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飲食店向け 排気ダクトとグリス除去装置の管理。火災予防条例(例)の改正と、清掃・点検の目安(見本の施行は令和9年4月1日)

飲食店向け 排気ダクトとグリス除去装置の管理。火災予防条例(例)の改正と、清掃・点検の目安(見本の施行は令和9年4月1日)(イメージ)

焼肉店のように、テーブルの上から排気ダクトが下がる店では、「ダクトの中の油汚れは、いつ、どこまで掃除すればよいのか」が気になります。令和8年7月3日に消防庁が火災予防条例の見本(条例(例))を改正し、調理に使う器具の周囲の排気ダクトやグリス除去装置に、油脂が付着しないよう管理することが、条文として明確になりました。見本の施行日は令和9年4月1日で、すでに設置されている設備も対象です。ただし、実際の決まりを定めるのは市町村の条例で、施行日や内容は市町村ごとに異なる場合があります。そこで、消防庁の通知(消防予第278号・第279号)が示す点検・清掃の目安を軸に、現行の火災予防条例を実際に読んで、照らして見ていきます。この記事を読むと、飲食店が排気ダクトまわりの何を、いつ、どこまで点検・清掃するのかについて知ることができます。

開店前の客席とテーブル上の排気ダクトのイメージ
目次

1. 消防庁が示した改正は、「油脂が付着しないよう管理する」こと

この章のポイント

決まった中身は、調理に使う器具の周囲の排気ダクトやグリス除去装置に、油脂が付着しないよう管理することです。見本の施行日は令和9年4月1日で、実際の施行日は市町村の条例で決まります。

令和8年7月3日、消防庁は、各都道府県知事や各消防本部の消防長などに、「火災予防条例(例)の一部改正について(通知)」を出しました(消防予第278号)。焼肉店などで使われる火気器具の周囲に設置された排気ダクトが原因の火災の発生状況などをふまえ、令和7年度に開かれた検討部会の検討結果をもとにしたものです。

条例(例)は、消防庁が市町村に示す火災予防条例の見本です。今回の通知は、消防組織法第37条にもとづく助言として出されたものです(消防予第278号)。そのため、通知がそのまま店の義務になるのではなく、市町村が条例を改正したときに、その地域の決まりになります。リーフレットは、この改正を受けて、各市町村の火災予防条例が改正される、としています(消防予第279号 別添1)。

改正の中身は、条例(例)に、調理に用いる器具の周囲の排気ダクト、グリス除去装置等の管理を加えたことです。液体燃料を使う調理の器具について、その周囲で使う排気ダクト、グリス除去装置などに油脂が付着しないよう管理を行わなければならない、と定めています。固体燃料、気体燃料、電気を熱源とする調理の器具には、同じ定めを準用(あてはめること)する形です(消防予第278号 別添新旧対照表。条例(例)第18条〜第21条の各第3項)。

施行の日は、令和9年4月1日です(消防予第278号)。消防庁と日本空調システムクリーニング協会のリーフレットには、すでに設置されている設備も対象になること、各市町村の条例の施行日は異なる場合があることが書かれています(消防予第279号 別添1)。

2. 管理の対象は、器具の周囲のダクトとグリス除去装置など

通知は、調理で油脂を含む蒸気を発生させるおそれのある火気器具を「調理に用いる器具」と呼び、その周囲で使う排気ダクトを「上引き排気ダクト」と呼んでいます(消防予第279号)。リーフレットは、焼肉店の例で説明しています(消防予第279号 別添1)。ただし、条文が書いているのは「調理に用いる器具」で、焼肉店に限った書き方ではありません。

管理の対象になる設備は、上引き排気ダクトのほか、グリス除去装置、火炎伝送防止装置、天蓋(フード)です(消防予第279号)。グリス除去装置は、排気に含まれる油脂などを取り除く装置で、グリスフィルターやグリスエクストラクターが当たります。火炎伝送防止装置は、排気ダクトへ火炎が伝わるのを防ぐ装置です(現行の条例第3条の4第1項第2号)。リーフレットには、防火ダンパーも対象の設備として挙がっています(消防予第279号 別添1)。天蓋(フード)は、調理の排気を受けて、排気ダクトにつなぐ部分です。

油脂が付着しないよう管理する対象は、ダクトだけではありません。グリス除去装置や火炎伝送防止装置、天蓋まで含めて、点検と清掃の目安が示されています。

天井に取り付けられたステンレスの排気ダクトの接続部のイメージ

3. 点検と清掃は、場所ごとに頻度が違う

この章のポイント

火源に近い範囲は、営業日ごとに点検と清掃を行う例が示されています。その先の範囲は、6か月に1回程度、または1か月に1回程度の目視の点検で、厚さ0.4mm程度の油脂が付いていたら清掃する例です。

消防庁の運用の通知は、点検と清掃を、おおむね以下の例により行うことが必要だとしています(消防予第279号)。ダクトの中にグリス除去装置と火炎伝送防止装置の両方が付いている場合と、それ以外の場合で分かれます。

設備の付き方 場所 点検 清掃
両方が付いている 排気取入口からグリス除去装置まで(グリス除去装置を含む) 営業日ごとに目視等 営業日ごと
両方が付いている グリス除去装置から火炎伝送防止装置までと、火炎伝送防止装置から排気ファン側のおおむね1mまで 6か月に1回程度、目視等 厚さ0.4mm程度の油脂等の付着が確認されたとき
両方が付いている 上の2つ以外の部分 — 付着が確認されたとき、努めて清掃
それ以外 火源からおおむね1mの範囲まで 営業日ごとに目視等 営業日ごと
それ以外 それより先の部分 1か月に1回程度、目視等 厚さ0.4mm程度の油脂等の付着が確認されたとき

(消防予第279号)

「両方が付いている」場合とは、グリス除去装置が排気取入口と火炎伝送防止装置の間にあり、グリス除去装置の下端が、調理に用いる器具の火源から80cm以上1m以下の位置にあるものです。「それ以外」には、ダクトだけを単体で設けた場合、2つの装置が上の位置と違う所にある場合、どちらか一方だけが付いている場合が入ります(消防予第279号)。「営業日ごと」は、店を営業した日ごとに、という意味です。「目視等」は、目で見ることを中心にした点検です。

点検の例(仮の例です)

食卓の上のダクトに、グリス除去装置と火炎伝送防止装置が付き、グリス除去装置の位置の条件も満たしている焼肉店を考えます。この店では、営業を終えるたびに、排気取入口からグリス除去装置までの部分を目で見て点検し、清掃します。グリス除去装置から先の部分は、6か月に1回ほど目で見て、厚さ0.4mm程度の油脂が付いていれば清掃します。

ここで示されているのは「おおむね」の「例」です。実際にどの頻度が条例や指導で決まるかは、市町村の条例と消防本部の運用によります。

4. 油脂の厚さは、目視か専用のゲージで確かめる

清掃の目安になる「厚さ0.4mm程度」は、どう確かめるのでしょうか。通知は、油脂等の厚さの確認方法を、目視または専用のゲージによるとしています(消防予第279号)。

目視の場合は、通知の別図に、厚み0.1mm、0.4mm、1.0mmの油脂が付いたダクト内部の写真が、目安として載っています(消防予第279号)。専用のゲージは、くし状の金属板に、高さの違う隙間をあけたものです。測りたい面に垂直に押し当て、ダクトの内面に沿って半周ほど動かすと、たまった油脂の厚さが分かります(消防予第279号)。

点検口がなく中が見えない場所は、目視の点検が難しくなります。この点は、第6章で触れます。

点検口を開けた厨房の排気ダクトのイメージ

5. 現行の火災予防条例を読んでみると

条例(例)の改正が、各地の条例にどう反映されるかを考えるために、今回読んだ現行の火災予防条例の条文を見ます。

条例の第18条から第21条は、液体燃料、固体燃料、気体燃料、電気を熱源とする器具の取扱いの基準です。条番号は、条例(例)と同じです。現行の条文は、器具と建築物や可燃物との距離、使い方などを定めていて、排気ダクトやグリス除去装置は対象にしていません(現行の条例第18条〜第21条)。

一方、調理に使うレンジ、フライヤー、かまどなどの「厨房設備」の位置、構造、管理の基準は、条例の第3条の4が定めています。主な内容は4点です(現行の条例第3条の4第1項)。

  • 排気ダクトと天蓋は、耐食性のある鋼板などの不燃材料で造り、建築物の可燃性の部分や可燃物との間に10cm以上の距離を保つ(金属以外の不燃材料で有効に被覆した部分は除く)。
  • 油脂を含む蒸気を発生させるおそれのある厨房設備の天蓋には、グリス除去装置を設ける。排気ダクトへの火炎の伝送を防ぐ装置(火炎伝送防止装置)も、原則として設ける。どちらにも、条文に例外がある。
  • 天蓋、グリス除去装置、火炎伝送防止装置は、容易に清掃できる構造にする。
  • 天蓋と、天蓋に接続する排気ダクトの内部の油脂等の清掃を行い、火災予防上支障のないよう維持管理する。

第3条の4は、厨房設備の排気ダクト内の油脂の清掃と維持管理を、すでに定めています。見本の改正は、調理に用いる器具について定めた第18条から第21条の側に、周囲の排気ダクトやグリス除去装置等の管理を加えるものです(消防予第278号)。自分の店の調理設備に、どちらの条文が当たるか不明な場合は、管轄の消防本部に確認してください。

守らなかった場合

今回読んだ現行の火災予防条例では、厨房設備と調理に使う器具の取扱いは、罰則の章の対象に入っていません(現行の条例第50条)。市町村は、条例に罰則を設けることができるとされており、設けるかどうかや内容は、条例ごとに異なる場合があります(地方自治法第14条第3項)。

消防法には、防火対象物(店舗など、消防法が対象にする建物)の管理の状況が火災の予防に危険であると認められるときに、消防長または消防署長が、権原を有する関係者(建物や店の管理について権限のある人)へ必要な措置を命じる規定があります(消防法第5条第1項)。この命令に違反した場合の罰則は、次の表のとおりです。拘禁刑は、刑事施設に拘置される刑です(刑法第12条)。

違反した内容 罰則
措置の命令に違反した(消防法第39条の3の2第1項) 2年以下の拘禁刑または200万円以下の罰金
法人や個人事業主の代表者・従業者が、業務に関して違反した(消防法第45条第1号) 行為者を罰するほか、法人に1億円以下の罰金

排気ダクトの管理がこの規定の対象になるかどうかは、個別の状況をふまえて判断されます。

6. 店で確かめておきたいことと、通知が勧める備え

通知は、すでに設置されている上引き排気ダクトのなかには、点検や清掃が難しい構造のものがあるとしています。そのため、改修などの機会に、点検と清掃をしやすいよう、グリス除去装置、火炎伝送防止装置、点検口を設け、きちんと動く状態を保つことが望ましいとしています(消防予第279号)。技術的な細目の例として、東京消防庁の「火気器具上部に設置される排気ダクト等に係る技術基準」などを参考にするよう、通知は示しています。

通知の例に沿って点検するときに、自分の店で確かめておきたい点は、4つあります。

  • ダクトに、グリス除去装置と火炎伝送防止装置が付いているか。付いている場合、グリス除去装置の下端の位置が、火源から80cm以上1m以下か。
  • ダクトの途中に、中を見られる点検口があるか。
  • 営業日ごとに点検と清掃を行う部分(排気取入口からグリス除去装置まで、または火源からおおむね1mまで)の担当者と手順を、決めておく。
  • 6か月に1回程度、または1か月に1回程度の目視点検を行う部分と、その時期を、決めておく。

通知には、店と利用客に向けた留意点もあります。上引き排気ダクトの中に火炎が入り込まないよう、一度に多量の食材を調理しないことなどを、飲食店の側から利用客に注意を促すことです(消防予第279号)。通知は、消防機関が飲食店の関係者に、油脂の付着による火災の危険と適切な管理について、丁寧に説明し指導することを求めています(消防予第279号)。また、点検・清掃のチェックリストを、一般社団法人日本空調システムクリーニング協会が作って公表する予定で、消防庁から周知することとされています(消防予第279号)。

通知が、改修などの機会に設けることが望ましいとしている点検口やグリス除去装置などは、新しく店を開くときや、改装で厨房を替えるときにも、あわせて確かめておける点です。飲食店の消防設備や手続き全体は、下の記事で説明しています。

7. まとめ

覚えておきたいポイント

・消防庁は令和8年7月3日、火災予防条例(例)を改正し、調理に用いる器具の周囲の排気ダクト、グリス除去装置等に油脂等が付着しないよう管理することを加えました。見本の施行日は令和9年4月1日で、すでにある設備も対象です。

・条例(例)は見本です。実際の決まりは市町村の条例で、施行日や内容は異なる場合があります。

・管理の対象は、上引き排気ダクト、グリス除去装置、火炎伝送防止装置、天蓋(フード)です。

・点検・清掃の目安(通知の例)は、グリス除去装置と火炎伝送防止装置の両方が決まった位置に付いている場合、排気取入口からグリス除去装置までは営業日ごとに点検と清掃、その先は6か月に1回程度の目視点検です。それ以外の場合は、火源からおおむね1mまでが営業日ごとの点検と清掃、その先は1か月に1回程度の目視点検です。

・厚さ0.4mm程度の油脂等の付着が確認されたときに清掃するのは、営業日ごとの範囲より先の部分です。確認は、目視か専用のゲージで行います。

・今回読んだ現行の火災予防条例では、厨房設備について、排気ダクト内の油脂の清掃と維持管理が定められています(第3条の4)。

・今回読んだ現行の火災予防条例では、厨房設備と調理に使う器具の取扱いは、罰則の章の対象に入っていません。罰則の有無は条例ごとに異なる場合があります。

・消防法には、防火対象物の管理の状況が火災の予防に危険であると認められるときの、消防長・消防署長の命令の規定があります。通知は、まず丁寧な説明と指導を行うことを重視しています。

・不明な場合は、管轄の消防本部に確認してください。

※本記事は一般的な情報提供を目的としており、個別の建物や店舗への適用を保証するものではありません。実際の取り扱いは、管轄の消防本部に確認してください。

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