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防火管理者とは?役割・選任・届出をやさしく解説【2026年版】

防火管理者とは?役割・選任・届出をやさしく解説【2026年版】

店を開くときや、建物を借りて事業を始めるときに目にする「防火管理者」とは、結局、何をする人で、決めたあとは役所に何を出すのでしょうか。防火管理者は、消防計画の作成や訓練の実施など、防火管理の業務を行う人です。一定の建物では、管理について「権原」を持つ人が、資格のある人の中から決めなければならず、決めたら遅滞なく消防に届け出ます。この記事を読むと、防火管理者の役割、なれる人、決めない場合、決めたあとの届出について知ることができます。

目次

1. 防火管理者とは。だれが決めるのか

防火管理者を決める義務があるのは、建物の管理について「権原」を持つ人です。権原とは、その建物の管理について決める権利のことです。防火管理者本人ではなく、権原を持つ人が、資格のある人の中から防火管理者を決めます。

消防法は、一定の建物について、次のように定めています。

(前略)防火対象物で政令で定めるものの管理について権原を有する者は、政令で定める資格を有する者のうちから防火管理者を定め、(中略)消防計画の作成、当該消防計画に基づく消火、通報及び避難の訓練の実施、(中略)収容人員の管理その他防火管理上必要な業務を行わせなければならない。(消防法第8条第1項)

「防火対象物」は消防法の規制の対象になる建物などのこと、「政令」は消防法施行令のことです。どの建物が対象か、どんな資格が要るかは、消防法施行令で決まっています。任意で置く人ではなく、義務です。

防火管理者になれる人の条件も、消防法施行令にあります。講習を修了していることなどに加えて、その建物で防火管理上必要な業務を適切に遂行することができる「管理的又は監督的な地位」にあることも条件です(第4章)。

2. どんな建物で決める必要があるか

防火管理者を決めなければならないかどうかは、建物の使い方(用途)と、収容人員(建物にいる人の数を、決まった方法で出した数)で決まります。

人数の基準は、特定防火対象物(多数の人が出入りする建物など)は30人以上、非特定防火対象物は50人以上です。建物の使い方は、消防法施行令の別表第一(建物の使い方の一覧表)で「項」に分けられていて、飲食店は(三)項ロで特定、工場は(十二)項イで非特定です。

区分 人数の基準 建物の例
特定防火対象物 30人以上 飲食店((三)項ロ)、物販店や展示場((四)項)など
非特定防火対象物 50人以上 工場や作業場((十二)項イ)、事務所などの事業場((十五)項)など

収容人員が基準の人数以上なら、その建物は、防火管理者を決めなければならない建物です(消防法施行令第1条の2第3項第1号、別表第一)。

例外が一部あります。(六)項ロ(避難が困難な要配慮者の施設。老人短期入所施設、特別養護老人ホーム、障害者支援施設など)は10人以上です。(十六の三)項と(十八)〜(二十)項は、この基準の対象外です。

基準の見方(例)

飲食店((三)項ロ)で、収容人員が32人だったとします。基準は30人以上なので、基準以上です。

収容人員は、決まった方法で計算して出します。

「うちは小さいから対象外」と決めてしまう前に、項と収容人員を確かめてください。確かめ方は下の記事で順に説明しています。

防火管理者を決める建物

3. 防火管理者は何をする人か

防火管理者の主な業務は、消防計画をつくること、その計画に基づいて訓練を行うこと、設備の点検と火気の管理です。法律が定める業務を、主なものから挙げます(消防法第8条第1項)。

  • 消防計画の作成(消防計画は、防火管理のための計画です)
  • 消防計画に基づく、消火、通報、避難の訓練の実施
  • 消防の用に供する設備、消防用水、消火活動上必要な施設の点検・整備
  • 火気の使用や取扱いの監督
  • 避難や防火のために必要な構造や設備の維持管理
  • 収容人員の管理

このほかにも、「防火管理上必要な業務」を行わせることが求められています。業務を行わせるのは、防火管理者を決める人(権原を持つ人)の義務です。

訓練の回数は、特定防火対象物(飲食店や店舗など)は消火訓練と避難訓練を年2回以上、非特定防火対象物(工場や事務所など)は消防計画に定めた回数です(消防法施行規則第3条第10項)。防火管理者を決めたあとは、消防計画の作成と、変更するときの届出も欠かせません(第6章)。

防火管理者の業務

4. 防火管理者になれる人。甲種と乙種

防火管理者には、甲種と乙種があります。どちらが必要かは、建物の使い方と延べ面積で分かれ、受ける講習の時間も違います。

資格の条件は、建物の区分(甲種防火対象物・乙種防火対象物)ごとに、消防法施行令で決まっています。講習の課程を修了した人が代表的ですが、甲種では「市町村の消防職員で、管理的又は監督的な職に一年以上あつた者」など、ほかの条件も定められています(消防法施行令第3条第1項)。甲種も乙種も、こうした人であることが求められます。

当該防火対象物において防火管理上必要な業務を適切に遂行することができる管理的又は監督的な地位にあるもの(消防法施行令第3条第1項)

乙種になるのは、人数の基準に当たる建物のうち、延べ面積が小さいものです。特定防火対象物は延べ面積300㎡未満、非特定防火対象物は500㎡未満が乙種です。(六)項ロ(10人以上の基準)は、延べ面積にかかわらず甲種です(消防法施行令第3条第1項)。

甲種防火対象物 乙種防火対象物
当てはまる建物 乙種に当たらないもの((六)項ロを含む) 特定防火対象物で300㎡未満、または非特定防火対象物で500㎡未満
受ける講習 新規講習はおおむね10時間、再講習はおおむね2時間 乙種防火管理講習はおおむね5時間

講習の時間は、消防法施行規則で定められています(消防法施行規則第2条の3)。甲種の再講習は、甲種の新規講習のあとに、一定の防火対象物の防火管理者に対して行われる講習です。

自分の建物がどちらに当たるかは、項と延べ面積の両方で決まります。

5. 防火管理者を決めないと、どうなるか

この章のポイント

決めなければならない建物で決めていないと、消防から選任を命じられることがあります。

その命令に違反すると、罰則があります。届出を怠った場合にも罰則があります。

防火管理者を決めるのは、努力目標ではなく、法律の義務です。

防火管理者が定められていないと認められる場合、消防長または消防署長は、権原を有する者に対し、防火管理者を定めるべきことを命ずることができます(消防法第8条第3項)。防火管理者の行うべき業務が、法令の規定または消防計画に従って行われていないと認められる場合も、必要な措置を講ずべきことを命ずることができます(消防法第8条第4項)。

罰則は、場面ごとに定められています。

拘禁刑は、刑事施設に収容される刑です。拘留は、短い期間、刑事施設に収容される刑です。

違反した内容 罰則
防火管理者を定めるべきことを命じられたのに違反した(消防法第42条第1項第1号) 6か月以下の拘禁刑または50万円以下の罰金
防火管理者の選任・解任の届出を怠った(消防法第44条第8号) 30万円以下の罰金または拘留

従業員などが、その法人や人の業務に関して上の命令違反をしたときは、行為者を罰するほか、その法人や事業主にも罰金刑が科されることがあります(消防法第45条第3号)。

これらの罰則は、防火管理者を決める人(権原を持つ人)に関するものです。

6. 決めたあとの届出

防火管理者を決めたときは、遅滞なく、管轄の消防長(消防本部の長)または消防署長(消防署の長)に届け出ます。解任したときも同じです。

前項の権原を有する者は、同項の規定により防火管理者を定めたときは、遅滞なくその旨を所轄消防長又は消防署長に届け出なければならない。(消防法第8条第2項)

届出は、選任でも解任でも、選任・解任の届出書で行います。選任の届出には、防火管理者の資格を証する書面を添えます(消防法施行規則第3条の2第1項・第2項)。消防法施行規則に別記様式が定められています。ただし、実際に使う様式は消防本部ごとに異なるのが一般的です。使う様式は、管轄の消防本部に確認してください。期限について条文が定めているのは「遅滞なく」までで、日数の扱いなど不明な場合は、管轄の消防本部に確認してください。

防火管理者を変えるときは、新しい人を定めたときと、前の人を解任したときの両方が、届出の対象です。

消防計画の作成と、変更するときの届出は、消防計画の届出書で行います。選任・解任の届出書とは別の書類です(消防法施行規則第3条第1項)。

選任後の届出

7. まとめ

覚えておきたいポイント

・防火管理者は、消防計画の作成、訓練の実施、設備の点検・整備、火気の監督、収容人員の管理などを行う人です。

・防火管理者を決める義務があるのは、建物の管理について権原を持つ人です。

・決めなければならないかは、建物の使い方(項)と収容人員で決まります。基準は、特定防火対象物が30人以上、非特定防火対象物が50人以上です((六)項ロは10人以上)。

・防火管理者には甲種と乙種があります。特定防火対象物は300㎡未満、非特定防火対象物は500㎡未満なら乙種で足り、講習の時間も違います。

・決めていないと、消防から選任の命令を受けることがあります。命令に違反すると罰則があります。

・防火管理者を決めたら、遅滞なく、消防長または消防署長に選任の届出をします。解任のときも届出が必要で、選任には資格を証する書面を添えます。

・不明な場合は、管轄の消防本部に確認してください。

複雑な届出は、専門家に依頼する方法もあります

届出書など、書類の作成や提出が難しいと感じるときは、行政書士などの専門家に依頼するのも一つの方法です。なお、建物がどの項に当たるかは、管轄の消防本部に確認します。依頼すると、たとえば次のような点で、手間を減らせる場合があります。

・届出書の書式の選び方を相談できるため、書類を作り直す手間を減らせる場合があります。

・添える書面の確認を任せられるため、書類の不足や取り違えに気づきやすくなる場合があります。

・提出までの段取りを整理できるため、役所に出向く回数や、書類を何度も見直す手間を減らせる場合があります。

どの書類を任せられるかは、あらかじめ確認します。相談するかどうかは、ご自身で判断してください。

※本記事は一般的な情報提供を目的としており、個別の建物や店舗への適用を保証するものではありません。実際の取り扱いは、管轄の消防本部に確認してください。

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