ストーブやボイラー、厨房設備を新しく据える、または入れ替えることになりました。壁や置いてある物からどれだけ離せばよいのかを、設置の前に確かめたくなります。火を使う設備は、壁や可燃物から離して置くのが原則ですが、壁の造りによっては、その距離を保つことを要しない場合があります。例にするのは、今回読んだ現行の火災予防条例です。数値はこの条例の原文のとおりで、条例は消防本部ごとに異なる場合があります。この記事を読むと、その条件と設備ごとの距離について、省令と現行の火災予防条例の条文に沿って知ることができます。
1. 火を使う設備は、建物と可燃物から離して置くのが原則
火を使う設備の位置、構造、管理は、市町村の条例で定められます(消防法第9条)。条例を作るときの基準は、消防法施行令と、総務省令である「対象火気設備等の位置、構造及び管理並びに対象火気器具等の取扱いに関する条例の制定に関する基準を定める省令」(以下「基準省令」)に置かれています。
基準の出発点は、消防法施行令の定めです。
「対象火気設備等は、防火上支障がないものとして総務省令で定める場合を除くほか、建築物その他の土地に定着する工作物(次条第一項第一号において「建築物等」という。)及び可燃物までの間に、対象火気設備等の種類ごとに総務省令で定める火災予防上安全な距離を保つ位置に設けること。」(消防法施行令第5条第1項第1号)
つまり、設備は、建築物等と可燃物から、種類ごとに決まった安全な距離を保って設けます。「防火上支障がないものとして総務省令で定める場合」は、この距離の基準から外れる場合です。その中身は、基準省令に定められています(基準省令第4条)。
安全な距離そのものは、別表第一の離隔距離、電気を熱源とする設備の別表第二の離隔距離、消防庁長官が定めるところにより得られる距離のうち、消防長または消防署長が認める距離以上と定められています(基準省令第5条)。
現行の条例は、この枠に沿っています。別表第3の距離と、対象火気設備等及び対象火気器具等の離隔距離に関する基準(平成14年消防庁告示第1号)により得られる距離のうち、火災予防上安全な距離として消防長が認める距離以上を保つよう定めています(条例第3条第1項第1号)。火災予防規則は、炉、ふろがま、温風暖房機、厨房設備、ボイラー、ストーブ、乾燥設備、簡易湯沸設備、給湯湯沸設備、ヒートポンプ冷暖房機について、この距離を「いずれか短い距離」としています(火災予防規則第10条)。

2. 距離を保つことを要しない場合の条件
条件は、条例を定めるときの基準である基準省令に置かれています。
「令第五条第一項第一号の防火上支障がないものとして総務省令で定める場合は、不燃材料で有効に仕上げをした建築物等の部分の構造が耐火構造であって、間柱、下地その他主要な部分を準不燃材料で造ったものである場合又は当該建築物等の部分の構造が耐火構造以外の構造であって、間柱、下地その他主要な部分を不燃材料で造ったもの(有効に遮熱できるものに限る。)である場合とする。」(基準省令第4条)
現行の条例にも、同じ内容が括弧書きで定められています(条例第3条第1項第1号)。
条件を分けると、どちらの場合も、「不燃材料で有効に仕上げをした建築物等の部分」であることが前提です。「建築物等」は、建築物その他の土地に定着する工作物です(消防法施行令第5条第1項第1号)。そのうえで、構造によって二つに分かれます。
- 構造が耐火構造の場合は、間柱、下地その他主要な部分を準不燃材料で造ったもの。
- 構造が耐火構造以外の場合は、間柱、下地その他主要な部分を不燃材料で造ったもので、有効に遮熱できるもの。
耐火構造のときは準不燃材料でよく、耐火構造でないときは不燃材料で、さらに遮熱の条件が付く、という違いがあります。表面を不燃材料で仕上げただけでは、条件を満たしません。間柱、下地その他主要な部分まで、条文が条件を置いているからです。
不燃材料、準不燃材料、耐火構造の語は、建築基準法とその施行令に規定されています(基準省令第2条第3号〜第5号)。「有効に」仕上げているか、「有効に遮熱できる」かについて、条文が定めているのは、この「有効に」という要件までです。個々の壁が当たるかどうかは、壁の材料と造りの確認が前提になります。不明な場合は、管轄の消防本部に確認してください。
3. 「不燃」欄の短い距離とは別のしくみ
距離の表には、「不燃以外」と「不燃」の2つの欄がある設備があります。この「不燃」欄の距離と、「距離を保つことを要しない場合」は、別のしくみです。
条例の別表第3の備考は、2つの欄の意味を定めています。
「『不燃以外』欄は、対象火気設備等又は対象火気器具等から不燃材料以外の材料による仕上げ若しくはこれに類似する仕上げをした建築物等の部分又は可燃性の物品までの距離をいう。」(条例別表第3 備考2)
「『不燃』欄は、対象火気設備等又は対象火気器具等から不燃材料で有効に仕上げをした建築物等の部分又は防熱板までの距離をいう。」(条例別表第3 備考3)
たとえば、炭火焼き器(木炭)の距離は、不燃以外の欄が上方100センチメートル、側方・前方・後方が各50センチメートルです。不燃の欄は、上方80センチメートル、側方・後方が各30センチメートルで、前方は「―」と表記されています(条例別表第3 厨房設備)。不燃材料で有効に仕上げた壁なら、離す距離が短くなります。
これに対して、「要しない場合」に当たると、距離の基準そのものから外れます(条例第3条第1項第1号の「要しない場合を除き」)。距離が短くなる(不燃欄)ことと、距離を保つことを要しないこと(要しない場合)は、条文の上で別の扱いです。
くわしく知りたい方へ
4. 設備ごとの距離
別表第3は、設備と条件ごとに、上方・側方・前方・後方の距離をセンチメートルで定めています。主な設備から、数値が並んで読める行を抜粋します。ほかの条件の行も別表にあります。
| 設備と条件 | 欄 | 上方 | 側方 | 前方 | 後方 |
|---|---|---|---|---|---|
| 炉(開放炉、使用温度800℃以上) | 区別なし | 250 | 200 | 300 | 200 |
| 炉(開放炉以外、使用温度300℃未満) | 区別なし | 100 | 50 | 100 | 50 |
| 厨房設備(固体燃料の炭火焼き器、木炭) | 不燃以外 | 100 | 50 | 50 | 50 |
| 厨房設備(同上) | 不燃 | 80 | 30 | ― | 30 |
| ストーブ(移動式を除く。液体燃料、半密閉式、自然対流型、全周から熱を放散、39kW以下) | 不燃以外 | 150 | 100 | 100 | 100 |
| ストーブ(同上) | 不燃 | 120 | 100 | ― | 100 |
| ボイラー(液体燃料、入力12kW以下) | 不燃以外 | 40 | 4.5 | 15 | 4.5 |
| ボイラー(同上) | 不燃 | 20 | 1.5 | ― | 1.5 |
| 温風暖房機(液体燃料、半密閉式、強制対流型、温風を前方向に吹き出す、26kW以下) | 不燃以外 | 100 | 15 | 150 | 15 |
| 乾燥設備(衣類乾燥機を除く。内部容積が1立方メートル以上) | 区別なし | 100 | 50 | 100 | 50 |
(現行の火災予防条例 別表第3)
炉は、使用温度と、開放炉かどうかで分かれます。ストーブやボイラーは、使う燃料、機器の形、入力で行が分かれ、同じ設備でも条件によって数値が大きく違います。乾燥設備のうち、気体燃料の衣類乾燥機(開放式、5.8kW以下)は別の行で、不燃以外の欄が上方15、側方4.5、前方4.5、後方4.5センチメートル、不燃の欄が上方15、側方4.5、前方「―」、後方4.5センチメートルです(条例別表第3 乾燥設備)。
実際に保つ距離は、この表の数値で決まるとは限りません。条例は、表の距離と告示で得られる距離のうち、消防長が認める距離以上と定めていて、火災予防規則は、その距離をいずれか短い距離としています(条例第3条第1項第1号、火災予防規則第10条)。

5. 設備によって、距離の定め方が違う
設備ごとに、距離の定めの置き方が違う場合があります。
壁付暖炉は、炉の距離の基準が準用されず、独自の距離が定められています。背面と側面から壁等まで10センチメートル以上を保つ定めです。ただし、壁等が耐火構造で、間柱、下地その他主要な部分を準不燃材料で造ったものの場合は、この限りではありません(条例第6条第1項第1号、第2項)。
簡易サウナ設備と一般サウナ設備は、要しない場合を除き、建築物等と可燃性の物品から、離隔距離に関する基準により得られる距離以上を保つ定めです(条例第7条の2第1項第1号、第7条の3第1項第1号)。
風道や排気ダクトの距離には、別の例外があります。熱風炉の風道は、炉から防火ダンパーまでの部分と、防火ダンパーから2メートル以内の部分を、可燃性の部分や物品から15センチメートル以上離します。厚さ10センチメートル以上の金属以外の不燃材料で被覆する部分は、この限りではありません(条例第3条第1項第14号)。厨房設備の排気ダクト等も、可燃性の部分や物品との間に10センチメートル以上の距離を保ちます。金属以外の不燃材料で有効に被覆する部分は、この限りではありません(条例第3条の4第1項第1号ウ)。温風暖房機の風道には、距離を求める式が定められています(条例第3条の3第1項第2号)。
こうした被覆による例外は、壁等の構造に関する「要しない場合」の条件とは、別に定められています。
6. 火を使う器具の場合
ストーブ(移動式)、こんろ、こたつなど、火を使う器具にも、距離の基準があります。器具の種類や使用燃料ごとに、安全な距離を保つことが定められています(消防法施行令第5条の2第1項第1号)。
距離を保つことを要しない場合の条件も、設備と同じ内容です(基準省令第19条)。安全な距離は、別表第一の離隔距離、別表第二(電気)の離隔距離、消防庁長官が定めるところにより得られる距離のうち、消防長または消防署長が認める距離以上と定められています(基準省令第20条)。
条例の距離の基準は、液体燃料を使用する器具の定めに置かれていて、「火災予防上安全な距離を保つことを要しない場合を除き」と始まります(条例第18条第1項第1号)。固体燃料の器具と気体燃料の器具は、この距離の基準を準用しています(条例第19条第2項、第20条第2項)。
電気を熱源とする器具は、準用のしかたに例外があります。器具の表面に可燃物が触れても、その可燃物が発火するおそれのない器具には、距離の基準は準用されません。それ以外の電気を熱源とする器具には、距離の基準が準用されます(条例第21条第2項)。
器具の距離の例として、気体燃料の移動式ストーブ(開放式、バーナーが露出、全周放射型、7kW以下)は、不燃以外の欄が上方・側方・前方・後方とも100センチメートル、不燃の欄が80センチメートルです(条例別表第3 移動式ストーブ)。

7. 要しない場合でも残る基準と、消防長の特例、設置の届出
距離を保つことを要しない場合に当たっても、外れるのは、距離の基準だけです(条例第3条第1項第1号)。炉の例では、可燃物が落下したり接触したりするおそれのない位置に設ける基準や、避難の支障になる位置に設けない基準、管理の基準は、別に定められています(条例第3条第1項第2号・第4号、第2項)。
基準そのものを適用しない道も、別にあります。消防長が、設備の位置、構造、管理や周囲の状況から判断して、基準によらなくても火災予防上支障がないと認めるとき、または予想しない特殊の設備を用いて、同等以上の効力があると認めるときは、この節の規定は適用されません(条例第17条の3)。器具にも、同じ趣旨の定めがあります(条例第22条の2)。消防長がこれを適用しようとするときは、必要な事項について、資料を提出させ、または検査を行います(火災予防規則第15条)。
設備によっては、設置前の届出も必要です。熱風炉、多量の可燃性ガスまたは蒸気を発生する炉、据付面積2平方メートル以上の炉(個人の住居に設けるものを除く)のほか、厨房設備、温風暖房機、ボイラー、乾燥設備などが、あらかじめ消防長に届け出る対象に挙がっています(条例第44条第1項)。
入力の条件が付くのは、厨房設備(その入力と、同一厨房室内に設ける他の厨房設備の入力の合計が350キロワット以上)や、温風暖房機(入力70キロワット以上。風道を使用しないものは、劇場等とキャバレー等に設けるものに限る)、給湯湯沸設備(入力70キロワット以上)などです。ボイラーと乾燥設備には入力の条件がなく、個人の住居に設けるものなどが除かれています(条例第44条第1項)。
くわしく知りたい方へ
8. まとめ
覚えておきたいポイント
・火を使う設備は、建築物等と可燃物から、種類ごとに決まった安全な距離を保って設けます(消防法施行令第5条第1項第1号)。
・距離を保つことを要しない場合は、基準省令第4条に定められています。不燃材料で有効に仕上げをした建築物等の部分で、耐火構造なら間柱・下地その他主要な部分を準不燃材料で、耐火構造以外なら不燃材料(有効に遮熱できるもの)で造ったものです。
・表面の仕上げだけでは足りず、間柱、下地その他主要な部分まで条件があります。
・別表第3の「不燃」欄の短い距離は、距離が短くなる定めで、距離を保つことを要しない場合とは別のしくみです。
・実際に保つ距離は、別表第3の距離と告示で得られる距離のうち、消防長が認める距離以上です。火災予防規則は、設備の多くについていずれか短い距離としています。
・壁付暖炉やサウナ設備、風道・排気ダクトなど、設備ごとに距離の定め方が違う場合があります。
・器具にも、同じ内容の「要しない場合」が定められています(基準省令第19条)。
・不明な場合は、管轄の消防本部に確認してください。
※本記事は一般的な情報提供を目的としており、個別の建物や店舗への適用を保証するものではありません。実際の取り扱いは、管轄の消防本部に確認してください。

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