特定防火対象物にあたるのは、消防法施行令別表第一の項のうち、一部の項だけです。「うちの建物は、特定防火対象物にあたるのか」という区分は、消防の手続きや点検を調べるときに出てきます。特定防火対象物か非特定防火対象物かで、消防用設備等の点検結果を報告する間隔、消防訓練の回数、防火管理者を決める人数の基準が変わります。分かれ目は建物の使い方(項)で、一部の項だけが特定防火対象物にあたります。この記事を読むと、特定防火対象物の意味とあたる項、特定と非特定で変わること、基準が改正されたときの扱いと取り違えやすい建物について、消防法令の条文に沿って知ることができます。
1. 特定防火対象物とは
特定防火対象物は、消防法が、多数の者が出入りする建物などとして定めている区分です。条文は、こう挙げています。
(前略)百貨店、旅館、病院、地下街、複合用途防火対象物(政令で定めるものに限る。)その他同条第一項の防火対象物で多数の者が出入するものとして政令で定めるもの(以下「特定防火対象物」という。)(後略)(消防法第17条の2の5第2項第4号)
「政令で定めるもの」は、令別表第一の項で示されています(消防法施行令第34条の4)。複合用途防火対象物は、令別表第一の(十六)項イです。多数の者が出入りするものは、(一)項から(四)項まで、(五)項イ、(六)項、(九)項イ、(十六の三)項のうち、百貨店、旅館、病院以外のものです。百貨店は(四)項、旅館は(五)項イ、病院は(六)項イ、地下街は(十六の二)項にあたるため、これらを合わせた項が、特定防火対象物の項になります(消防法第17条の2の5第2項第4号、消防法施行令第34条の4、消防法施行令別表第一)。
「令別表第一」は、消防法施行令にある、建物の使い方ごとに番号(項)を付けた表です。「飲食店は(三)項ロ」のように、番号の部分が「項」で、その中の細かい区分がイ・ロ・ハです。
特定防火対象物にあたらない防火対象物を、この記事では非特定防火対象物と呼びます。

2. 特定防火対象物にあたる項
特定防火対象物にあたる項は、次の表のとおりです。用途名は、令別表第一の名称を、やさしい言い方に直しています。
| 項 | 用途 |
|---|---|
| (一)項 | イ 劇場、映画館、演芸場、観覧場 / ロ 公会堂、集会場 |
| (二)項 | イ キャバレー、カフェー、ナイトクラブなど / ロ 遊技場、ダンスホール / ハ 性風俗関連特殊営業を営む店舗など / ニ カラオケボックスなど、遊興のための設備や物品を個室で客に利用させる店舗(総務省令で定めるものに限る) |
| (三)項 | イ 待合、料理店など / ロ 飲食店 |
| (四)項 | 百貨店、マーケットなどの物品販売業を営む店舗、展示場 |
| (五)項イ | 旅館、ホテル、宿泊所など |
| (六)項 | イ 病院、診療所、助産所 / ロ 老人短期入所施設、特別養護老人ホームなど / ハ 老人デイサービスセンター、保育所など / ニ 幼稚園、特別支援学校(細目は令別表第一) |
| (九)項イ | 公衆浴場のうち、蒸気浴場、熱気浴場その他これらに類するもの |
| (十六)項イ | 複合用途防火対象物のうち、一部が(一)項から(四)項まで、(五)項イ、(六)項、(九)項イの用途に使われているもの |
| (十六の二)項 | 地下街 |
| (十六の三)項 | 建築物の地階(地下街の各階を除く)で連続して地下道に面して設けられたものと、その地下道とを合わせたもの((一)項から(四)項まで、(五)項イ、(六)項、(九)項イの用途に使う部分があるものに限る) |
飲食店は(三)項ロ、物販店は(四)項で、特定防火対象物です。工場は(十二)項イ、倉庫は(十四)項、事務所などの事業場は(十五)項「前各項に該当しない事業場」で、表の項に挙がっていないため、非特定防火対象物です(消防法施行令別表第一、消防法施行令第34条の4)。
表にない項が、すべて非特定防火対象物です。(五)項ロの共同住宅など、(七)項の学校、(八)項の図書館など、(九)項ロ、(十)項から(十五)項まで、(十六)項ロ、(十七)項から(二十)項までがあたります。
(十六)項は、複合用途の建物の項です。イは特定防火対象物、ロ(イ以外の複合用途)は非特定防火対象物です。消防法施行令第9条は、「この節の規定の適用については」、(十六)項の部分のうち、(十六)項から(二十)項までを除く各項の用途のいずれかに該当する用途に供されるものを、その用途に供される一の防火対象物とみなす、と定めています。適用の範囲は「この節」に限られ、第12条第1項第3号など、一部の号は除かれます(消防法施行令第9条)。次章以降の点検報告・訓練・防火管理者の区分は、この令第9条の話とは別に、それぞれの規定で決まります。ビルのテナントなど複合用途の建物の考え方は、別の記事で説明します。
特定防火対象物かどうかは、令別表第一の項で決まります。
くわしく知りたい方へ
3. 特定と非特定で変わること
特定か非特定かで変わる決まりのうち、条文に定めのある4つを並べます。
| 決まり | 特定防火対象物 | 非特定防火対象物 |
|---|---|---|
| 消防用設備等の点検結果の報告 | 1年に1回 | 3年に1回 |
| 消火訓練・避難訓練の回数 | 年2回以上 | 消防計画に定めた回数 |
| 防火管理者を決める収容人員 | 30人以上 | 50人以上 |
| 基準が改正されたときの、すでにある建物の消防用設備等 | 従前の規定とする特例が適用されない | 原則、従前の規定が適用される |
点検結果の報告の間隔には、新型インフルエンザ等その他の事由で期間ごとの点検や報告が難しいとき、消防庁長官が別の期間を定める例外があります(消防法施行規則第31条の6第4項)。そのほかの例外や条文は、第4章から順に説明します。
消火器や自動火災報知設備などをどの建物に設けるかは、特定か非特定かだけでは決まりません。項ごとの延べ面積や、階の条件で定まります。

4. 点検結果の報告は、1年に1回か3年に1回か
消防用設備等の点検結果を、消防長または消防署長に報告する間隔は、特定防火対象物が1年に1回、非特定防火対象物が3年に1回です。報告するのは、防火対象物の関係者です(消防法施行規則第31条の6第3項)。
3年に1回となる項は、(五)項ロ、(七)項、(八)項、(九)項ロ、(十)項から(十五)項まで、(十六)項ロ、(十七)項、(十八)項です。この間隔を定めた規則の号が挙げているのは、(十八)項までです(消防法施行規則第31条の6第3項)。
点検と報告の義務そのものは、消防法で定められています(消防法第17条の3の3)。同条は「政令で定めるものを除く」としているため、自分の建物が報告の対象になるかどうかは、不明な場合は、管轄の消防本部に確認してください。
防火対象物点検(消防法第8条の2の2)は、この消防用設備等の点検報告とは別の制度です。対象は、特定防火対象物のうち(十六の三)項を除くもので、収容人員が300人以上のものなどです(消防法施行令第4条の2の2)。
5. 訓練の回数と、防火管理者を決める人数
特定防火対象物の防火管理者は、消火訓練と避難訓練を年2回以上行います。訓練を行うときは、あらかじめ消防機関に通報します(消防法施行規則第3条第10項・第11項)。第10項の対象は、特定防火対象物のうち、(十六の三)項を除いたものです。
非特定防火対象物は、訓練を消防計画に定めて定期的に行い、回数は消防計画に定めた回数です(消防法施行規則第3条第1項第1号チ)。
防火管理者を決める義務が生じる収容人員は、特定防火対象物が30人以上、非特定防火対象物が50人以上です。収容人員とは、その防火対象物に出入りし、勤務し、または居住する人の数です。例外として、(六)項ロと、(六)項ロの用途の部分がある(十六)項イ・(十六の二)項は10人以上です。(十六の三)項と(十八)項から(二十)項までは、この人数の基準の対象外です(消防法施行令第1条の2第3項第1号)。

6. 基準が改正されたとき、すでにある建物はどうなるか
消防用設備等の技術上の基準が改正されたときの、すでにある建物の扱いは、特定か非特定かで異なります。
非特定防火対象物では、基準の施行や適用の時点で、すでにある建物(工事中のものを含みます)の消防用設備等が改正後の基準に適合しないときは、改正後の基準は適用されず、従前の規定が適用されるのが原則です。ただし、消火器、避難器具その他政令で定めるものは、この特例の対象に含まれません(消防法第17条の2の5第1項)。
この特例が使えない場合もあります。改正前の基準にも適合していなかったものは、特例の対象外です。基準の施行や適用の後に、政令で定める増築、改築、大規模の修繕や模様替えの工事に着手したものと、改正後の基準に適合するに至ったものも、対象外です(消防法第17条の2の5第2項第1号〜第3号)。
特定防火対象物の消防用設備等は、この特例の対象になりません(消防法第17条の2の5第2項第4号)。
従前の規定を適用する特例は、非特定防火対象物の消防用設備等に使える場合があります。特定防火対象物には使えません。

7. 見分けるときに取り違えやすい建物
同じ項の中で、特定と非特定が分かれる建物があります。
- (五)項は、イが特定、ロが非特定です。 旅館、ホテル、宿泊所などは(五)項イ、寄宿舎、下宿、共同住宅は(五)項ロです。
- (九)項は、イが特定、ロが非特定です。 蒸気浴場、熱気浴場などは(九)項イ、それ以外の公衆浴場は(九)項ロです。
- (十六)項は、イが特定、ロが非特定です。 複合用途のうち、(一)項から(四)項まで、(五)項イ、(六)項、(九)項イの用途に使われている部分があるものがイです。
- (六)項は、イ・ロ・ハ・ニのすべてが特定です。 ただし、老人ホームや障害者の施設は、避難が困難な人を主として入居させるかどうかで、ロとハに分かれます(消防法施行令別表第一)。防火管理者を決める人数は、ロが10人以上、ハが30人以上です(消防法施行令第1条の2第3項第1号)。
特定かどうかは、建物の広さではなく、使い方の項で決まります(消防法施行令第34条の4)。
非特定防火対象物でも、決まりがなくなるわけではありません。収容人員が50人以上なら防火管理者を決め、点検結果は3年に1回の報告の対象になる場合があり、訓練も消防計画に定めて行います。
くわしく知りたい方へ
・(六)項ロの施設に必要な消防設備。老人ホーム・障害者施設などの設置基準をやさしく解説
・(五)項イ(旅館・ホテル・民泊など)に必要な消防用設備。面積・階・収容人員ごとの設置基準をやさしく解説
8. まとめ
覚えておきたいポイント
・特定防火対象物は、消防法第17条の2の5と消防法施行令第34条の4で定められた区分で、令別表第一の項で決まります。
・特定防火対象物にあたる項は、(一)〜(四)項、(五)項イ、(六)項、(九)項イ、(十六)項イ、(十六の二)項、(十六の三)項です。それ以外が非特定防火対象物です。
・飲食店((三)項ロ)や物販店((四)項)は特定、工場((十二)項イ)、倉庫((十四)項)、事務所などの事業場((十五)項)は非特定です。
・消防用設備等の点検結果の報告は、特定が1年に1回、非特定が3年に1回です。
・消火訓練と避難訓練は、特定が年2回以上、非特定が消防計画に定めた回数です。
・防火管理者を決める収容人員は、特定が30人以上、非特定が50人以上です(例外あり)。
・基準が改正されたとき、すでにある建物の消防用設備等に従前の規定を適用する特例は、特定防火対象物には使えません。
・不明な場合は、管轄の消防本部に確認してください。
※本記事は一般的な情報提供を目的としており、個別の建物や店舗への適用を保証するものではありません。実際の取り扱いは、管轄の消防本部に確認してください。

コメント
コメント一覧 (17件)
[…] 特定防火対象物は、多数の者が出入りする建物として法令が定めるものです(消防法第17条の2の5第2項第4号、消防法施行令第34条の4)。飲食店や店舗は特定防火対象物、工場、事務所、倉庫は非特定防火対象物です。令別表第一では、飲食店が(三)項ロ、店舗が(四)項、工場が(十二)項イ、倉庫が(十四)項、事務所が(十五)項です。見分け方の詳細は、特定防火対象物と非特定防火対象物の違いで案内しています。 […]
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[…] 2つの区分の見分けは、関連記事特定防火対象物と非特定防火対象物の違いで確認できます。項が分からないときは、関連記事あなたの建物は何項?防火対象物の用途別項判定をわかりやすく解説で調べてください。それでも分からないときは、消防本部に確認してください。 […]
[…] 表の用途を、見分けやすい言葉で補います。複数の用途が入るビルは、複合用途として(十六)項に当たる場合があります。どの項に当たるかは建物ごとに異なります。(十六)項のうち、(一)〜(四)項、(五)項イ、(六)項、(九)項イのいずれかの用途を含むものが(十六)項イで、それ以外の複合用途が(十六)項ロです。飲食店や物販店は、表の(一)〜(四)項の用途に当たります。これらの特定防火対象物(多数の人が出入りする建物などとして法令で定められた防火対象物)の用途を含む複合ビルが(十六)項イに当たる場合は、区分1か区分2の見方になります。特定防火対象物にあたらないものが、非特定防火対象物です。2つの見分け方は、特定防火対象物と非特定防火対象物の違いで説明しています。(十六の三)項は、建築物の地階で、連続して地下道に面して設けられたものと、その地下道を合わせたものです(一定の用途の部分があるものに限ります)。いわゆる準地下街で、階数や人数の条件はありません。 […]