「旅館やホテルは(五)項イにあたります」と言われても、消防設備は何が要るのか、小さな宿でも同じなのかは、すぐには分かりません。(五)項イは、自動火災報知設備と誘導灯が面積に関係なく対象です。一方で、消火器と屋内消火栓設備は延べ面積、非常警報設備と避難器具は収容人員で、基準が分かれます。住宅で民泊(住宅宿泊事業)を始める場合に(五)項イとして扱われるかどうかと、そのときの設備は、消防庁の通知とリーフレットに沿って、第2章と第8章で説明します。この記事を読むと、旅館やホテルなどの宿泊施設を例に、建物の範囲から、消火設備、警報設備、避難器具と誘導灯、設備のほかに関わる決まりについて知ることができます。

1. (五)項イにあたる建物
消防法施行令別表第一で、(五)項イは「旅館、ホテル、宿泊所その他これらに類するもの」です。(五)項ロは「寄宿舎、下宿又は共同住宅」で、設備の基準がイと分かれるものがあります。
旅館は、特定防火対象物の例として、消防法が挙げています(消防法第17条の2の5第2項第4号)。(五)項イは特定防火対象物です。(五)項ロは、特定防火対象物の項に挙がっていないため、非特定防火対象物です(消防法施行令第34条の4第2項)。

2. 民泊は(五)項イになるのか
住宅宿泊事業法に基づく届出をして民泊を営む住宅(通知でいう「届出住宅」)は、原則として(五)項イ、またはその部分として扱われます。ただし、人を宿泊させる間、住宅宿泊事業者が不在とならない旨の届出をしていて、宿泊室の床面積の合計が50㎡以下のときは、住宅として扱われます。消防庁の通知が示している考え方です(消防予第330号 第1)。
ここでの「宿泊室」は、民泊の届出をした住宅のうち、宿泊者が寝る部屋のことです。床面積には、押入れや床の間を含めません。算定は、壁その他の区画の中心線で囲まれた部分の水平投影面積で行います(消防予第2号 問2)。
前提によって、結論が変わります。
| 住宅宿泊事業者の在・不在 | 宿泊室の床面積の合計 | 用途の扱い |
|---|---|---|
| 人を宿泊させる間、不在とならない旨の届出がある | 50㎡以下 | 住宅 |
| 人を宿泊させる間、不在とならない旨の届出がある | 50㎡を超える | (五)項イ、またはその部分 |
| 人を宿泊させる間、不在となる | 面積に関係なく | (五)項イ、またはその部分 |
(消防予第330号 第1。2・3行目は通知の原則とただし書から。消防庁のリーフレット「民泊を始めるにあたって」(2ページ)の図も同じ内容です)
建物の形によって、見る単位が変わります。一戸建て住宅では、不在かどうかを建物単位で見ます。共同住宅(アパート・マンションなど)では、住戸ごとに見ます(消防予第2号 問5、消防庁のリーフレット)。一戸建て住宅の一部だけを民泊にする場合も、民泊にしない部分を含む棟全体で、この判定を行います(消防予第2号 問16)。
住宅として扱われる場合、消防庁のリーフレットでは、新たに消防用設備等を設置する必要はないものの、住宅用火災警報器が適切に設置されているかを確認するよう案内されています。通知は、この扱いをするときに、火災の発生時に消火・延焼の防止・人命の救助を住宅宿泊事業者などが行うことを確認するのが適当としています(消防予第330号 第2の2)。
共同住宅の一部で民泊をする場合は、民泊にする住戸ごとに用途を判定したうえで、棟全体の用途を、昭和50年の消防予第41号・消防安第41号により判定します(消防予第330号 第1)。住戸を民泊にすることで、建物全体の用途が変わり、建物全体で必要な設備が変わることがあります(消防庁のリーフレット)。実際の判断は管轄の消防本部が行うため、事前に確認してください。
旅館業法の許可を受けた施設の場合も、届出をした民泊と同じ利用形態であることが確認できるときは、通知により、この考え方で判定されます(消防予第330号 第2の1)。同じ利用形態とは、一戸建て住宅や、共同住宅などの一住戸で、宿泊のサービスを提供するものが想定されています。確認は、一戸建てか一住戸であること、宿泊室の床面積の合計、人を宿泊させる間に居住者が不在となるかどうかが分かる図面や書類などで行う場合が考えられるとされています(消防予第2号 問6・問7)。
国家戦略特別区域法第13条に基づく施設にも、この考え方を準用して差し支えないとされています(消防予第2号 問8)。
なお、住宅を使って有償で繰り返し宿泊サービスを提供することは、基本的に旅館業にあたり、旅館業法に基づく許可が必要とされています。一部の地域には、国家戦略特別区域法に基づく認定を受ける方法もあります(消防予第63号)。
3. 設備ごとの基準は、イとロで違います
(五)項イの基準を、(五)項ロと並べて表に示します。階や指定可燃物による基準は、設備ごとに別に定められています。
| 設備 | (五)項イ | (五)項ロ |
|---|---|---|
| 消火器 | 延べ150㎡以上 | 延べ150㎡以上 |
| 屋内消火栓設備 | 延べ700㎡以上。地階・無窓階・4階以上は、その階の床面積150㎡以上 | 延べ700㎡以上。地階・無窓階・4階以上は、その階の床面積150㎡以上 |
| スプリンクラー設備 | 地階を除く階数11以上、平屋建以外で床面積の合計6,000㎡以上、地階・無窓階で階の床面積1,000㎡以上、4〜10階で階の床面積1,500㎡以上など | 11階以上の階など |
| 自動火災報知設備 | 面積に関係なく | 延べ500㎡以上 |
| 消防機関へ通報する火災報知設備 | 延べ500㎡以上 | 延べ1,000㎡以上 |
| 非常警報設備 | 収容人員20人以上 | 収容人員50人以上。地階・無窓階は20人以上 |
| 避難器具 | 2階以上の階または地階で、収容人員30人以上 | 2階以上の階または地階で、収容人員30人以上 |
| 誘導灯 | 面積や階の基準はなく、対象 | 地階・無窓階・11階以上の部分 |
(消防法施行令第10条第1項、第11条第1項、第12条第1項、第21条第1項、第23条第1項、第24条第2項、第25条第1項、第26条第1項)
延べ面積が260㎡の、2階建ての旅館があるとします。地階・無窓階・3階以上の階はなく、指定可燃物などは扱わないものとします。
消火器: 延べ150㎡以上のため、対象です。
自動火災報知設備: 面積に関係なく対象です。
消防機関へ通報する火災報知設備: 延べ500㎡に届かないため、この基準では対象になりません。
屋内消火栓設備: 延べ700㎡に届かないため、この基準では対象になりません。
誘導灯: 面積や階の基準がなく、対象です。
4. 消火設備
消火器は、(五)項では延べ面積150㎡以上のとき置く対象です(消防法施行令第10条第1項第2号イ)。150㎡に届かなくても、少量危険物や指定可燃物を貯蔵し、または取り扱う建築物は対象です(消防法施行令第10条第1項第4号)。地階・無窓階・3階以上の階で、床面積が50㎡以上のものも対象です(消防法施行令第10条第1項第5号)。
屋内消火栓設備は、延べ面積が700㎡以上のとき対象です(消防法施行令第11条第1項第2号)。700㎡に届かなくても、地階・無窓階・4階以上の階で、その階の床面積が150㎡以上なら対象になります(消防法施行令第11条第1項第6号)。指定可燃物(可燃性液体類を除く)を、危険物の規制に関する政令別表第四で定める数量の750倍以上貯蔵し、または取り扱う場合も対象です(消防法施行令第11条第1項第5号)。
この面積は、条件によって読み替えます。特定主要構造部を耐火構造とし、壁と天井の室内に面する部分の仕上げを難燃材料でした建物は3倍です。特定主要構造部を耐火構造としたその他の建物と、準耐火建築物のうち条文が定める区分に当たり、仕上げを難燃材料でした建物は、2倍です(消防法施行令第11条第2項)。スプリンクラー設備などを基準に従って設置したときは、その有効範囲内の部分には、屋内消火栓設備を設置しないことができます(消防法施行令第11条第4項)。
スプリンクラー設備は、(五)項イでは、次のいずれかに当たるとき対象です。
- 地階を除く階数が11以上の建物。総務省令で定める部分を除きます(消防法施行令第12条第1項第3号)。
- 平屋建以外で、総務省令で定める部分以外の部分の床面積の合計が6,000㎡以上の建物(消防法施行令第12条第1項第4号)
- 地階・無窓階で、その階の床面積が1,000㎡以上のもの。4階以上10階以下で、その階の床面積が1,500㎡以上のもの。総務省令で定める部分を除きます(消防法施行令第12条第1項第11号イ)。
- 指定可燃物(可燃性液体類を除く)を、危険物の規制に関する政令別表第四で定める数量の1,000倍以上貯蔵し、または取り扱うもの(消防法施行令第12条第1項第8号)
階の基準は、建物全体ではなく、その階の床面積で見ます。(五)項ロには、地階・無窓階と4階以上10階以下の床面積の基準は当たらず、11階以上の階と、指定可燃物の基準が当たります(消防法施行令第12条第1項第8号・第12号)。

5. 警報設備
自動火災報知設備は、(五)項イでは面積に関係なく対象です(消防法施行令第21条第1項第1号イ)。(五)項ロは、延べ面積500㎡以上で対象です(消防法施行令第21条第1項第4号)。延べ面積が300㎡未満の(五)項イは、特定小規模施設にあたり、通常の自動火災報知設備に代えて、特定小規模施設用自動火災報知設備を用いることができます(特定小規模施設における必要とされる防火安全性能を有する消防の用に供する設備等に関する省令第2条第1号イ・第3条第1項)。
消防機関へ通報する火災報知設備は、(五)項イでは延べ面積500㎡以上で対象です(消防法施行令第23条第1項第2号)。(五)項ロは延べ面積1,000㎡以上です(消防法施行令第23条第1項第3号)。消防機関へ常時通報できる電話を置くと、この設備を設置しないことができますが、(五)項イは除かれます(消防法施行令第23条第3項)。消防機関から著しく離れた場所など、総務省令で定める場所にある建物は、対象から除かれます(消防法施行令第23条第1項ただし書)。
非常警報設備は、(五)項イでは収容人員が20人以上で、非常ベル、自動式サイレン、放送設備のいずれかを設置します(消防法施行令第24条第2項第1号)。地階を除く階数が11以上、または地階の階数が3以上の建物と、収容人員が300人以上の建物は、非常ベルと放送設備、または自動式サイレンと放送設備です(消防法施行令第24条第3項第2号・第4号)。自動火災報知設備が基準どおり設置されているときは、その有効範囲内の部分には、非常ベルなどを設置しないことができます(消防法施行令第24条第2項ただし書)。
そのほか、漏電火災警報器とガス漏れ火災警報設備にも基準があります。
- 漏電火災警報器: (五)項の建築物で、壁、床または天井に、下地などを準不燃材料以外の材料で造った鉄網入りのものがあり、延べ面積が150㎡以上のもの。契約電流容量が50アンペアを超える建築物も対象です(消防法施行令第22条第1項第2号・第7号)。
- ガス漏れ火災警報設備: (五)項イの地階で、床面積の合計が1,000㎡以上のもの。温泉の採取のための設備が設置されているものも対象です(消防法施行令第21条の2第1項第3号・第4号)。
6. 避難器具と誘導灯
避難器具は、(五)項の2階以上の階または地階で、収容人員が30人以上のとき設置します。下階の用途によっては、10人以上です(消防法施行令第25条第1項第2号)。避難階と11階以上の階は対象になりません(消防法施行令第25条第1項)。これに当たらない階でも、3階以上の階で、避難階または地上に直通する階段が2以上設けられていないものは、収容人員が10人以上で対象です(消防法施行令第25条第1項第5号)。
3階建ての旅館で、2階の収容人員が25人、3階の収容人員が12人だとします。2階は30人に届かないため、第2号の基準に当たりません。3階は、避難階または地上に直通する階段が1つしかなければ、収容人員が10人以上のため、第5号の基準に当たります(消防法施行令第25条第1項第2号・第5号)。
避難器具の設置の個数は、収容人員が100人以下のときは1個以上、100人を超えるときは1個に100人までを増すごとに1個を加えた個数以上です。建物の位置、構造または設備の状況により避難上支障がないと認められるときは、総務省令で定めるところにより、個数を減らし、または設置しないことができます(消防法施行令第25条第2項第1号)。階段の数が関わる区分として、特定一階段等防火対象物があります。
誘導灯は、(五)項イでは、避難口誘導灯と通路誘導灯の両方が、面積や階に関係なく対象です。(五)項ロは、地階・無窓階・11階以上の部分が対象です(消防法施行令第26条第1項第1号・第2号)。誘導標識は(一)項から(十六)項までが対象で、避難口誘導灯または通路誘導灯を設置した部分には、設置しないことができます(消防法施行令第26条第1項第4号・第3項)。誘導灯には、非常電源を附置します(消防法施行令第26条第2項第4号)。
避難口誘導灯には、除かれる階があります。居室の各部分から主要な避難口を容易に見とおし、かつ識別できる階で、その避難口までの歩行距離が、避難階は20m以下、避難階以外の階は10m以下のものです(消防法施行規則第28条の2第1項第1号)。
7. 規模が大きい建物に関わる設備
建物の規模が大きくなると、これから挙げる設備の基準にも当たります。(五)項は、イもロも同じ基準です。
- 屋外消火栓設備: 1階の床面積(地階を除く階数が2以上のときは1階と2階の床面積の合計)が、耐火建築物は9,000㎡以上、準耐火建築物は6,000㎡以上、その他の建築物は3,000㎡以上(消防法施行令第19条第1項)
- 消防用水: 敷地面積が2万㎡以上で、屋外消火栓設備と同じ数え方の床面積が、耐火建築物は1万5,000㎡以上、準耐火建築物は1万㎡以上、その他の建築物は5,000㎡以上。または、高さが31mを超え、延べ面積(地階に係るものを除く)が2万5,000㎡以上(消防法施行令第27条第1項)
- 連結散水設備: 地階の床面積の合計が700㎡以上(消防法施行令第28条の2第1項)
- 連結送水管: 地階を除く階数が7以上、または5以上で延べ面積が6,000㎡以上(消防法施行令第29条第1項第1号・第2号)
- 非常コンセント設備: 地階を除く階数が11以上(消防法施行令第29条の2第1項第1号)
このほか、駐車の用に供される部分や、発電機・変圧器などの電気設備がある部分には、床面積に応じて水噴霧消火設備などの基準があり、一定の建物には動力消防ポンプ設備の基準があります(消防法施行令第13条、第20条)。
排煙設備と無線通信補助設備の基準は、(五)項を対象にしていません(消防法施行令第28条、第29条の3)。
8. 民泊が(五)項イになるときの設備
一戸建て住宅の民泊が(五)項イとして扱われるとき、必須の対応として消防庁のリーフレット「民泊を始めるにあたって」(消防庁・住宅宿泊協会)が挙げているのは、4つです。リーフレットは通知の本文ではなく、解説の資料です。
- 自動火災報知設備: 延べ面積が300㎡未満の一戸建てなら、特定小規模施設用自動火災報知設備を設置できます。300㎡以上は、通常の自動火災報知設備です。
- 誘導灯: 設置の対象です。一定の要件を満たし、避難に支障が生じない場合は、設置を免除できる特例があるとされています。
- 防炎物品の使用: カーテンやじゅうたんなどを用いる場合は、防炎性能を持つ防炎物品にします。
- 消防用設備等の点検と報告: 点検は年2回、報告は年1回です。
場合によって必要になる設備として、リーフレットは消火器を挙げています。延べ面積が150㎡以上の建物、または地階・無窓階・3階以上の階で床面積が50㎡以上のものが対象です。これは、第4章で説明した消防法施行令の基準のとおりです(消防法施行令第10条第1項第2号イ・第5号)。
リーフレットは、建物の規模などによって、これらのほかの設備が求められる場合があるとも書いています。スプリンクラー設備や屋内消火栓設備などは、前の章で説明した基準に当たるかどうかで決まります。
9. 設備のほかに関わる決まり
設備のほかにも、(五)項イには決まりがあります。防火管理者は、収容人員が30人以上の(五)項イで定めます。(五)項ロは50人以上です(消防法施行令第1条の2第3項第1号ロ・ハ)。(五)項イは防炎防火対象物で、(五)項ロは含まれません(消防法施行令第4条の3第1項)。設備を設置したあとの点検と報告は、別の記事で説明しています。
まとめ
覚えておきたいポイント
・(五)項イは、消防法施行令別表第一で旅館、ホテル、宿泊所その他これらに類するもので、特定防火対象物です。
・自動火災報知設備は(五)項イでは面積に関係なく対象です。(五)項ロは延べ面積500㎡以上です。
・消防機関へ通報する火災報知設備は(五)項イで延べ面積500㎡以上、(五)項ロで1,000㎡以上です。(五)項イは、電話で代えることができません。
・消火器は延べ面積150㎡以上、屋内消火栓設備は延べ面積700㎡以上が基準です。
・スプリンクラー設備は、(五)項イでは、地階を除く階数11以上、平屋建以外で床面積の合計6,000㎡以上、地階・無窓階や4〜10階の階の床面積などが基準です。
・避難器具は、2階以上の階または地階で収容人員30人以上です。誘導灯は(五)項イでは面積や階に関係なく対象です。
・届出をして民泊を営む住宅は、原則として(五)項イ、またはその部分として扱われます。人を宿泊させる間、事業者が不在とならない旨の届出があり、宿泊室の床面積の合計が50㎡以下なら、住宅として扱われます。
・一戸建ての民泊が(五)項イのとき、リーフレットが必須とする対応は、自動火災報知設備、誘導灯、防炎物品、点検(年2回)と報告(年1回)です。
・防火管理者は、収容人員30人以上の(五)項イで定めます。
・不明な場合は、管轄の消防本部に確認してください。
※本記事は一般的な情報提供を目的としており、個別の建物や店舗への適用を保証するものではありません。実際の取り扱いは、管轄の消防本部に確認してください。

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