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消防設備点検はなぜ必要か。点検の根拠、種類、報告や命令に関する罰則をやさしく解説

消防設備点検はなぜ必要か。点検の根拠、種類、報告や命令に関する罰則をやさしく解説(イメージ)

店を借りたとき、事務所や工場を引き継いだときに、消防設備の点検の案内が届いて「これは自分がやるべきことなのか」と迷う場面があります。消防庁は、点検報告制度を、消火器や自動火災報知設備などの消防用設備等が「火災時にその機能を発揮することができるよう」、定期的な点検と報告を義務付けているものと説明しています。法律には、設備を設置して維持する義務と、定期の点検と報告の義務が、それぞれ定められています。点検と報告を義務付ける条文の主語は、建物の所有者・管理者・占有者といった「関係者」です(防火管理者の業務は別の定め)。点検は、建物の用途や広さなどによって、資格のある人に任せる場合と、関係者が自分で行う場合に分かれます。この記事では、点検が必要な法律上の根拠、点検の種類、だれが点検できるか、消防庁が注意を呼びかけている不適切な点検の4事例、そして報告や命令に関する罰則を順に説明します。飲食店や店舗、事務所、工場、施設など、消防用設備等を備えた建物を例として並べています。

廊下の壁に取り付けられた消火器のイメージ
目次

1. 点検が必要な理由。設置と維持の義務、定期の点検と報告の義務

点検が必要なのは、関係者に、消防用設備等を設置して維持する義務と、定期に点検して報告する義務があるからです。消防用設備等とは、消火器や自動火災報知設備、誘導灯など、消防のために建物に備える設備の総称です。正確には、消防の用に供する設備、消防用水、消火活動上必要な施設を指します(消防法第17条第1項)。

消防法は、学校、病院、工場、事業場、飲食店、旅館などの防火対象物(消防法の規制の対象になる建物など)のうち政令で定めるものの関係者に、消防用設備等を技術上の基準に従って「設置し、及び維持しなければならない」と定めています(消防法第17条第1項)。設置して終わりではなく、使える状態を保ち続けることまでが義務です。

これとは別に、関係者は、消防用設備等について、定期に点検し、その結果を消防長(消防本部の長)または消防署長(消防署の長)に報告しなければなりません(消防法第17条の3の3)。政令で、点検を要しない防火対象物が定められています(消防法施行令第36条第1項)。自分の建物が対象かは、管轄の消防本部に確認してください。消防庁の告示は、点検を、消防用設備等が技術上の基準に適合しているかどうかを確認することとしています(消防庁告示 平成16年第9号)。

消防庁は、点検報告制度を、設備が「火災時にその機能を発揮することができるよう」、関係者に定期的な点検の実施と消防署等への報告を義務付けているものと説明しています(消防庁「消防用設備等点検報告制度について」平成30年6月)。この制度は、昭和49年の消防法改正で創設され、昭和50年4月から施行されています。

条文のつながりを流れで示します。

1
設置
関係者は、基準に従って消防用設備等を設置します。設置したときの届出と検査は、別の手続です。
▼
2
維持
設置した設備を、使える状態に維持します(消防法第17条第1項)。
▼
3
点検と報告
定期に点検し、結果を消防長または消防署長に報告します(消防法第17条の3の3)。
▼
4
維持されていないと認めたとき
消防長または消防署長が維持されていないと認めたときは、必要な措置を命じることができます(消防法第17条の4第1項)。点検をすれば命令が出るわけではなく、維持されていないと認めたときに出る別の手続です。
▼
5
命令に違反
命令に違反して必要な措置をしなかった場合は、罰則の対象です(消防法第44条第12号)。

どの設備をどこに設置するかは、設備ごとの基準で決まります。消火器の設置基準。用途ごとの面積の基準と、階の条件をやさしく解説、自動火災報知設備の設置基準。消防法施行令別表第一の項ごとの延べ面積と、階・部分の基準、屋内消火栓設備の設置基準。項ごとの面積と、倍読みの考え方で説明しています。

2. 点検の義務があるのはだれか

この章のポイント

点検と報告を義務付ける条文の主語は、防火対象物の関係者(所有者、管理者または占有者)です(防火管理者の業務は別の定め)。設置時の届出や工事の着工届は、別の手続です。

消防法は、関係者を、防火対象物または消防対象物の所有者、管理者または占有者と定めています(消防法第2条第4項)。点検と報告を義務付ける条文の主語も、この関係者です(消防法第17条の3の3)。

賃貸の建物や、複数の事業者が入るビルでは、だれが関係者に当たるかが建物ごとに変わりうるため、個別の建物の関係者は一概には決められません。不明な場合は、管轄の消防本部に確認してください。

防火管理者の業務に、消防用設備等の点検と整備が含まれることは、別に定められています(消防法第8条第1項)。一方、点検と報告を義務付ける条文が相手としているのは、関係者です(消防法第17条の3の3)。防火管理者のいる建物でも、条文が点検と報告を義務付けている相手は関係者です。防火管理者の業務は防火管理者の業務とは?法令に定められた内容を一覧で整理、防火管理の日常の確認は防火管理で確認しておきたい6つの項目。選任・届出・消防計画・点検・訓練のチェックリストで説明しています。

点検と名前が似ていたり、同じ設備に関わったりして混同しやすい手続を、表にしました。

手続 内容 義務を負う人 時期
定期点検と報告 消防用設備等を点検し、結果を消防長または消防署長に報告する(消防法第17条の3の3) 防火対象物の関係者 定期
設置時の届出と検査 設備を設置したとき、届け出て検査を受ける。特定防火対象物その他政令で定めるものが対象(消防法第17条の3の2) 防火対象物の関係者 設備を設置したとき
工事の着工届 工事に着手しようとする日の10日前までに届け出る(消防法第17条の14) 甲種消防設備士 工事に着手するとき
維持のための措置命令 維持されていないと認めるとき、必要な措置を命じる(消防法第17条の4第1項) 関係者で権原を有するもの(その建物について、管理や使用の権利をもつ人) 消防長または消防署長が認めたとき
防火対象物点検 消防用設備等の点検とは別の制度 リンク先の記事で説明 リンク先の記事で説明

防火対象物点検は別の制度で、防火対象物点検・報告とは。対象の建物、点検の時期、報告と表示をやさしく解説で説明しています。設備を設置したときの届出と、工事の着工届は、設置や工事のときの手続です。設置後に続く定期の点検と報告とは、別の条文で定められています。

3. 機器点検と総合点検。点検の種類と期間

机の上の図面と点検の道具のイメージ

点検には、機器点検と総合点検の2種類があります。消防庁の告示は、点検の内容を機器点検と総合点検に分けています(消防庁告示 平成16年第9号)。設備の種類によって、機器点検だけ、両方、総合点検だけなど、組み合わせが異なります(同告示)。表の期間は、点検の種類ごとのものです。

種類 確認すること 期間
機器点検 機器が正しく配置されているか、損傷はないかなど、主として外観から分かる事項。機能のうち、外観や簡単な操作で分かる事項。設備に付いている自家発電設備の非常電源や、動力消防ポンプが正常に動くか 6月に1回
総合点検 設備の全部または一部を実際に作動させ、または使用して、総合的な機能を確認する 1年に1回

点検は、種類と内容に応じて、1年以内で消防庁長官が定める期間ごとに行うものです(消防法施行規則第31条の6第1項)。

設備の種類ごとの点検の基準と、報告書に添える点検票の様式は、別の告示が定めています(消防庁告示 昭和50年第14号)。点検の結果は、維持台帳(消防用設備等の維持管理に必要な書類を綴じたもの)に記録します(消防法施行規則第31条の6第3項)。

結果の報告は、点検結果報告書に点検票を添えて行います。消防長または消防署長が適当と認める場合は、点検結果総括表と点検者一覧表の添付で足ります(消防庁告示 平成16年第9号)。

報告の周期は、建物の用途によって1年に1回と3年に1回に分かれます。周期の区分と報告の細部は、消防用設備等の点検とは。点検の周期と、報告の義務をやさしく解説で説明しています。

4. だれが点検できるか。点検と整備・工事の違い

この章のポイント

建物の用途や広さなどによって、消防設備士または消防設備点検資格者に点検させなければならない建物があります。それ以外の建物では、関係者が自ら点検します。点検と、修理や交換などの整備・工事は、別の行為です。

消防法は、政令で定めるものは、消防設備士免状の交付を受けている者または総務省令で定める資格を有する者に点検させ、その他のものは自ら点検すると定めています(消防法第17条の3の3)。

消防設備士または点検資格者に点検させなければならない防火対象物の範囲は、消防法施行令第36条第2項に定められています。延べ面積などの規模や、用途によります(消防法施行令第36条第2項)。自分の建物がどれに当たるかは、特定防火対象物と非特定防火対象物の違い。該当する項と、点検報告・訓練・防火管理者の基準とあなたの建物は何項?防火対象物の用途別項判定をわかりやすく解説で確認できます。

資格者に点検させる建物以外は、関係者が自ら点検します。自ら点検する場合も、結果を報告する義務は変わりません(消防法第17条の3の3)。

小規模な建物については、消防庁が支援をしています。令和5年版消防白書は、消防庁が令和3年3月から、無料でダウンロードできる「消防用設備等点検アプリ」を公開し、延べ面積1,000㎡未満の小規模な宿泊施設、共同住宅、飲食店等の関係者が、自ら消火器などの消防用設備等を点検し、報告書を作成することを支援していると記しています(令和5年版消防白書)。

資格者は2種類あります。消防設備士と、消防設備点検資格者です。消防設備点検資格者は、消防設備士や電気工事士などの定められた資格や実務経験などのいずれかに当たり、登録講習機関(消防庁長官の登録を受けた法人)の講習の課程を修了して免状の交付を受けた人です(消防法施行規則第31条の6第7項)。

どちらの資格者も、すべての設備を点検できるわけではありません。消防設備士は類ごとに点検できる設備が決まっていて、点検資格者は種別ごとに点検できる設備が決まっています(消防法施行規則第31条の6第6項、消防庁告示 平成16年第10号)。消防設備士の類ごとの区分は、消防設備士とは。工事・整備・点検でできることと、免状・試験の仕組みをやさしく解説で説明しています。

最後に、点検と、整備・工事の違いです。消防設備士免状の交付を受けていない者は、政令で定める工事(設置に係るもの)または整備を行ってはならないとされています(消防法第17条の5)。整備の対象には、屋内消火栓設備、スプリンクラー設備、自動火災報知設備などのほか、消火器と漏電火災警報器が含まれます。屋内消火栓設備の表示灯の交換など、総務省令で定める軽微な整備は除かれます(消防法施行令第36条の2第2項)。点検で不備が見つかり、修理や交換が政令の定める整備に当たるときは、消防設備士でなければ行えません。

5. 不適切な点検の4事例

ファイルの上に置かれたペンのイメージ

消防庁予防課は、令和2年10月に、不適切な点検業務が行われている事例が報告されているとして、防火対象物の関係者に注意を呼びかけるリーフレットを作成しました。目的は、点検業務が適正に行われるようにすることです。リーフレットには、4つの事例と、関係者が確認できることが載っています。

事例 内容 リーフレットが示す確認
1. 無資格者が点検をしていた 消防設備士または消防設備点検資格者による点検を依頼していたのに、無資格者が自動火災報知設備の点検を実施していた 点検作業が始まる前に、点検に従事する各作業員(資機材の搬送などの補助的な作業のみを行う人を除く)が免状を持っているか確認する
2. 全階を点検していなかった 地上5階のビルで、1・3・5階の店舗の設備は点検されたが、2・4階は点検されていなかった 点検の対象は、建物に設置されているすべての消防用設備等。一部のみの点検で作業終了としていないか、実施状況を確認する
3. 事実と異なる報告をしていた 自動火災報知設備の感知器が故障していることが確認されたのに、改善しないまま、報告書では「不備なし」として報告していた 点検の結果を事実どおりに記載する。報告書を届け出る前に確認し、不備は改善する
4. 点検期間のルールを守っていなかった 機器点検を1年に1回、総合点検を3年に1回しか実施していなかった リーフレットは、機器点検は6か月ごと、総合点検は1年ごとに実施し、結果を維持台帳に記録するよう示している

(消防庁予防課 事務連絡 令和2年10月29日)

事例1は第4章の資格者、事例4は第3章の期間に関わります。事例2は、点検の対象の考え方に関わります。事例3のように、報告の内容が事実と異なる場合は、虚偽の報告として罰則の対象になりえます(第6章)。

点検で不備が見つかったときの記録の欄は、告示の様式にあります(消防庁告示 平成16年第9号の様式)。リーフレットも、不備は改善するよう呼びかけています。

設備が基準どおりに維持されていないと、消防長または消防署長が認めたときは、権原を有する関係者に対して、維持のため必要な措置をするよう命ずることができます(消防法第17条の4第1項)。点検で不良が出た場合の個別の取り扱いは、建物と設備の状況で変わります。

6. 報告と命令に関する罰則

この章のポイント

点検結果の報告をしない、または虚偽の報告をした場合は、30万円以下の罰金または拘留の対象です。維持のための命令に違反して必要な措置をしなかった場合も、同じです。

この記事で取り上げる罰則は、報告に関するものと、命令に関するものの二つです。どちらも、消防法第44条に定められています。拘留とは、1日以上30日未満、刑事施設に拘置される刑(刑法第16条)のことです。

違反した内容 罰則
点検結果の報告をせず、または虚偽の報告をした(消防法第44条第11号) 30万円以下の罰金または拘留
維持のための措置を命じる命令に違反して、必要な措置をしなかった(消防法第44条第12号) 30万円以下の罰金または拘留

消防庁の資料も、点検報告に際して、虚偽の報告を行った者、または報告しなかった者は、「30万円以下の罰金又は拘留に処せられる」と説明しています(消防庁「点検報告制度に係る罰則規定について」平成30年6月)。

法人の代表者や、法人・人の代理人、使用人その他の従業者が、その業務に関して違反したときは、違反した本人を罰するほか、その法人や人にも罰金刑が科されます(消防法第45条第3号)。

7. まとめ

覚えておきたいポイント

・関係者には、消防用設備等を「設置し、及び維持しなければならない」義務と、定期に点検して報告する義務があります(消防法第17条第1項、第17条の3の3)。

・点検と報告の義務を負うのは、防火対象物の関係者(所有者、管理者または占有者)です(消防法第2条第4項)。設置時の届出や工事の着工届は、別の手続です。

・点検には、機器点検と総合点検があります。設備の種類によって、機器点検だけ、両方、総合点検だけなど、組み合わせが異なります(消防庁告示 平成16年第9号)。

・用途や延べ面積などによって、消防設備士または消防設備点検資格者に点検させなければならない建物があります。それ以外は関係者が自ら点検し、報告の義務は変わりません(消防法施行令第36条第2項)。

・点検と、修理や交換などの整備・工事は別の行為です。政令で定める整備は、消防設備士免状の交付を受けた人が行います(消防法第17条の5)。

・消防庁は、無資格者の点検、全階を点検しない、事実と異なる報告、期間を守らない、の4事例について注意を呼びかけています。

・報告をしない、虚偽の報告をした、または維持のための命令に違反した場合は、30万円以下の罰金または拘留の対象です(消防法第44条第11号・第12号)。

※本記事は一般的な情報提供を目的としており、個別の建物や店舗への適用を保証するものではありません。実際の取り扱いは、管轄の消防本部に確認してください。

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