壁や天井の仕上げを燃えにくい材料にすると消防用設備の基準が緩むと聞いて、内装工事の前に確かめたい方もいるでしょう。緩むかどうかは、建物の構造と、壁・天井の仕上げという2つの条件で決まり、設備によって必要な条件が異なります。建物の使い方ごとの数値を示していて、例に出す建物や面積は仮のもので、実際の判定ではありません。この記事を読むと、基準が変わる条件と、屋内消火栓設備、消火器、スプリンクラー設備のどれでどれだけ変わるのかを、条文の数値に沿って知ることができます。
1. 基準が変わる条件は、建物の構造と、壁・天井の仕上げ
屋内消火栓設備と消火器には、建物の造りが一定の条件を満たすと、基準の面積の数値を2倍、または3倍に読み替える決まりがあります。これを倍読みといいます。スプリンクラー設備については、消防法施行令第12条に倍読みの定めがありません(第4章)。
条件は2つあります。
- 構造の条件: 特定主要構造部(建物の主要な構造部分で、建築基準法に定める用語です)を耐火構造(火災に耐える性能をもつ構造)とすること
- 仕上げの条件: 壁と天井(天井がなければ屋根)の、室内に面する部分の仕上げを難燃材料(燃えにくい建築材料)でしたこと。回り縁や窓台などは除きます
仕上げに求められるのは「難燃材料」以上です。難燃材料は、燃えにくい材料の区分のうち、いちばん基準がゆるいものです。基準の厳しい順に、不燃材料、準不燃材料、難燃材料と並びます。不燃材料と準不燃材料も、難燃材料の要件を満たすので、仕上げに使えます。設備ごとに、必要な条件は異なります。
| 設備 | 3倍読み | 2倍読み |
|---|---|---|
| 屋内消火栓設備 | 耐火構造 かつ 仕上げが難燃材料 | 耐火構造のみ、または 建築基準法第2条第9号の3イ・ロに当たる建物で仕上げが難燃材料 |
| 消火器 | なし | 耐火構造 かつ 仕上げが難燃材料 |
(消防法施行令第11条第2項、消防法施行規則第6条第2項)
屋内消火栓設備の2倍は、耐火構造だけで足りる場合があります。消火器は、仕上げの条件も満たす必要があります。壁・天井の仕上げの条件そのものは、こちらの記事で説明しています。
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2. 屋内消火栓設備の倍読み
屋内消火栓設備は、倍読みの条件を満たすと、設置が必要になる面積の数値が2倍または3倍になります。対象は、延べ面積の基準と、地階・無窓階・4階以上の階の床面積の基準です(消防法施行令第11条第2項)。無窓階とは、避難上又は消火活動上有効な開口部を有しない階のことです(消防法施行規則第5条の5)。各数値は、表のとおりです。
倍読みの条件は、3倍と2倍で次のように分かれます。
| 読み替え | 建物の構造 | 壁・天井の仕上げ |
|---|---|---|
| 3倍読み | 特定主要構造部を耐火構造とした建物 | 難燃材料でしてある |
| 2倍読み(その1) | 特定主要構造部を耐火構造とした建物 | 条件なし |
| 2倍読み(その2) | 準耐火建築物のうち、条文が定める2つの区分(イ・ロ)のどちらかに当たるもの(建築基準法第2条第9号の3イ・ロ) | 難燃材料でしてある |
(消防法施行令第11条第2項)
自分の建物に当てはめると、次のようになります。
- 耐火構造で、壁・天井の仕上げも難燃材料 → 3倍読み
- 耐火構造で、仕上げは難燃材料ではない → 2倍読み
- 準耐火建築物(イ・ロ)で、壁・天井の仕上げが難燃材料 → 2倍読み
- 上のどれにも当たらない → 読み替えはなく、通常の数値のまま
読み替えたあとの数値は、次のとおりです。
| 通常の基準 | 主な対象(消防法施行令第11条第1項) | 2倍読み | 3倍読み |
|---|---|---|---|
| 100㎡以上 | (一)項の地階・無窓階・4階以上の階の床面積 | 200㎡以上 | 300㎡以上 |
| 150㎡以上 | (二)〜(十)項、(十二)項、(十四)項の地階・無窓階・4階以上の階の床面積。(十六の二)項(地下街)の延べ面積 | 300㎡以上 | 450㎡以上 |
| 200㎡以上 | (十一)項、(十五)項の地階・無窓階・4階以上の階の床面積 | 400㎡以上 | 600㎡以上 |
| 500㎡以上 | (一)項の延べ面積 | 1,000㎡以上 | 1,500㎡以上 |
| 700㎡以上 | (二)〜(十)項、(十二)項、(十四)項の延べ面積 | 1,400㎡以上 | 2,100㎡以上 |
| 1,000㎡以上 | (十一)項、(十五)項の延べ面積 | 2,000㎡以上 | 3,000㎡以上 |
飲食店は(三)項ロ、物販店は(四)項、工場は(十二)項イ、倉庫は(十四)項、事務所などの事業場は(十五)項です。飲食店・物販店・工場・倉庫の延べ面積の基準は700㎡、事務所などは1,000㎡になります。項の見分け方は、あなたの建物は何項?防火対象物の用途別項判定をわかりやすく解説で説明しています。
倍読みの対象にならないものがあります。指定可燃物(危険物の規制に関する政令別表第四の品名欄に掲げる物品で、同表の数量欄に定める数量以上のもの)を、同表で定める数量の750倍以上貯蔵し、または取り扱う建築物などの基準(第5号)は、読み替えません(消防法施行令第11条第2項)。
延べ面積1,500㎡の倉庫((十四)項)があるとします。通常の基準は700㎡以上なので、対象です。耐火構造だけを満たす場合の2倍読みは1,400㎡以上で、1,500㎡はこれを超えるため、対象のままです。耐火構造で、かつ壁・天井の仕上げが難燃材料なら、3倍読みの2,100㎡以上が基準になり、1,500㎡は下回ります(消防法施行令第11条第1項第2号、第2項)。地階・無窓階・4階以上の階の床面積の基準と、指定可燃物の貯蔵や取り扱いは、別に見ます。
また、(六)項イ・ロの一部の施設で、延べ面積700㎡以上の基準を読み替えるときは、読み替え後の数値に上限があります。3倍または2倍の数値と、1,000㎡に総務省令で定める部分の床面積の合計を加えた数値のうち、小さいほうです(消防法施行令第11条第2項、第12条第1項第1号)。
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3. 消火器の倍読み
消火器の倍読みは、2倍だけです。特定主要構造部を耐火構造とし、かつ、壁と天井の室内に面する部分の仕上げを難燃材料でした建物に限られます(消防法施行規則第6条第2項)。
消火器は、屋内消火栓設備と違い、倍読みをしても設置の義務はなくなりません。変わるのは、設ける消火器の能力単位(消火能力を示す数値)の合計数です。合計数は、延べ面積(または床面積)を、表の面積で割った数以上にします。その表の面積が2倍になります(消防法施行規則第6条第1項、第2項)。
| 建物の使い方 | 表の面積 | 倍読みした面積 |
|---|---|---|
| 飲食店((三)項)、物販店((四)項)、工場((十二)項)、倉庫((十四)項) | 100㎡ | 200㎡ |
| 事務所などの事業場((十五)項) | 200㎡ | 400㎡ |
(表の面積は、消防法施行規則第6条第1項の表。(一)項イ、(二)項などの50㎡の区分は省いています)
延べ面積1,000㎡の事務所((十五)項)で、耐火構造かつ難燃材料の仕上げの場合、能力単位の合計数は、1,000÷200=5以上から、1,000÷400=2.5以上になります(消防法施行規則第6条第1項、第2項)。
倍読みがかかるのは、第1項の表による計算です。少量危険物・指定可燃物を扱う場合、電気設備がある場合、多量の火気を使用する場所がある場合に、追加で設ける基準は、第2項の2倍の対象ではありません(消防法施行規則第6条第3項〜第5項)。必要本数の計算は、消火器の記事で説明しています。

4. スプリンクラー設備の条件
スプリンクラー設備は、階数、床面積、天井の高さなどで設置が決まります。屋内消火栓設備や消火器のような倍読みの定めは、消防法施行令第12条にありません。
設置が必要になる場合
飲食店、物販店、工場、倉庫、事務所などに当てはまる場合を、表にしました。
| 建物の使い方 | 設置が必要になる場合 |
|---|---|
| 飲食店((三)項ロ) | 地階を除く階数が11以上(第3号)。平屋建以外で、総務省令で定める部分以外の床面積の合計が6,000㎡以上(第4号)。地階または無窓階の床面積が1,000㎡以上の階、4階以上10階以下で床面積が1,500㎡以上の階(第11号イ) |
| 物販店((四)項) | 地階を除く階数が11以上(第3号)。平屋建以外で、総務省令で定める部分以外の床面積の合計が3,000㎡以上(第4号)。地階・無窓階・4階以上10階以下で、床面積が1,000㎡以上の階(第11号ロ) |
| 工場((十二)項イ)、事務所などの事業場((十五)項) | 11階以上の階(第12号) |
| 倉庫((十四)項) | 11階以上の階(第12号)。天井の高さが10メートルを超え、かつ延べ面積が700㎡以上のラック式倉庫(棚を設け、昇降機で収納物を搬送する装置を備えた倉庫)(第5号) |
| 項を問わず | 指定可燃物(可燃性液体類に係るものを除く)を、危険物の規制に関する政令別表第四で定める数量の1,000倍以上貯蔵し、または取り扱うもの(第8号) |
表にない項にも、消防法施行令第12条に定めがあります。表は、飲食店、物販店、工場、倉庫、事務所などの事業場に絞っています。第3号・第4号・第11号・第12号には、「総務省令で定める部分を除く」などの括弧書きがあります(消防法施行令第12条第1項)。
構造や設備で変わる点
主な点は次のとおりです。いずれも、倍読みとは別の定めです。
- ヘッドの間隔: 第3号・第4号・第10号〜第12号に当たる建物では、天井や小屋裏の各部分から1つのスプリンクラーヘッドまでの水平距離が、耐火建築物以外では2.1メートル以下、耐火建築物では2.3メートル以下です。いずれも高感度型ヘッドは別に定められています(消防法施行令第12条第2項第2号イ)。
- 開口部のヘッド: 開口部の上枠には、2.5メートル以下ごとに1つのヘッドを設けます。10階以下の部分では、延焼のおそれのある部分にある開口部が対象で、防火設備(防火戸など、総務省令で定めるもの)が設けられた開口部は、この限りではありません(消防法施行令第12条第2項第3号)。
- 他の消火設備を設置した場合: 水噴霧消火設備、泡消火設備、不活性ガス消火設備、ハロゲン化物消火設備、粉末消火設備を、それぞれの技術上の基準に従って設置したときは、その設備の有効範囲内の部分には、スプリンクラー設備を設置しないことができます(消防法施行令第12条第3項)。
- 総務省令に委ねられた部分: 第3号・第4号・第10号〜第12号などは、「総務省令で定める部分」を設置の対象から除いています。除かれる部分の中身は、総務省令で定められています(消防法施行令第12条第1項)。
不明な場合は、管轄の消防本部に確認してください。

5. まとめ
覚えておきたいポイント
・基準が変わる条件は、建物の構造(特定主要構造部を耐火構造とする)と、壁・天井の仕上げ(難燃材料)の2つです。不燃材料・準不燃材料は、難燃材料より基準が厳しいので、これらで仕上げても条件を満たします。
・屋内消火栓設備は、耐火構造で仕上げも難燃材料なら3倍読みです。耐火構造だけでも2倍読みになる場合があります。例: 700㎡以上の基準は、2倍で1,400㎡以上、3倍で2,100㎡以上。
・指定可燃物を750倍以上扱う建築物などの基準は、倍読みの対象外です。
・消火器の倍読みは、耐火構造かつ難燃材料の仕上げの2倍だけです。倍読みしても設置の義務はなくなりません。変わるのは能力単位の合計数です。
・スプリンクラー設備には、消防法施行令第12条に倍読みの定めがありません。階数、床面積、天井の高さ、指定可燃物の数量などで決まります。
・スプリンクラー設備は、他の消火設備を技術上の基準に従って設置したときに、有効範囲内の部分で設置しないことができる場合があります。
・不明な場合は、管轄の消防本部に確認してください。
※本記事は一般的な情報提供を目的としており、個別の建物や店舗への適用を保証するものではありません。実際の取り扱いは、管轄の消防本部に確認してください。

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