飲食店は、消防法施行令別表第一の(三)項ロにあたり、消防に出す書類は、出す人も基準になる日も書類ごとに違います。着工の何日前、工事が終わってから何日以内、使用を始める何日前と、日の数え方がばらばらなので、開店準備の中でどれを、だれが、いつまでに出すのかが分かりにくくなります。飲食店だけが入る建物を前提にしています(複合用途は別の記事で解説します)。今回読んだ現行の火災予防条例・規則を例にしていて、条例は消防本部ごとに異なる場合があります。面積や人数は条文の基準を示したもので、自分の店の判定ではありません。この記事を読むと、着工届から営業を始めたあとの訓練の通報・点検の報告まで、書類ごとに出す人と基準になる日について知ることができます。
1. 消防に出す書類は、基準になる日が書類ごとに違う
飲食店は、消防法施行令別表第一の(三)項ロで、特定防火対象物(多数の者が出入するものとして政令で定める防火対象物)に当たります(消防法第17条の2の5第2項第4号、消防法施行令第34条の4)。見分けの詳細は、下のリンク先で説明しています。
消防に出す書類を、出す人と基準になる日で並べると、下の表になります。
| 書類 | 出す人 | 基準になる日 |
|---|---|---|
| 消防用設備等の工事の着工届 | 工事をする甲種消防設備士 | 工事に着手しようとする日の10日前まで |
| 火を使用する設備の設置の届出(条例) | 設備を設置しようとする人 | あらかじめ |
| 消防用設備等の設置届(検査を受けるための届出) | 防火対象物の関係者 | 工事が完了した日から4日以内 |
| 使用開始の届出(条例) | 防火対象物を使用しようとする人 | 使用開始の日の7日前まで |
| 防火管理者の選任・解任の届出 | 建物の管理について権原(決める権利)を有する人 | 定めたとき、遅滞なく |
| 消防計画の届出 | 防火管理者 | 時期の定めなし(第5章) |
| 消防用設備等の点検結果の報告 | 防火対象物の関係者 | 飲食店は1年に1回 |
この記事は、基準になる日を手がかりにした順に章を並べています。基準になる日は、条文が書類ごとに定めています。書類同士の前後を示す定めはありません。どの書類が自分の店に当たるかは、延べ面積、収容人員、設置する設備によって変わります。
2. 消防設備の工事をするなら、着工の10日前までに着工届
着工届は、工事をする甲種消防設備士が出す書類で、飲食店の事業主が出すものではありません。甲種消防設備士は、政令で定める工事をしようとするときは、その工事に着手しようとする日の10日前までに、工事の場所などの必要な事項を消防長または消防署長に届け出ます(消防法第17条の14)。
対象になる工事は、法第17条の5に基づいて政令が定めています。消防法施行令第36条の2第1項が挙げる設備は、屋内消火栓設備、スプリンクラー設備、水噴霧消火設備、泡消火設備、不活性ガス消火設備、ハロゲン化物消火設備、粉末消火設備、屋外消火栓設備、自動火災報知設備、ガス漏れ火災警報設備、消防機関へ通報する火災報知設備、金属製避難はしご(固定式のものに限る)、救助袋、緩降機です。設備によっては、電源、水源、配管の部分が工事の対象から除かれています。消火器と誘導灯は、この項の設備に含まれていません(消防法施行令第36条の2第1項)。
飲食店にどの設備が必要かは、面積や階で決まります。設備工事の予定がある場合、事業主が気にしたいのは、着工届を出す人が工事をする甲種消防設備士であること、日程に10日前という基準があることです。着工届は、後の章に出てくる設置届とは別の書類で、出す人も基準になる日も違います。

3. 条例の2つの届出は、「あらかじめ」と「7日前まで」で基準が違う
厨房に火を使う設備を置くときと、店を使い始めるときには、今回読んだ現行の火災予防条例で、届出が定められています(条例は消防本部ごとに異なる場合があります)。基準になる日は、届出ごとに異なります。
火を使用する設備の設置の届出は、対象の設備を設置しようとする人が、あらかじめ、消防長に出します(条例第44条第1項)。厨房設備は、その設備の入力と、同じ厨房室内に設ける他の厨房設備の入力の合計が350キロワット以上のものが対象です(条例第44条第1項第3号の2)。ボイラー、入力70キロワット以上の給湯湯沸設備、蓄電池容量が20キロワット時を超える蓄電池設備なども対象に挙がっています(条例第44条第1項)。設備を変更しようとする場合にも、同じ届出の規定が準用されます(条例第44条第2項)。日数の定めはなく、「あらかじめ」です。
入力の合計が350キロワット未満の厨房設備は、この届出の対象ではありませんが、厨房設備の位置・構造・管理の基準は、届出の要否と関係なく適用されます(条例第3条の4第1項)。
使用開始の届出は、令別表第1に掲げる防火対象物((19)項・(20)項を除く)を、それぞれの用途に使用しようとする人が、使用開始の日の7日前までに、消防長に出します(条例第43条第1項)。飲食店は(三)項ロですので、対象に当たります。防火対象物の用途、構造、消防用設備等を変更しようとする場合にも、同じ規定が準用されます(条例第43条第2項)。
2つの届出は、書類の名前も違います。火災予防規則は、使用開始の届出を「防火対象物使用開始(変更)届出書」(規則第16条)、厨房設備などの届出を「火気使用設備等設置(変更)届出書」(規則第17条第1号)としています。届出書は2部を提出し、受理した消防本部が、火災予防上または消防活動上支障がないと認めるときは、届出済印を押して1部を交付します(火災予防規則第22条第1項第17号、第2項)。
使用を始める日の考え方で迷うときは、管轄の消防本部に確認してください。

4. 工事が終わったら、4日以内に設置届を出して検査を受ける
消防用設備等の設置に係る工事が完了したときは、その日から4日以内に、設置届を消防長または消防署長に出します。出す人は、防火対象物の関係者です(消防法施行規則第31条の3第1項)。着工届を出す人が甲種消防設備士であるのに対し、設置届は防火対象物の側が出します。
設置届に添える書類は、平面図、配管と配線の系統図と、消防用設備等試験結果報告書です(消防法施行規則第31条の3第1項第1号)。届出を受けた消防長または消防署長は、遅滞なく、設置された設備が技術上の基準に適合しているかを検査し、適合していると認めたときは検査済証を交付します(消防法施行規則第31条の3第2項、第4項)。現行の火災予防規則では、この届出書も2部の提出です(火災予防規則第22条第1項第7号)。
この設置届と検査が必要になる防火対象物は、政令で定められています(消防法第17条の3の2)。(三)項の飲食店に関わるのは、2つの場合です。
- 延べ面積が300平方メートル以上のもの(消防法施行令第35条第1項第2号)
- 延べ面積にかかわらず、避難階以外の階に飲食店の用途があり、その階から避難階または地上に直通する階段が2以上(階段が屋外に設けられ、または総務省令で定める避難上有効な構造を有する場合は1以上)設けられていないもの(消防法施行令第35条第1項第4号)
対象になる設備からは、簡易消火用具と非常警報器具が除かれています(消防法施行令第35条第2項)。
設置届と検査で受け取る検査済証は、のちの点検の記録とあわせて維持台帳に編冊します(消防法施行規則第31条の6第3項)。維持台帳の中身は、下のリンク先で説明しています。
5. 防火管理者の選任と消防計画は、出す人が分かれる
収容人員が30人以上の飲食店は、防火管理者を定めます(消防法施行令第1条の2第3項第1号)。収容人員とは、その防火対象物に出入りし、勤務し、または居住する人の数です。席数だけではなく、勤務する人も数えます(消防法施行令第1条の2第3項第1号)。数え方は、用途ごとに総務省令で決まっています(消防法施行令第1条の2第4項)。
選任の届出は、建物の管理について権原を有する人が、防火管理者を定めたとき、遅滞なく、消防長または消防署長に出します。解任したときも同じです(消防法第8条第1項、第2項)。選任の届出には、防火管理者の資格を証する書面を添えます(消防法施行規則第3条の2第2項)。
消防計画の届出は、防火管理者が出します。防火管理者が、権原を有する人の指示を受けて消防計画を作り、届け出ます。変更するときも同じです(消防法施行規則第3条第1項)。選任の届出は権原を有する人、消防計画の届出は防火管理者と、出す人が分かれる点に注意してください。届出の時期は、定められていません(消防法施行規則第3条第1項)。
現行の火災予防規則では、この2つの届出書も2部を提出します(火災予防規則第22条第1項第1号、第2号)。
消防法施行規則に別記様式が定められています。ただし、実際に使う様式は消防本部ごとに異なるのが一般的です。使う様式は、管轄の消防本部に確認してください。

くわしく知りたい方へ
・防火管理者とは?役割・選任・届出をやさしく解説【2026年版】
・防火管理者の選任・解任の届出書の書き方。項目ごとの記入のしかたと添付書類
6. 営業を始めたあとも、訓練の通報と点検の報告が続く
開業時の書類のほかに、営業を始めたあとに繰り返し出す書類があります。
消防訓練の事前の通報は、防火管理者が出します。(三)項の防火管理者は、消火訓練と避難訓練を年2回以上実施します(消防法施行規則第3条第10項)。訓練を実施するときは、あらかじめ、その旨を消防機関に通報します(消防法施行規則第3条第11項)。事前の通報は、消防訓練実施計画通知書で行います。
消防用設備等の点検結果の報告は、防火対象物の関係者が出します。消防用設備等は、種類と点検内容に応じて、1年以内で消防庁長官が定める期間ごとに点検します。点検の結果は維持台帳に記録し、(三)項の防火対象物は1年に1回、消防長または消防署長に報告します(消防法第17条の3の3、消防法施行規則第31条の6第1項、第3項)。
点検をだれが行うかは、規模で分かれます。(三)項で延べ面積が1,000平方メートル以上のものは、消防設備士免状の交付を受けている人などの有資格者に点検させます(消防法施行令第36条第2項第1号)。避難階以外の階に飲食店の用途があり、直通階段が2以上設けられていないもの(階段が屋外に設けられ、または総務省令で定める避難上有効な構造を有する場合は1以上)も、同じく有資格者の点検が必要です(消防法施行令第36条第2項第3号)。これらに当たらない防火対象物は、総務省令で定めるところにより、自ら点検するのが基本です(消防法第17条の3の3)。現行の火災予防規則では、点検結果の報告書も2部の提出です(火災予防規則第22条第1項第8号)。
収容人員が300人以上の(三)項は、防火対象物点検の対象にもなります(消防法施行令第4条の2の2第1号)。このほか、階段の条件で対象になる場合があります(消防法施行令第4条の2の2第2号)。防火対象物点検は、消防用設備等の点検とは別の制度です。
くわしく知りたい方へ
・消防訓練のやり方。年の回数、事前の通報、進め方をやさしく解説
・消防訓練実施計画通知書の書き方。記入する項目と、訓練後の記録のしかた
・消防用設備等の点検とは。点検の周期と、報告の義務をやさしく解説
7. まとめ
覚えておきたいポイント
・消防に出す書類は、出す人と基準になる日が書類ごとに違います。
・消防設備の着工届は、甲種消防設備士が、着手の10日前までに出します。
・火を使用する設備の設置の届出は、現行の条例ではあらかじめ、使用開始の届出は使用開始の日の7日前までです。
・消防用設備等の設置届は、工事が完了した日から4日以内に、防火対象物の関係者が出して検査を受けます。
・収容人員30人以上の飲食店は、防火管理者を定めて遅滞なく届け出ます。消防計画の届出人は防火管理者です。
・営業開始後は、訓練の事前の通報(年2回以上の訓練)と、消防用設備等の点検結果の報告(飲食店は1年に1回)が続きます。
・不明な場合は、管轄の消防本部に確認してください。
複雑な届出は、専門家に依頼する方法もあります
届出書など、書類の作成や提出が難しいと感じるときは、行政書士などの専門家に依頼するのも一つの方法です。なお、建物がどの項に当たるかは、管轄の消防本部に確認します。依頼すると、たとえば次のような点で、手間を減らせる場合があります。
・届出書の書式の選び方を相談できるため、書類を作り直す手間を減らせる場合があります。
・添える書面の確認を任せられるため、書類の不足や取り違えに気づきやすくなる場合があります。
・提出までの段取りを整理できるため、役所に出向く回数や、書類を何度も見直す手間を減らせる場合があります。
どの書類を任せられるかは、あらかじめ確認します。相談するかどうかは、ご自身で判断してください。
※本記事は一般的な情報提供を目的としており、個別の建物や店舗への適用を保証するものではありません。実際の取り扱いは、管轄の消防本部に確認してください。

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