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消火器は何本必要か。能力単位の計算、歩行距離、追加の基準をやさしく解説

消火器は何本必要か。能力単位の計算、歩行距離、追加の基準をやさしく解説

「うちの建物には何本置けばいいのか」と、店や事務所、工場に消火器を用意するときには考えるものです。本数は、条文で「○本」と決まっているのではありません。面積と用途から計算した数値を、消火器の能力単位の合計で満たす形で決まり、そこに、置く場所の決まりと、場所によって加わる基準が重なります。例に出す建物や面積は仮のもので、実際の判定ではありません。この記事を読むと、必要な能力単位の計算から歩行距離の決まり、場所によって追加で設ける消火器について知ることができます。

目次

1. 本数は、能力単位の合計で決まる

消火器の本数を決める基準は、「能力単位」の合計です。建物の面積を、規則が用途ごとに決めた面積で割った数以上になるように、消火器を設けます(消防法施行規則第6条第1項)。

能力単位とは、消火器の消火能力を示す数値です。消火器ごとに数値が違うため、能力単位の大きい消火器を選べば、本数は少なくなります。

簡易消火用具には、水バケツや乾燥砂などがあります(消防法施行規則第6条第1項)。この記事では、消火器を中心に書きます。

通路の壁に設置された消火器

2. 消火器を置く対象かどうかは、別の記事で

消火器を置く義務があるかどうかは、用途と延べ面積で決まります。飲食店で火を使う設備・器具があるものは面積に関係なく、店舗・工場・倉庫は延べ面積150㎡以上、事務所などの事業場は延べ面積300㎡以上が基本です(消防法施行令第10条第1項)。少量危険物や指定可燃物を扱う建築物、地階・無窓階・3階以上で床面積50㎡以上の階も対象になります。くわしい区分は、下の記事にまとめています。

3. 必要な能力単位の計算

必要な能力単位は、延べ面積(またはその部分の床面積)を、用途ごとの面積で割って求めます。この割る面積(算定基準面積)は、用途によって50㎡、100㎡、200㎡の3つに分かれています(消防法施行規則第6条第1項)。全部の項を、次の表にまとめました。

項 用途(消防法施行令別表第一) 割る面積 2倍になる場合(第4章)
(一)イ 劇場、映画館、演芸場、観覧場 50㎡ 100㎡
(一)ロ 公会堂、集会場 100㎡ 200㎡
(二) キャバレー、カフェー、ナイトクラブ、遊技場、ダンスホール、カラオケボックスなど 50㎡ 100㎡
(三) イ 待合、料理店など / ロ 飲食店 100㎡ 200㎡
(四) 百貨店、マーケットその他の物品販売業を営む店舗、展示場 100㎡ 200㎡
(五) イ 旅館、ホテル、宿泊所など / ロ 寄宿舎、下宿、共同住宅 100㎡ 200㎡
(六) イ 病院、診療所、助産所 / ロ 老人短期入所施設、特別養護老人ホームなど / ハ 老人デイサービスセンター、保育所など / ニ 幼稚園、特別支援学校 100㎡ 200㎡
(七) 小学校、中学校、高等学校、大学、専修学校、各種学校など 200㎡ 400㎡
(八) 図書館、博物館、美術館など 200㎡ 400㎡
(九) 公衆浴場(イ 蒸気浴場、熱気浴場など / ロ イ以外) 100㎡ 200㎡
(十) 車両の停車場、船舶・航空機の発着場(旅客の乗降または待合いの用に供する建築物) 200㎡ 400㎡
(十一) 神社、寺院、教会など 200㎡ 400㎡
(十二) イ 工場、作業場 / ロ 映画スタジオ、テレビスタジオ 100㎡ 200㎡
(十三) 自動車車庫、駐車場、航空機の格納庫 100㎡ 200㎡
(十四) 倉庫 100㎡ 200㎡
(十五) 前各項に該当しない事業場(事務所など) 200㎡ 400㎡
(十六の二) 地下街 50㎡ 100㎡
(十六の三) 準地下街 50㎡ 100㎡
(十七) 文化財として指定された建造物など 50㎡ 100㎡

(消防法施行規則第6条第1項、第2項、消防法施行令別表第一)

表に載っていない(十六)項は、一つの建物に複数の用途が入る場合です。消防法施行令第9条により、(一)項から(十五)項までの用途に当たる部分は、その用途の一つの防火対象物とみなされるため、その部分の用途の項の面積で割ります。(十八)項から(二十)項は、この表に載っていません。

(例)

工場(延べ面積800㎡): 800÷100=8。能力単位の合計が8以上になるように設ける。能力単位3の消火器なら、3本で9になる。

事務所(延べ面積700㎡): 700÷200=3.5。能力単位の合計が3.5以上になるように設ける。

規則が求めているのは、能力単位の合計が計算で出た数「以上」になることです。使う消火器の能力単位によって、本数は変わります。

4. 面積の基準が2倍になる場合、設置個数を減らせる場合

建物の造りによって、割る面積が2倍になる場合があります。特定主要構造部(建物の主要な構造部分で、建築基準法に定める用語です)を耐火構造(火災に耐える性能を持つ構造)とし、かつ、壁と天井(天井がなければ屋根)の室内に面する部分の仕上げを難燃材料(燃えにくい材料)でした防火対象物です(消防法施行規則第6条第2項)。

先ほどの工場の例(800㎡)で、この造りにあてはまれば、割る面積は100㎡の2倍の200㎡になり、必要な能力単位は800÷200=4です。実際にあてはまるかどうかは建物ごとに異なります。

また、屋内消火栓設備、スプリンクラー設備などを、消防法施行令の定める技術上の基準に従って、またはその基準の例により設置したときは、総務省令で定めるところにより、消火器の設置個数を減らせます(消防法施行令第10条第3項)。

5. 歩行距離は20m以下

能力単位の合計を満たしても、置き場所に決まりがあります。防火対象物の階ごとに、各部分から消火器まで、歩く距離が20m以下になるように配置します(消防法施行規則第6条第6項)。

この章のポイント

本数を計算で出したあとに、置く位置で歩行距離20m以下を満たしているかを見ます。

火を使う設備・器具がある延べ面積150㎡未満の飲食店など(規則では「小規模特定飲食店等」。少量危険物や指定可燃物を扱うものを除く)の歩行距離は、火を使う設備・器具が設けられている階(地階・無窓階・3階以上で床面積50㎡以上の階がある場合は、その階を含む)ごとに、建物の各部分から20m以下となるように配置します(消防法施行規則第6条第6項第2号)。

廊下に置かれた消火器

6. 場所によって、追加で設ける消火器

通常の本数に加えて、場所ごとに追加の基準があります。工場や倉庫に限らず、飲食店や事務所に当てはまる場合もあります。

場所 追加で設ける消火器の基準
少量危険物を貯蔵し、または取り扱う場所 能力単位の合計が、貯蔵・取扱いの数量を指定数量で割った数以上
指定可燃物を貯蔵し、または取り扱う場所 能力単位の合計が、貯蔵・取扱いの数量を、危険物の規制に関する政令に定める数量の50倍で割った数以上
変圧器、配電盤などの電気設備がある場所 電気設備がある場所の床面積100㎡以下ごとに1個
鍛造場、ボイラー室、乾燥室など、多量の火気を使う場所 能力単位の合計が、その場所の床面積を25㎡で割った数以上

どれも、適応する消火器は消火の対象ごとに決まっていて、電気設備には電気設備の消火に適応するものを設けます(消防法施行規則第6条第3項から第5項まで)。適応する消火器は、消防法施行令別表第二で決まっています。

たとえば、ボイラー室の床面積が51㎡なら、51÷25=2.04で、能力単位の合計は2.04以上です。

ただし、延べ面積150㎡未満で火を使う設備・器具がある飲食店など(小規模特定飲食店等)は、多量の火気を使う場所の追加基準を原則として適用しません。少量危険物や指定可燃物を貯蔵し、または取り扱う場合と、地階、無窓階、3階以上の階で床面積が50㎡以上の階は、追加基準の対象です(消防法施行規則第6条第5項)。

歩行距離は、少量危険物・指定可燃物を扱う場所と、電気設備がある場所についても、階ごとに、その場所の各部分から消火器まで20m以下とします(消防法施行規則第6条第6項第3号・第4号)。

7. まとめ

覚えておきたいポイント

・消火器の本数は、能力単位の合計で決まります。条文は「○本」とは定めていません。

・消火器を置く対象かどうかは、用途と延べ面積で決まります。(三)項で火を使う設備・器具がある飲食店は面積に関係なく、店舗・工場・倉庫は150㎡以上、事務所などの事業場は300㎡以上です。

・必要な能力単位は、延べ面積を用途ごとの面積で割った数以上です。割る面積は用途ごとに50㎡・100㎡・200㎡のいずれかで、飲食店、店舗、工場、倉庫は100㎡、事務所などは200㎡です。

・特定主要構造部が耐火構造で、壁と天井の仕上げが難燃材料なら、割る面積が2倍になります。

・どの部分からも、消火器まで歩行距離20m以下になるように置きます。

・少量危険物、指定可燃物、電気設備、多量の火気を使う場所には、追加の基準があります。

・不明な場合は、管轄の消防本部に確認してください。

※本記事は一般的な情報提供を目的としており、個別の建物や店舗への適用を保証するものではありません。実際の取り扱いは、管轄の消防本部に確認してください。

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