福祉施設の消防設備は、まず自分の施設が(六)項ロのどの区分に当たるかを確かめ、次に設備ごとの基準を当てはめる、という順に整理できます。特別養護老人ホームや障害者支援施設などの福祉施設を開くときは、消防設備は何が要るのか、小さな施設でも同じなのか、が最初の疑問になります。(六)項ロの施設では、消火器や自動火災報知設備などは、面積に関係なく対象になります。一方で、スプリンクラー設備は施設の区分と入所者の状況で、避難器具は階と収容人員で、基準が分かれます。このため、小さな施設であっても、設備ごとに自分の施設の条件を当てはめて見ることになります。この記事を読むと、(六)項ロにあたる施設の区分と、設備ごとの基準について、条文に沿って知ることができます。
1. (六)項ロにあたる施設
(六)項ロは、5つの区分に分かれています(消防法施行令別表第一)。
- (1) 老人短期入所施設、養護老人ホーム、特別養護老人ホーム、介護老人保健施設、老人短期入所事業を行う施設、認知症対応型老人共同生活援助事業を行う施設など。軽費老人ホームと有料老人ホームは「避難が困難な要介護者を主として入居させるもの」に限り、小規模多機能型居宅介護事業を行う施設は「避難が困難な要介護者を主として宿泊させるもの」に限ります。
- (2) 救護施設
- (3) 乳児院
- (4) 障害児入所施設
- (5) 障害者支援施設(避難が困難な障害者等を主として入所させるものに限る)と、短期入所または共同生活援助を行う施設(避難が困難な障害者等を主として入所させるものに限る)
特別養護老人ホームと養護老人ホームは、入居させる人の状況にかかわらず、(六)項ロ(1)です(消防法施行令別表第一)。軽費老人ホームと有料老人ホームは、入居させる人の状況が条件になっています。「避難が困難な要介護者」は、要介護状態区分のうち、消防法施行規則が指定する区分に当たる人です(消防法施行規則第5条第5項)。この条件に当たる軽費老人ホームと有料老人ホームは(六)項ロ(1)、当たらないものは(六)項ハ(1)です(消防法施行令別表第一)。(1)の「その他これらに類するもの」は、避難が困難な要介護者を主として入居または宿泊させ、介護、機能訓練、看護などを業として提供する施設を指します(消防法施行規則第5条第6項)。
(六)項ロは、特定防火対象物です(消防法第17条の2の5第2項第4号、消防法施行令第34条の4第2項)。

2. 設備ごとの基準
(六)項ロの基準を設備ごとに並べると、表のようになります。階や指定可燃物による基準は、設備ごとに別に定められています。
| 設備 | (六)項ロの基準 |
|---|---|
| 消火器 | 面積に関係なく対象 |
| 屋内消火栓設備 | 延べ面積700㎡以上。地階・無窓階・4階以上は、その階の床面積150㎡以上 |
| スプリンクラー設備 | (1)・(3)は面積に関係なく。(2)・(4)・(5)は、介助がなければ避難できない者を主として入所させるものは面積に関係なく、それ以外は延べ面積275㎡以上 |
| 自動火災報知設備 | 面積に関係なく対象 |
| 消防機関へ通報する火災報知設備 | 面積に関係なく対象 |
| 避難器具 | 2階以上の階または地階で、収容人員20人以上 |
| 誘導灯 | 面積や階の基準はなく、対象 |
(消防法施行令第10条第1項、第11条第1項、第12条第1項、第21条第1項、第23条第1項、第25条第1項、第26条第1項)
3. 消火器と屋内消火栓設備
消火器は、(六)項ロでは面積に関係なく置く対象です(消防法施行令第10条第1項第1号イ)。置く場所は、通行や避難に支障がなく、使うときに容易に持ち出せる箇所と決められています(消防法施行令第10条第2項第2号)。何本置くかは、別の基準で決まります。
屋内消火栓設備は、延べ面積が700㎡以上のとき対象です(消防法施行令第11条第1項第2号)。700㎡に届かなくても、地階・無窓階・4階以上の階で、その階の床面積が150㎡以上なら対象になります(消防法施行令第11条第1項第6号)。指定可燃物(可燃性液体類を除く)を、危険物の規制に関する政令別表第四で定める数量の750倍以上貯蔵し、または取り扱う場合も対象です(消防法施行令第11条第1項第5号)。
この面積は、条件によって読み替えます。特定主要構造部を耐火構造とし、壁と天井の室内に面する部分の仕上げを難燃材料でした建物は3倍です。特定主要構造部を耐火構造としたその他の建物と、準耐火建築物のうち条文が定める区分に当たり、仕上げを難燃材料でした建物は、2倍です(消防法施行令第11条第2項)。
(六)項ロの区分は、スプリンクラー設備の設置を定める消防法施行令第12条第1項第1号に挙がっています(第4章)。この号に掲げる防火対象物には、読み替えた数値に上限があります。読み替えた数値は、3倍または2倍の数値と、1,000㎡に「消防法施行令第12条第2項第3号の2の総務省令で定める部分の床面積の合計」を加えた数値のうち、小さい方です(消防法施行令第11条第2項)。
延べ面積が900㎡で、地階・無窓階・4階以上の階がない施設があるとします。構造や仕上げの条件がなければ、屋内消火栓設備は、延べ面積700㎡以上の基準に当たるため、設置の対象です。特定主要構造部を耐火構造とし、壁と天井の仕上げを難燃材料でしていれば、基準の数値が読み替えられます。3倍に読み替えた場合、数値は、2,100㎡と、1,000㎡に上の部分の床面積の合計を加えた数値の小さい方で、どちらも900㎡を上回るため、延べ面積の基準には当たらなくなります(消防法施行令第11条第1項第2号・第2項)。
スプリンクラー設備などを基準に従って設置したときは、その有効範囲内の部分には、屋内消火栓設備を設置しないことができます(消防法施行令第11条第4項)。
4. スプリンクラー設備は、区分と入所者の状況で分かれます
(六)項ロのスプリンクラー設備は、(1)から(5)の区分ごとに基準が違います。
- (1)と(3)(老人ホームなど、乳児院): 面積に関係なく対象です(消防法施行令第12条第1項第1号ロ)。
- (2)・(4)・(5)(救護施設、障害児入所施設、障害者支援施設など): 介助がなければ避難できない者として総務省令で定める者を主として入所させるものは、面積に関係なく対象です。それ以外は、延べ面積275㎡以上で対象です(消防法施行令第12条第1項第1号ハ)。
「介助がなければ避難できない者」は、乳児、幼児と、(2)・(4)・(5)の施設に入所する人のうち、障害支援区分の認定調査項目(移乗、移動、危険の認識、説明の理解、多動・行動停止、不安定な行動)のいずれかで、規則が定める程度に当たる人です(消防法施行規則第12条の3)。
面積に関係なく対象になる区分でも、条文は「火災発生時の延焼を抑制する機能を備える構造として総務省令で定める構造を有するもの」を除いています(消防法施行令第12条第1項第1号)。この構造は、居室を区画した施設で、基準面積(防火上有効な措置が講じられた構造を有するものとして総務省令で定める部分以外の部分の床面積の合計)に応じて、条件が分かれます(消防法施行規則第12条の2第1項)。
- 基準面積が1,000㎡未満: 居室を準耐火構造の壁と床で区画します。壁と天井の仕上げは、通路は準不燃材料、その他の部分は難燃材料です。区画する壁と床の開口部は、面積の合計が8㎡以下で、一つの開口部が4㎡以下です。区画された部分の床面積はすべて100㎡以下で、4以上の居室を含みません(消防法施行規則第12条の2第1項第1号)。
- 基準面積が1,000㎡以上: 居室を耐火構造の壁と床で区画します。区画された部分の床面積はすべて200㎡以下です(消防法施行規則第12条の2第1項第2号)。
開口部に設ける防火戸の種類など、細かい条件もあります。入居者等の利用に供する居室が避難階だけにある、延べ面積100㎡未満の施設には、別の定めがあります(消防法施行規則第12条の2第2項)。
この構造による除外が働くのは、地階を除く階数が11以上の建物と、平屋建以外で6,000㎡以上の建物に当たらない施設です。この二つは、第1号から外されて第3号と第4号で定められているため、当たる建物は、構造による除外を受けません(消防法施行令第12条第1項第1号・第3号・第4号)。第3号以降には、階数、床面積、指定可燃物の量などによる基準があります。
- 地階を除く階数が11以上の建物。総務省令で定める部分を除きます(消防法施行令第12条第1項第3号)。
- 平屋建以外で、総務省令で定める部分以外の部分の床面積の合計が6,000㎡以上の建物(消防法施行令第12条第1項第4号)
- 地階・無窓階で床面積が1,000㎡以上、4階以上10階以下で床面積が1,500㎡以上の階。総務省令で定める部分を除きます(消防法施行令第12条第1項第11号イ)。
- 指定可燃物(可燃性液体類を除く)を、危険物の規制に関する政令別表第四で定める数量の1,000倍以上貯蔵し、または取り扱うもの(消防法施行令第12条第1項第8号)
小規模な施設には、水道の水管を連結する特定施設水道連結型スプリンクラー設備があります。基準面積が1,000㎡未満のものに限り設置できます(消防法施行令第12条第2項第3号の2)。
(1)と(3)は面積に関係なく対象です。(2)・(4)・(5)は、入所者の状況で、面積に関係なく対象か、延べ面積275㎡以上かが分かれます。

5. 警報設備
自動火災報知設備は、(六)項ロでは面積に関係なく対象です(消防法施行令第21条第1項第1号イ)。延べ面積が300㎡未満の(六)項ロは、特定小規模施設にあたり、通常の自動火災報知設備に代えて、特定小規模施設用自動火災報知設備を用いることができます(特定小規模施設における必要とされる防火安全性能を有する消防の用に供する設備等に関する省令第2条第1号イ・第3条第1項)。
消防機関へ通報する火災報知設備も、(六)項ロでは面積に関係なく対象です(消防法施行令第23条第1項第1号)。消防機関へ常時通報できる電話を置いても、この設備に代えることはできません(消防法施行令第23条第3項)。消防機関から著しく離れた場所など、総務省令で定める場所は対象から除かれます(消防法施行令第23条第1項ただし書)。
非常警報の設備は、収容人員や階数で分かれます(消防法施行令第24条)。
- 非常警報器具: 収容人員が20人以上50人未満のものです。ただし、地階・無窓階で20人以上のものは、下の2つ目の区分に当たるため、非常警報器具の対象からは除かれます(第1項)。
- 非常ベル、自動式サイレン、放送設備のいずれか: 収容人員が50人以上のもの、または地階・無窓階で20人以上のものです(第2項第2号)。
- 非常ベルと放送設備、または自動式サイレンと放送設備: 地階を除く階数が11以上、または地階の階数が3以上のもの(第3項第2号)と、収容人員が300人以上のもの(第3項第4号)です。この区分に当たるものは、第2項の対象から除かれます。
自動火災報知設備が基準どおり設置されているときは、その有効範囲内の部分には、非常警報器具や非常ベルなどを設置しないことができます(消防法施行令第24条第1項ただし書・第2項ただし書)。
そのほか、漏電火災警報器とガス漏れ火災警報設備にも基準があります。漏電火災警報器は、壁、床または天井に、下地などを準不燃材料以外の材料で造った鉄網入りのものがある建築物で、延べ面積が300㎡以上のものが対象です。契約電流容量が50アンペアを超える建築物も対象です(消防法施行令第22条第1項第3号・第7号)。ガス漏れ火災警報設備は、(六)項の地階で床面積の合計が1,000㎡以上のものと、温泉の採取のための設備が設置されているものが対象です(消防法施行令第21条の2第1項第3号・第4号)。
6. 避難器具と誘導灯
避難器具は、(六)項の2階以上の階または地階で、収容人員が20人以上のとき設置します。下階の用途によっては、10人以上です(消防法施行令第25条第1項第1号)。避難階と11階以上の階は対象になりません(消防法施行令第25条第1項)。これに当たらない階でも、3階以上の階で、避難階または地上に直通する階段が2以上設けられていないものは、収容人員が10人以上で対象です(消防法施行令第25条第1項第5号)。
避難器具の設置の個数は、収容人員が100人以下のときは1個以上、100人を超えるときは1個に100人までを増すごとに1個を加えた個数以上です。建物の位置、構造または設備の状況により避難上支障がないと認められるときは、総務省令で定めるところにより、個数を減らし、または設置しないことができます(消防法施行令第25条第2項第1号)。
誘導灯は、避難口誘導灯と通路誘導灯の両方が、(六)項で対象です(消防法施行令第26条第1項第1号・第2号)。誘導標識も(一)項から(十六)項までが対象で、避難口誘導灯または通路誘導灯を設置した部分には、設置しないことができます(消防法施行令第26条第1項第4号・第3項)。誘導灯には、非常電源を附置します(消防法施行令第26条第2項第4号)。
避難口誘導灯には、除かれる階があります。居室の各部分から主要な避難口を容易に見とおし、かつ識別できる階で、その避難口までの歩行距離が、避難階は20m以下、避難階以外の階は10m以下のものです(消防法施行規則第28条の2第1項第1号)。
くわしく知りたい方へ

7. 規模が大きいときに関わる設備
建物の規模が大きくなると、これから挙げる設備の基準にも当たります。
- 屋外消火栓設備: 1階の床面積(地階を除く階数が2以上のときは1階と2階の床面積の合計)が、耐火建築物は9,000㎡以上、準耐火建築物は6,000㎡以上、その他の建築物は3,000㎡以上(消防法施行令第19条第1項)
- 消防用水: 敷地面積が2万㎡以上で、屋外消火栓設備と同じ数え方の床面積が耐火建築物は1万5,000㎡以上、準耐火建築物は1万㎡以上、その他の建築物は5,000㎡以上。または、高さが31mを超え、延べ面積(地階に係るものを除く)が2万5,000㎡以上(消防法施行令第27条第1項)
- 連結散水設備: 地階の床面積の合計が700㎡以上(消防法施行令第28条の2第1項)
- 連結送水管: 地階を除く階数が7以上、または5以上で延べ面積が6,000㎡以上(消防法施行令第29条第1項第1号・第2号)
- 非常コンセント設備: 地階を除く階数が11以上(消防法施行令第29条の2第1項第1号)
このほか、駐車の用に供される部分や、発電機・変圧器などの電気設備がある部分には、床面積に応じて水噴霧消火設備などの基準があり、一定の建物には動力消防ポンプ設備の基準があります(消防法施行令第13条、第20条)。
排煙設備と無線通信補助設備の基準は、(六)項を対象にしていません(消防法施行令第28条、第29条の3)。
8. 設備のほかに関わる決まり
設備のほかにも、(六)項ロには決まりがあります。防火管理者は、収容人員が10人以上の(六)項ロで定めます。(六)項イ、ハ、ニは30人以上です(消防法施行令第1条の2第3項第1号イ・ロ)。(六)項は、防炎防火対象物でもあります(消防法施行令第4条の3第1項)。設備を設置したあとの点検と報告は、別の記事で説明しています。
9. まとめ
覚えておきたいポイント
・(六)項ロは、老人ホーム、救護施設、乳児院、障害児入所施設、障害者支援施設などの入居・入所の施設です。
・軽費老人ホームと有料老人ホームは、避難が困難な要介護者を主として入居させるかで、(六)項ロ(1)と(六)項ハ(1)に分かれます。
・消火器、自動火災報知設備、消防機関へ通報する火災報知設備は、面積に関係なく対象です。
・スプリンクラー設備は、(1)・(3)が面積に関係なく対象です。
・(2)・(4)・(5)のスプリンクラー設備は、介助がなければ避難できない者を主として入所させるものは面積に関係なく、それ以外は延べ面積275㎡以上です。
・総務省令で定める区画の構造を有する施設は、スプリンクラー設備の対象から除かれます。
・屋内消火栓設備は延べ面積700㎡以上で、耐火構造や仕上げの条件で数値が2倍または3倍になります。
・避難器具は2階以上の階または地階で収容人員20人以上、誘導灯は(六)項が対象です。
・防火管理者は、収容人員10人以上の(六)項ロで定めます。
・不明な場合は、管轄の消防本部に確認してください。
※本記事は一般的な情報提供を目的としており、個別の建物や店舗への適用を保証するものではありません。実際の取り扱いは、管轄の消防本部に確認してください。

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