危険物の量を少し変えるだけなら、役所への手続きはいらないのでしょうか。許可を受けた製造所・貯蔵所・取扱所では、設備をそのままにして危険物の品名や数量を変えるときも、事前の届出が求められています(消防法第11条の4第1項)。分かれ目は、変えるのが設備なのか、中身である品名・数量・倍数だけなのかです。計算に出す量は、仮の数値です。この記事を読むと、届出の対象と期限、倍数の計算、設備を変える場合との違い、倍数の変更が予防規程などにどう関わるかについて、条文に沿って知ることができます。
1. 設備を変えずに品名・数量・倍数を変えるときは、10日前までに届出
製造所、貯蔵所、取扱所(以下、製造所等)の位置、構造、設備を変更しないで、そこで貯蔵し、取り扱う危険物の品名、数量、指定数量の倍数を変えようとする者は、変更しようとする日の十日前までに、その旨を市町村長等に届け出なければなりません(消防法第11条の4第1項)。設備はそのままで、中身だけを変える場合の手続きです。
市町村長等とは、製造所等の設置を許可した市町村長または都道府県知事(移送取扱所では総務大臣の場合もあります)のことです。消防本部と消防署を置く市町村の区域にある製造所等は市町村長、それ以外の市町村の区域にある製造所等は都道府県知事が、許可の窓口になります。配管で危険物を移送する移送取扱所は別の定めがあり、二以上の都道府県の区域にわたって設置されるものは、総務大臣が許可の窓口です(消防法第11条第1項、第2項)。
設置の許可を申請するときの書類にも、危険物の類、品名、最大数量と、指定数量の倍数を記載する定めがあります(危険物の規制に関する政令第6条第1項第4号・第5号)。
この届出の対象は製造所等です。指定数量未満の危険物を置く場所の変更は、市町村の条例で扱われます。今回読んだ現行の火災予防条例では、貯蔵や取扱いの内容を変更し、または廃止する場合も、あらかじめ消防長への届出が必要です(条例第46条第2項)。条例は消防本部ごとに異なる場合があります。

2. 倍数は、数量を指定数量で割った値
倍数とは、製造所等で貯蔵し、取り扱う危険物の数量を、その危険物の指定数量で割って得た値です。品名または指定数量が違う危険物を2つ以上扱う場合は、それぞれの数量を指定数量で割った値の和が倍数になります(消防法第11条の4第1項)。
指定数量は、危険物の類、品名、性質に応じて、危険物の規制に関する政令の別表第三が定めています(危険物の規制に関する政令第1条の11)。第四類では、第一石油類の非水溶性液体が200リットル、第二石油類の非水溶性液体が1,000リットル、水溶性液体が2,000リットル、第三石油類の非水溶性液体が2,000リットルです(危険物の規制に関する政令別表第三)。品名は、消防法別表第一に掲げる品名です(消防法第10条第2項)。
例1 数量だけを変える 第二石油類の非水溶性液体(指定数量1,000リットル)。
変更前 1,500リットル ÷ 1,000 = 1.5
変更後 2,500リットル ÷ 1,000 = 2.5
数量と倍数が変わるので、変更の届出の対象です。
例2 品名を変える 変更前は第二石油類の非水溶性液体(指定数量1,000リットル)、変更後は第三石油類の非水溶性液体(指定数量2,000リットル)で、いずれも2,000リットルとします。
変更前 2,000 ÷ 1,000 = 2
変更後 2,000 ÷ 2,000 = 1
数量は同じでも、品名が変わり、倍数も変わります。
例2のように、数量が同じでも、品名が変われば指定数量が変わり、倍数も変わります。「量は変えていない」と考えて見落としやすい点です。
2つ以上の危険物を扱う場合は、和で考えます。
例3 一方だけ量を増やす 第一石油類の非水溶性液体(指定数量200リットル)と、第二石油類の非水溶性液体(指定数量1,000リットル)を扱っているとします。
変更前 400 ÷ 200 = 2、2,000 ÷ 1,000 = 2。倍数は 2 + 2 = 4
変更後 第一石油類を600リットルにすると、600 ÷ 200 = 3。倍数は 3 + 2 = 5
第二石油類は変わらなくても、第一石油類の量が増えるので、全体の倍数は4から5に変わります。
例4 同じ品名で性状が変わる 第二石油類を2,000リットル扱っているとします。
非水溶性液体(指定数量1,000リットル)なら 2,000 ÷ 1,000 = 2
水溶性液体(指定数量2,000リットル)なら 2,000 ÷ 2,000 = 1
同じ品名でも、水溶性か非水溶性かで指定数量が違い、倍数が変わります。

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3. 品名の「みなし」。含有物品の読み方
消防法第11条の4には、第2項があります。「前各号に掲げるもののいずれかを含有するもの」という品名は、含有されている品名が違えば、別々の品名とみなされる、という定めです。
消防法別表第一は、第一類(酸化性固体)の品名として、塩素酸塩類、過塩素酸塩類などを挙げ、その最後に「前各号に掲げるもののいずれかを含有するもの」(第十一号)を置いています。第二類は第八号、第三類は第十二号、第五類は第十一号、第六類は第五号が、同じ形の品名です。第2項は、これらの品名の扱いを定めています。
前項の場合において、別表第一の品名欄に掲げる物品のうち同表第一類の項第十一号、第二類の項第八号、第三類の項第十二号、第五類の項第十一号又は第六類の項第五号の危険物は、当該物品に含有されている当該品名欄の物品が異なるときは、それぞれ異なる品名の危険物とみなす。(消防法第11条の4第2項)
たとえば、第一類で、塩素酸塩類を含有する物品と、過塩素酸塩類を含有する物品は、それぞれ異なる品名の危険物とみなされます。含有するものが塩素酸塩類のものから過塩素酸塩類のものに替わる場合は、品名が変わったものとして扱われます(仮の例です)。
第1項は、品名の変更を届出の対象としています。同じ類の危険物でも、含有する物品が変われば品名の変更に当たるため、替えるときは届出の対象かを確かめます。第2項が挙げているのは、第一類、第二類、第三類、第五類、第六類の品名で、第四類(特殊引火物、第一石油類など)は含まれません。
4. 設備を変えるなら、届出ではなく変更の許可
届出で済むのは、位置、構造、設備を変えない場合です。位置、構造又は設備を変更しようとする者は、設置のときと同じように、市町村長または都道府県知事の許可を受けなければなりません(消防法第11条第1項後段)。
| 届出(法第11条の4) | 変更許可(法第11条第1項後段) | |
|---|---|---|
| 変えるもの | 品名、数量、指定数量の倍数(設備は変えない) | 位置、構造、設備 |
| 手続き | 変更しようとする日の十日前までに届出 | 許可を受ける |
| 変更後の使用 | 設備の工事を伴わない | 完成検査で技術上の基準に適合と認められた後でなければ使えない(法第11条第5項) |
品名や数量を変える工事で、設備にも手を入れることになる場合は、届出ではなく許可の手続きになります。どこからが「位置、構造又は設備の変更」に当たるかは、具体的な工事の内容で決まります。不明な場合は、管轄の消防本部に確認してください。
許可を申請するときは、申請書に、氏名または名称と住所、製造所等の別と区分、設置の場所、変更の内容、変更の理由を記載し、変更の内容に関する図面などを添えます(危険物の規制に関する政令第7条)。申請書は別記様式第五または第六により(危険物の規制に関する規則第5条第1項)、図面には、事業所内の主要な建築物の配置、周囲の状況、変更に係る部分の構造などを記載します(同条第2項)。変更に係る部分を記載した構造及び設備明細書なども、添付書類に挙げられています(同条第3項第1号)。
許可を受けて工事を終えたら、完成検査を受けます。完成検査を受ける者は、その旨を市町村長等に申請し(危険物の規制に関する政令第8条第1項)、技術上の基準に適合していると認められると、完成検査済証が交付されます(同条第3項)。完成検査を受け、基準に適合していると認められた後でなければ、変更した製造所等は使えません(消防法第11条第5項)。
ただし、変更の工事に係る部分以外の部分の全部または一部について、市町村長等の承認を受けたときは、完成検査を受ける前でも、承認を受けた部分を仮に使うことができます(消防法第11条第5項ただし書)。この仮使用の承認は、別記様式第七の申請書に、変更の工事に際して講ずる火災予防上の措置を記載した書類を添えて申請します(危険物の規制に関する規則第5条の2)。変更の許可と仮使用の承認は、同時に申請することもできます(危険物の規制に関する規則第5条の3)。
5. 届出書と提出
品名、数量、指定数量の倍数の変更の届出は、危険物の規制に関する規則が、別記様式第十六の届出書で行うと定めています(危険物の規制に関する規則第7条の3)。提出部数は2部です(危険物の規制に関する規則第9条)。ただし、実際に使う様式は消防本部ごとに異なるのが一般的です。使う様式は、管轄の消防本部に確認してください。
倍数が一定の区分以上の製造所等では、届出を受理した市町村長等が、都道府県公安委員会などに通報します(消防法第11条の4第3項、第11条第7項、危険物の規制に関する政令第7条の3、第7条の4)。通報するのは市町村長等で、届出をする側が別に行う手続きではありません。通報の対象になる製造所等の区分(令第7条の3)は、第7章で説明する予防規程の対象にも使われています。

6. 仮貯蔵・仮取扱いとの関係
変更の届出と混同しやすい手続きに、仮貯蔵・仮取扱いの承認があります。
指定数量以上の危険物は、貯蔵所以外の場所で貯蔵できず、製造所、貯蔵所、取扱所以外の場所で取り扱えません。ただし、所轄の消防長または消防署長の承認を受けて、10日以内の期間、仮に貯蔵し、または取り扱う場合は、この限りではありません(消防法第10条第1項)。この承認の申請は、別記様式第一の二の申請書を、所轄の消防長または消防署長に提出して行います(危険物の規制に関する規則第1条の6)。
二つの手続きは、対象も窓口も別です。
- 仮貯蔵・仮取扱いは、製造所等以外の場所で、指定数量以上の危険物を10日以内の期間だけ扱うための承認です。申請先は所轄の消防長または消防署長です。
- 変更の届出は、許可を受けた製造所等で、設備を変えずに品名、数量、倍数を変えるときの届出です。届出先は市町村長等です。
どちらの手続きを考えるかは、まず、危険物を置く場所が、許可を受けた製造所等かどうかで分かれます。仮貯蔵・仮取扱いの承認については、別の記事で説明しています。
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7. 予防規程への影響
倍数は、予防規程を定める施設の区切りにも使われます。倍数が変わると、その施設に必要な手続きが変わる場合があります。
まず予防規程です。製造所等の所有者、管理者または占有者は、政令で定める製造所等では、火災を予防するための予防規程を定め、市町村長等の認可を受けなければなりません。これを変更するときも、同様です(消防法第14条の2第1項)。
予防規程を定める製造所等は、危険物の規制に関する政令第7条の3の各号に掲げる製造所等と給油取扱所のうち、総務省令で定めるもの以外です(危険物の規制に関する政令第37条)。各号の製造所等は、指定数量の倍数が10以上の製造所、150以上の屋内貯蔵所、200以上の屋外タンク貯蔵所、100以上の屋外貯蔵所、移送取扱所、10以上の一般取扱所(一部を除く)です。前の章の通報の対象も、この区分です(危険物の規制に関する政令第7条の3)。総務省令で除かれるのは、鉱山保安法の保安規程や火薬類取締法の危害予防規程を定めている製造所等と、自家用の給油取扱所(屋内給油取扱所を除く)です(危険物の規制に関する規則第61条、第9条の2、第28条)。
予防規程に定める事項には、保安教育、巡視・点検・検査、危険物の取扱い作業の基準、危険物の保安に関する記録、製造所等の位置、構造、設備を明示した書類と図面の整備などがあります(危険物の規制に関する規則第60条の2第1項)。倍数を増やす変更では、変更の届出のほかに、予防規程を定める区切りに当たるかどうかも、あわせて確認します。
8. まとめ
覚えておきたいポイント
・製造所・貯蔵所・取扱所で、設備を変えずに、品名・数量・指定数量の倍数を変えるときは届出が必要です。
・期限は、変更しようとする日の10日前までです。
・倍数は、数量を指定数量で割った値で、品名が違う危険物は和にします。
・数量が同じでも、品名や性状が変われば倍数が変わることがあります。
・第一類などの含有物品は、含有する品名が違えば、別の品名とみなされます。
・位置・構造・設備を変えるときは、届出ではなく変更の許可です。工事のあとは完成検査を受けます。
・仮貯蔵・仮取扱いの承認は、製造所等以外の場所で10日以内に限るもので、変更の届出とは別の手続きです。
・倍数は、予防規程を定める施設の区切りにも関わります。
・不明な場合は、管轄の消防本部に確認してください。
複雑な届出は、専門家に依頼する方法もあります
届出書など、書類の作成や提出が難しいと感じるときは、行政書士などの専門家に依頼するのも一つの方法です。なお、施設がどの区分に当たるかは、管轄の消防本部に確認します。依頼すると、たとえば次のような点で、手間を減らせる場合があります。
・届出書の書式の選び方を相談できるため、書類を作り直す手間を減らせる場合があります。
・添える書面の確認を任せられるため、書類の不足や取り違えに気づきやすくなる場合があります。
・提出までの段取りを整理できるため、役所に出向く回数や、書類を何度も見直す手間を減らせる場合があります。
どの書類を任せられるかは、あらかじめ確認します。相談するかどうかは、ご自身で判断してください。
※本記事は一般的な情報提供を目的としており、個別の建物や店舗への適用を保証するものではありません。実際の取り扱いは、管轄の消防本部に確認してください。

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