物質で総務省令で定めるもの」としています。数量も総務省令で定める数量です。表に物質名が挙がっていなくても、この項目に当たる場合があるため、毒物・劇物を扱う事業所は、扱う物質が別表に挙がっているかを、別表の原文と照らして確かめます。

4. 届出が要らない場合

第9条の3第1項には、ただし書があります。

ただし、船舶、自動車、航空機、鉄道又は軌道により貯蔵し、又は取り扱う場合その他政令で定める場合は、この限りでない。

(消防法第9条の3第1項ただし書)

ただし書は、船舶、自動車、航空機、鉄道または軌道による貯蔵や取扱いを、法律の文言で除いています。さらに「その他政令で定める場合」を、政令に任せています。その場合を定めているのが、危険物の規制に関する政令第1条の10第2項です。

第2項が挙げているのは、高圧ガス保安法、ガス事業法、液化石油ガスの保安の確保及び取引の適正化に関する法律、水素等供給等促進法の規定により、消防庁長官または消防長に通報があった施設で、液化石油ガスを貯蔵し、または取り扱う場合です。その施設で液化石油ガスの貯蔵や取扱いをやめる場合も、廃止の届出は要りません(危険物の規制に関する政令第1条の10第2項)。

この例外は、液化石油ガスについてだけです。圧縮アセチレンガス、無水硫酸、生石灰、毒物・劇物には、第2項の例外は当てはまりません。ただし書のうち、船舶、自動車、航空機、鉄道または軌道による貯蔵や取扱いの範囲について、政令の第1条の10が定めているのは、この第2項の場合までです。

倉庫に保管された資材

5. 数量の数え方と、届出の時期

条文の表現は「貯蔵し、又は取り扱う」です。置いておく場合と、使っている場合の両方を含み、保管しているだけでも、作業で使っているだけでも、数量以上であれば対象になります。第9条の3は、貯蔵や取扱いの期間で対象を区切っていません(消防法第9条の3第1項)。

数量は、政令の第1条の10が、物質ごとに号を分けて定めています。容器や置き場所が複数ある場合や、同じ場所に別の物質もある場合に、どの範囲の量を足して数えるかは、条文には書かれていません。第1条の10が定めているのは、物質ごとの数量(以上)までです(危険物の規制に関する政令第1条の10第1項)。実際の貯蔵や取扱いの状況に当てはめて判断する部分で、不明な場合は、管轄の消防本部に確認してください。

届出の時期は、「あらかじめ」です。条文が定めているのは「あらかじめ」までで、何日前までという日数は定めていません(消防法第9条の3第1項、危険物の規制に関する規則第1条の5)。貯蔵や取扱いを始めるときだけでなく、やめるときも、届出の対象です(消防法第9条の3第2項)。

6. 届出書の様式と提出先、届出を怠った場合

届出書の様式は、危険物の規制に関する規則第1条の5が定めています。

法第九条の三の規定による貯蔵又は取扱いの届出は、別記様式第一の届出書によつて行わなければならない。

(危険物の規制に関する規則第1条の5)

危険物の規制に関する規則に別記様式が定められています。ただし、実際に使う様式は消防本部ごとに異なるのが一般的です。使う様式は、管轄の消防本部に確認してください。

第1条の5が定めているのは、届出書の様式までです。提出先は、法の文言では「所轄消防長又は消防署長」です。物質の名称、数量、貯蔵や取扱いの場所など、届出書に書く内容は、使う様式の欄に沿って整えることになります。

消防法第44条は、第9条の3第1項(同条第2項において準用する場合を含む。)の規定による届出を怠った者を、30万円以下の罰金または拘留に処すると定めています(消防法第44条第8号)。始める前の届出も、やめるときの届出も、法律が義務としている手続きです。

届出の書類を確認する机

7. 防火対象物の定期点検とのつながり

この届出は、届出をして終わりではなく、防火対象物の定期点検とつながっています。一定の防火対象物の管理について権原を有する者は、防火対象物点検資格者に、定期に点検させ、結果を消防長または消防署長に報告します。点検では、防火管理上必要な業務、消防の用に供する設備の設置と維持、その他火災の予防上必要な事項が、総務省令で定める基準(点検基準)に適合しているかどうかを見ます(消防法第8条の2の2第1項)。

その点検基準の一つに、この届出があります。圧縮アセチレンガス、液化石油ガスその他の火災予防または消火活動に重大な支障を生ずるおそれのある物質で、危険物の規制に関する政令第1条の10第1項に規定するものを貯蔵し、または取り扱っている場合(法第9条の3第1項ただし書に規定する場合を除く)には、その旨の届出がされていることです(消防法施行規則第4条の2の6第1項第6号)。

つまり、第2章と第3章で見た物質と数量は、届出の要否だけでなく、点検基準が対象とする物質の範囲でもあります。除かれるのも、第9条の3第1項ただし書の場合で、第4章と同じです。点検の対象になる防火対象物かどうかは、別の記事で説明しています。

8. まとめ

覚えておきたいポイント

・圧縮アセチレンガス、液化石油ガスなどの貯蔵・取扱いの届出は、消防法第9条の3に定められています。

・届け出る人は貯蔵し、又は取り扱う者、時期はあらかじめ、届出先は所轄消防長又は消防署長です。廃止の場合にも届出が必要です。

・対象は、圧縮アセチレンガス40キログラム以上、無水硫酸200キログラム以上、液化石油ガス300キログラム以上、生石灰(酸化カルシウム80パーセント以上)500キログラム以上です(危険物の規制に関する政令第1条の10)。

・毒物・劇物は、政令の別表第一・別表第二に挙がった物質が、物質ごとの数量以上で対象です。

・船舶、自動車、航空機、鉄道または軌道による貯蔵・取扱いなどは、届出が要らない場合です。政令で定める例外は液化石油ガスだけです。

・届出書は、危険物の規制に関する規則の別記様式第一が定められていますが、実際に使う様式は消防本部ごとに異なるのが一般的です。

・届出を怠った者は、30万円以下の罰金または拘留に処すると定められています(消防法第44条第8号)。

・不明な場合は、管轄の消防本部に確認してください。

複雑な届出は、専門家に依頼する方法もあります

届出書など、書類の作成や提出が難しいと感じるときは、行政書士などの専門家に依頼するのも一つの方法です。なお、貯蔵・取扱いが届出の対象に当たるかは、管轄の消防本部に確認します。依頼すると、たとえば次のような点で、手間を減らせる場合があります。

・届出書の書式の選び方を相談できるため、書類を作り直す手間を減らせる場合があります。

・添える書面の確認を任せられるため、書類の不足や取り違えに気づきやすくなる場合があります。

・提出までの段取りを整理できるため、役所に出向く回数や、書類を何度も見直す手間を減らせる場合があります。

どの書類を任せられるかは、あらかじめ確認します。相談するかどうかは、ご自身で判断してください。

※本記事は一般的な情報提供を目的としており、個別の建物や店舗への適用を保証するものではありません。実際の取り扱いは、管轄の消防本部に確認してください。

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

コメント

コメントする

目次